Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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1-4 モードレッド

 アーサー王とアグラヴェインは開いている椅子へと腰かけた。

 士郎は自分も座っていいのか迷ったが空いているので構わないだろうと腰掛けようとした、それをアーサー王が止める。

 

 「待て、士郎。別の椅子を用意させる」

 

 アーサー王が何故止めたのか士郎は理解出来なかったが素直に指示に従って別の椅子を用意されるのを立って待つことにした。

 

 「構わないんじゃないですかアーサー王。任務から帰って来て知らない人間が自分の席に座っていた時の奴の顔を是非見たいもんです」

 

 「ケイ卿、王に対して軽口が過ぎるのでは」

 

 少し軽いチャラそうな騎士が冗談を言うと、別の騎士がそれを窘(たしな)めた。

 ケイと呼ばれた人物は軽い冗談だろと手をヒラヒラさせた。

 

 「スイマセン、この円卓の席には魔法が掛けられていて認められた騎士以外は座れないようになってるんです。空いている数席は任務でキャメロットを離れている騎士の席です。

  心苦しいですが別の椅子を用意するまで少々お待ちください」

 

 感じの良い隻腕の騎士は丁寧に士郎に説明した。

 士郎は円卓のテーブルから少し離れた所に用意された椅子に腰掛け様子を伺った。

 

 「それでこれより円卓会議を始める」

 

 「待てよ、それより先に王とお前が連れてきた小僧の説明を先にしてくれ。気になって話に集中出来ないんでね」

 

 アグラヴェインが会議の開始を口にした、しかしそこで先ほどアーサー王にチャチャを入れたケイと言う騎士が口を挟んだ。

 ケイの言うことはもっともと捉えたアグラヴェインが士郎を城に招き入れた経緯を他の円卓の騎士たちに説明をした。

 

 「何やってんだアグラヴェイン、父上の命を狙ったクソ野郎を逃しておいておめおめと戻って来やがったのかテメー。

  俺が今から草の根分けてでも探し出してやる、そして手足を切り落として父上の前でその首を刎(は)ねてやる」

 

 アグラヴェインの話を聞いた全身に鎧を着込んだ騎士が大声で怒鳴ると席を勢いよく立った。

 しかし士郎はそれよりも気になる言葉があった、鎧を全身に着込んだ騎士はアーサー王のことを父上と言っていたような気がした。

 

 「モードレッド卿、賊の捜索を打ち切る判断をされたのは陛下だ。そして貴公の言動は円卓の騎士にそぐわぬ、貴公だけでなく父君であるアーサー王の顔に泥を塗る行為であることを自覚せよ」

 

 全身に鎧を着込んだモードレッドと呼ばれた騎士はアグラヴェインの言葉にあからさまな怒りを表した。

 しかし士郎にとってそんなことはどうでも良く、アグラヴェインの言葉を聞いて目の前が一瞬真っ暗になった。士郎はセイバーに特別な感情を持っていた。

 

 「アーサー王の子供ってことはセイバーが、いや、アーサー王が生んだ子だってことか」

 

 士郎は座っていた椅子からを勢いよく立つと大声で叫んでいた。

 

 「アッハッハッハ、アーサー王が生んだ子でなくて産ませた子だろが客人。

  それにモードレッドはアーサー王の姉上が産んだ子だ、子供のいないアーサー王が養子として引き取ったんだよ」

 

 ケイは士郎の勘違いを正した。しかし士郎の先ほどの発言、アーサー王が子を産んだという言葉を口にした時にケイは険しい表情をしたことを士郎も、そして他の円卓の騎士も気付くことは無かったが。

 ケイの話を聞いた士郎はホッと胸を撫で下ろし椅子に座り直した。しかし士郎は冷静を取り戻すと第五次聖杯戦争の後にざっと読んだアーサー王の話を思い出して再び椅子から立つと大声でモードレッドの名前を叫んだ。

 

 「モードレッドだって?」

 

 士郎の先ほどからの可笑しな行動に円卓の騎士の中で笑いを堪えてる者と、苛立ちを覚える者の二通りに別れた。

 モードレッドはモチロン後者であった。

 

