Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
アグラヴェインはアーサー王が留守中の出来事を簡潔に王に報告を終えると、次の仕事の為に足早に移動していた。
その途中の廊下でモードレッドが女中たちと揉めているのが目に飛び込んで。
(何をやっているのだモードレッドの奴は)
アグラヴェインは頭を抱えて胸中でボヤいた。
他の者では捌(さば)ききれない程の仕事を日々抱えているアグラヴェインは自分から面倒事に首を突っ込んだりはしないのだが、モルガンに刺客としてアーサー王に近づいたモードレッドに多少の既視感を覚えて仕方なく駆け寄る。
「何を騒いでいるんだ」
アグラヴェインはそう言ってモードレッドに尋ねたが、モードレッドはチラリとアグラヴェインに目をやるが無視して女中を更に問い詰めた。
女中はモードレッドの剣幕に恐れをなして震えているだけである。
こんな廊下で女中に迫っている姿を他の者が見れば自身の評判が更に悪くなるのは分かり切っているだろうに、アグラヴェインはモードレッドの心配をするととりあえず、モードレッドと女中を引き離そうと近づく。
「ランスロットが父上を裏切ったのが本当か聞いてんだ」
「私たちはただ噂を聞いただけです、事実かどうかなど」
するとモードレッドと女中の言葉にアグラヴェインは体をピタリと止めた。
あのランスロットがアーサー王を裏切る? アグラヴェインはその言葉をにわかには信じられなかった。
アグラヴェインが状況を頭の中で整理しようと一瞬止まっていると、モードレッドは女中を突き飛ばして何処かへと向かおうと歩き出した。
「なら俺様が確かめてきてやるよ」
そう言ってモードレッドはランスロットか、もしくはギネヴィアのもとへと向かった。
アグラヴェインは女中に何があったか聞いた、女中はモードレッドから解放されたが恐怖でまだ体を震わしていた。
アグラヴェインは苛立ち声を荒げる。
「さっさと言え」
女中はモードレッドという恐怖からやっと解放されたのに、アグラヴェインの怖い顔で問い詰められて女中は泣きそうになりながらモードレッドに話した内容をアグラヴェインに話した。
アグラヴェインは急いでモードレッドの後を追いかけた。
(バカな、何故そんな噂が広まっていると言うのだ)
女中の話ではランスロットとギネヴィアの件は噂好きの連中の間に密かに広まっているらしい。それもキャメロットの周辺だけでは無く、国中でそう言った噂を好む者たちには今や知らない者は居ないくらいであろうと。
(クソッ、何故このタイミングで)
アグラヴェインは悔やんでいた、普段のアグラヴェインであれば城下街や村にも諜報員を派遣して情報収集をしていた。
しかし、ここ最近は自国の情報収集するための力を全て他国への情報収集に回していた。
その理由はペリノア王の死により他国の進軍を警戒したからだ、普段から他国への情報収集は勿論しているが、今回の様な事態ではより綿密に情報を集める必要があった。
その為に自国の諜報員を進軍してくる可能性の高い国へと割いた、その甲斐があってか他国の進軍をいち早く察知したアグラヴェインの指示によって国境を守る円卓の騎士たちが他国の軍を自国へと深く進攻させる前に叩けた。
(少しでも噂の時期がズレていればここまで広まる前に手を打てたと言うのに)
アグラヴェインは噂の広まった時期がまるで自分が自国の諜報員を他国へと割いたのを見計らったような出来過ぎなタイミングに少し違和感を覚えた。
自国の諜報員が噂を聞いていればスグにアグラヴェインの下へと届いて噂が広まる前に封じ込めもできた。
しかしここまで広まってはただの噂とはいえ面倒になるであろうとアグラヴェインは頭を抱えた。
(いや、もしもその噂が本当であったら?)
アグラヴェインの頭に一瞬そんな疑惑が過(よぎ)ったがスグに有り得ぬことだと否定した。あのランスロットに限って、よもやその様な馬鹿なことをしでかすハズは無いだろうと。
そんなことを考えているとようやくモードレッドの姿をアグラヴェインは捉えた。
モードレッドはランスロットの部屋へと行ったが誰も居なかったので、王妃が居る部屋へと向かっているところであった。
モードレッドは王妃の部屋の前まで行くとドアを丁度開けようとしているところであった、アグラヴェインは何時もなら居るハズのドアの前の兵士が居ないことに疑問を抱いたがとりあえずモードレッドを止めようと駆け寄った。
「バンっ」
アグラヴェインは間に合わずにモードレッドが勢いよく王妃であるギネヴィアの部屋の扉を開ける音が響いた。
そこでモードレッドとアグラヴェインの目に飛び込んで来たのは、ギネヴィアとランスロットが口付けを交わしている姿であった。