Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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4-10 予兆

 ランスロットがガレスとガヘリスを切り殺し、ギネヴィアを連れて逃げたことはすぐに国中へと知れ渡った。

 妹と弟を殺されたガウェインは暫くガレスたちの遺体の前で涙を流していたが、他の兵士たちがその場に駆け付けるとガレスたちの遺体を丁重に埋葬することを指示してアーサー王の下へと向かった。

 

 「アーサー王、ランスロット討伐の先方は私にやらせてくれ」

 

 ガウェインはキャメロット城に戻るとアーサー王に鬼気迫る様子で詰め寄った。

 既にランスロット逃亡の話を聞いて他の円卓の騎士たちもその場へと集合していた。

この場にいない円卓の騎士はアーサー王に別れを告げたトリスタン、死んだガレスとガヘリス、そして任務(聖杯探索)にて連絡すらも容易に取れぬギャラハッドたちであった。

 

 「すぐに兵を出すことはならぬ」

 

 アーサー王のその言葉にガウェインはアーサー王に掴みかかる勢いで迫ったが、他の円卓の騎士たちがそれを何とか押し止めた。

 ランスロットの逃亡した先にはその場に居る者たちはある程度予想が付いていた。

 ランスロットといえどもアーサー王が国を挙げて追ってを差し向ければ振り切るのは簡単ではない、その上ギネヴィアを守りながらでは不可能であろう。

 ならば強大な力を持つ国に身を寄せるのが妥当である、そしてランスロットと深い関わりがある国といえば答えは一つであった。ランスロットの生まれ故郷であるフランスである。

 頭に血が上っているガウェイン以外はアーサー王がすぐに挙兵しない理由は察しが付いていた。

 

 「今すぐにフランスに攻め込めばコチラが理由無き侵略者と罵られよう」

 

 アーサー王はフランスに向けて既に書状を持たせた兵を送り付けていた。

 ガウェインはそれでも怒りを抑えきれないのか、一人でフランスまでランスロットを追いに行こうとその場を立ち去ろうとする。

 しかしアーサー王と円卓の騎士たちにより何とかガウェインを説得した。

 アーサー王はフランスがランスロットを引き渡さない場合は全軍を持ってランスロットとそれに肩入れしたフランスを全て一人残らず殺すとまで言ったことで、ガウェインは納得せざるを得なかった。

 そしてフランスからの便りが届いたのは三日も時間が経ってからであった。

 

 「ようやく来たか」

 

 ガウェインは怒りを抑えきれずに伝令の兵士に大声を出して手紙の内容を早く読むように急かした。

 フランスはランスロットのことなど知らぬ存ぜぬを通した。

 ランスロットの痕跡(足取り)を調べていたアーサー王側はそれが嘘であることは分かっていた、アーサー王はフランスを追及する手紙を再度送り付けた。

 フランスはあの手この手で時間を引き延ばそうとしているのは明らかである、ガウェインはアーサー王に鬼気迫る勢いで直談判をした。

 アーサー王はもうガウェインを抑えるのは無理であると悟った、むしろこれまで怒りを抑えていたことが奇跡である。

 アーサー王はフランスに最後の通達をした、ランスロットの引き渡しが無い場合は貴国を滅ぼすと。

 結局フランスはしらを切った、アーサー王はアグラヴェインに既に命じていた軍の編成の最終準備を急がした。

 

 「また、多くの血が流れるのか」

 

 アーサー王は小さく一人呟いた。この手を血で汚すことを躊躇(ためら)いは無い、それでもそれが必要であるならばだ。

 アーサー王は自分の選択を後悔していた、自分などが王でなければガレスとガヘリスは死ぬことはなかったのではないかと自問自答をして。

 過去は変えられぬと天井を仰ぎ目を閉じた、そしてアーサー王は椅子から腰を上げると外で待つ兵たちの前に行こうと扉を出ようとした。

 そして扉を出るとそこには士郎が立っていた。

 

 「セイバー、俺も一緒に連れて行ってくれ」

 

 士郎はセイバー(アーサー王)に戦への同行を懇願した。

 しかしセイバーは士郎の同行を既に拒否していた、士郎はそれが納得出来ずに戦場に赴(おもむ)く前にセイバーに再び願い出たのだ。

 

 「前にも言ったハズだ士郎、この戦いは私たちの都合だ。アナタを巻き込みたくはない」

 

 セイバーはそう言うとその場を立ち去ろうした。しかし、士郎はセイバーの進路を塞ぐように立ちはだかった。

 士郎はどうあっても戦場に付いて行こうとした、見かねたセイバーは兵士数名呼ぶと士郎をその場に押さえつけて身動きを封じた。

 

 「今回の戦場では多くの血が流れるだろう、アナタにはその様な場所に居て欲しくない。

済まない士郎、これは私のワガママだ」

 

 セイバーは少し悲しそうに笑うその場を立ち去った。

 士郎は何度もセイバーの名を叫んだが、セイバーは振り返らずに戦の準備を整えて出発を待つ兵士たちの前えと出て行った。

 

 「準備は整っています、どうかお気を付けて」

 

 アグラヴェインはそう言ってアーサー王の前で頭を下げた。

 

 「後の事は頼んだぞアグラヴェイン。モードレッドの補佐は手を焼くかも知れぬが」

 

 今回の戦争には多くの兵を動員した、敵国もまた強大な力を有している為である。

 しかし守りを疎かにすることはできない、他国が攻め込んで来る可能性は常に存在しているのだ。

 アーサー王は自分が国を空ける間のことはモードレッドに任せることにした、しかしモードレッド一人で国を全て任せるには荷が重いと考え、アグラヴェインを補佐に付けることにした。

 

 「よろしいのですか陛下? モードレッドに国の留守を任せるより共に戦場に連れた方が役に立つかと思われますが」

 

 「思慮が足りぬのは経験が浅いからだ、経験を積めばモードレッドもまた国をどう治めていくかも学ぼう。

  私に万が一何かあろうとも、私の理想を継ぐ誰かがブリテンを導くなら私に悔いは無い」

 

 アーサー王は今回の戦いに何か嫌な予感がしたのかも知れない、自分に万が一のことがあった時のことをアグラヴェインに話した。

 アグラヴェインはブリテンを治めるのはアーサー王以外あり得ません、そう言うとアーサー王も理想の道半ばで自分も死ぬつもりは無いと言った。

 しかし何があるかなど誰も分かりはしないのだ。

 

 「陛下、どうかご武運」

 

 アグラヴェインはそう言うとキャメロット城を出るアーサー王が門の外に出るのを見送った。

 アーサー王が外に出ると見渡す限りの兵が一面に敷き詰められていた。

 アーサー王はおもむろに剣を抜くと剣を空に掲げた。

 

 「これより我らをランスロット討伐に向かう、ランスロットの凶刃に倒れたガレスとガヘリスの無念を晴らす為にも邪魔だてするものに容赦はするな」

 

 アーサー王の激励に兵士たちの間にオオーと大きな歓声が響き渡った。

 しかし場の雰囲気に酔っている者たちの中にもランスロットのことを未だに慕っている者たちは居た。

 そんな中アーサー王は軍を率いてフランスへと攻め行くのであった。

 

 

 

 しかし、ある異変に誰も気付いていなかった。

 平時であればモードレッドがアーサー王に居残りを命じられたことを素直に従うなどオカシイと誰もが思ったであろう、しかし混乱の最中では多少の違和感を気にする余裕のある者など居なかった。

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