 「気安く俺の名前を呼ぶんじゃねー。お前みたいなモヤシが父上の危機を救った何て俺は信じねえぞ」

 

 モードレッドはテーブルを強く叩くと士郎に怒鳴った。

 モードレッドは大声を出して頭に血が昇り熱くなったので兜を外した。兜を外した顔を見て士郎は驚きの表情を浮かべ声を漏らした。

 

 「女…の子?」

 

 士郎の言葉を聞いたモードレッドは怒りで顔を歪めて剣の柄に手を伸ばした。

 それに見た騎士の一人が声を出して止める。

 

 「止せ、モードレッド卿。貴殿が女であることを民で知る者は少ない、円卓の騎士の中に女性が居ることに客人は驚いただけだろ。些細な事で目くじらを立てるな」

 

 「うるせーぞガウェイン、横から口を出すんじゃねえ」

 

 モードレッドを止めるために声を出した騎士、ガウェインにモードレッドは噛みついた。

 

 「普段がそんな言動だから驚かれるんだ、いっそ何も身に着けずに町中を歩けば国中の民がモードレッドは女だと知るさ。ついでに痴女だなんて言われるかもな、ハハッ」

 

 「伯父上、アンタの軽口にはウンザリしてんだ。二度と軽口が叩けないように首と胴体を切り離してやろうか俺が」

 

 ケイがモードレッドにチャチャを入れるとモードレッドは今度はガウェインからケイへと怒りの矛先を変えた。

 そんなやり取りで他の騎士たちもざわつき収拾がつかない状況となってきた、アグラヴェインが場を鎮めようとするがアグラヴェインの言葉に耳を傾ける者は少数であった。

 そんな折その場を一瞬で鎮める者が居た。

 

 「静粛にせよ」

 

 アーサー王が口を開くと全ての者が口を閉じ静まりかえった。

 王のたった一言で先ほどまでの喧騒とした状況は一変して静寂が場を支配した。

 

 「モードレッドよ、私がこの場に招いた客人は危機を救った。その私の言葉は信用できぬか?」

 

 アーサー王の言葉にモードレッドは口ごもった。

 先ほどまでと同じ人物とは思えぬ借りた猫のようにおとなしくなっていた。

 その場は思い空気で誰も口を開けずにいたが、一人の騎士が静寂を破り口を開いた。

 

 「王よ、円卓の席とは上も下も無い平等な場でしたな」

 

 「その通りだ、ケイよ」

 

 「ならば無礼を承知で言おう、王を疑う者などこの場には一人として居ないだろう。

  しかし、目の前の客人が王の危機を救った実力者だとこの目で見ないことには納得が出来ない。

  そこで提案なのだが、客人の実力を我々の前で披露するために模擬戦をするのはどうだろうか、例えばモードレッドを相手にして」

 

 ケイはアーサー王に士郎とモードレッドの模擬戦を提案した。アーサー王は多少考える素振りを見せて士郎の方へと向いた。

 

 「ケイの考えは最もである、士郎が承諾するなら模擬戦をしようと考えている。

  模擬刀を使い無論モードレッドには手加減をさせよう、どうであろう士郎?」

 

 「真剣で構わない。それに手加減も無用だ、その代わり俺がモードレッドを殺してもお咎めは無しにしてくれ」

 

 アーサー王の問いに士郎は強気な答えを口にした。

 士郎の発言を聞いたモードレッドは顔を歪ませて笑った。

 

 「面白れぇセリフだ、片腕でも切り落とした後にも同じセリフが吐けるか試してやるよ」

 

 モードレッドの言葉に士郎は冷や汗が流れるのを感じた。しかし、士郎は拳を握り締めてモードレッドを睨みつけた。

士郎はアーサー王の物語を読んで知っていた、モードレッドがアーサー王に弓を引くことを。そしてそれが原因でアーサー王が倒れることも。

 士郎は此処で自分がモードレッドを殺せばアーサー王の、いや、セイバーの辿るべき悲劇の運命を変えられるのでは、と思いこの戦いを承諾したのだ。

 

 こうして士郎とモードレッドの戦いが始まろうとした。

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