Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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1-5 埋められぬ実力差

 士郎とモードレッドは城の中庭へと出た。

 アーサー王と円卓の騎士たちも戦いを見届けるために中庭へと出て二人を遠巻きに眺めていた。

 士郎のもとへ円卓の騎士の一人である隻腕の男が近づいて来て話しかけて来た。士郎が丸腰で武器を所持していないので何か武器を用意してくれようとしたのだ。

 しかし、士郎は隻腕の騎士の申し出を断ると大きく深呼吸をすると自身の中の魔術回路を動かした。

 

 「トレース・オン」

 

 士郎がそう口にすると士郎の両手に剣が出現した。それを見た隻腕の騎士は少し驚いた表情を見せると士郎が魔術師であることを理解した。

 隻腕の騎士は首を振って士郎に諭すように語り掛けた。

 

 「君がどれ程の魔術師かは分からない、がモードレッド卿を一魔術師がどうにか出来る相手じゃない。危険だと思ったらすぐにギブアップするんだ、その時は微力ながら私がモードレッド卿と君の間に割って入ろう」

 

 「随分(ずいぶん)と俺を気にかけてくれるんだな?」

 

 「我が王の危機に手助けをした者を気に掛けるのは当然さ、まあ、アーサー王があの剣を所持している限りかすり傷一つ負うことはないんだけどね」

 

 隻腕の騎士はそう言うとその場から離れて士郎とモードレッドの戦いを見届けようとしているアーサー王と、円卓の騎士たちが居る場所へと戻って行った。

 隻腕の騎士が円卓の騎士の輪に加わったのを見てアーサー王は手を上に上げる、数秒の沈黙が辺りを支配した。

 アーサー王が手を振り下ろし開始の合図を口にした。

 

 「始め」

 

 アーサー王の戦いを告げる声を聞いた士郎は一直線にモードレッドを目指して駆けた、両手に手にした剣を強く握り締め。

 士郎はモードレッドが自分よりも数段格上であることは理解していた、そのモードレッドを殺すためにはモードレッドが自分を侮り油断している早い段階で勝負を決めるしかない、そう考えていた。しかし、士郎はモードレッドの顔を見ると決心が鈍るのを感じた。

 モードレッドは女の子で自分と同い年か少し上くらいであろう、そんな相手の命を自分は奪おうとしているのだ。

 士郎は人の命を救うためならどんな危険の中にも飛び込むような人間であった。逆に言えば士郎が人の命を奪うなどまず有り得ないことである、そんな士郎が今剣を振るう理由はアーサー王、いやセイバーを救いたい一心であった。

 

 「うおぉぉぉー」

 

 士郎は大声を出して自分の中の迷いを振り払うように右手の剣をモードレッドへと振り下す、モードレッドは自らの剣でそれを防いだ。

 士郎はすぐさま左手に握る剣で切りかかる、しかしそれもあっさりとモードレッドに防がれた。士郎は後ろに飛びのき距離を開ける、それに追従してモードレッドは士郎を追いかけて距離を詰めようとした。

 士郎は両手の剣をモードレッド目掛けて投げつけた、モードレッドは剣でそれを切り落とした。

 

 「バカが、剣を手放しやがって」

 

 モードレッドは吐き捨てるようにそう言うと丸腰の士郎に切りかかろうとした、しかし士郎の手には先ほど投げつけたハズの剣がその手にあった。

 一瞬の虚を突かれたモードレッドに士郎は更に右手の剣をモードレッドにもう一度投げつけた、モードレッドがそれを躱(かわ)すがその隙に士郎は接近して両手の剣でモードレッドに攻撃を仕掛けた。

 チッ、モードレッドは舌打ちをして剣を横殴りに振った。士郎の攻撃がモードレッドに届くよりも早く、モードレッドの剣が先に士郎へと襲いかかった。

 士郎は両手の剣でモードレッドの攻撃を防いで反撃にでようとした、しかしモードレッドの剣の一撃は重く、士郎の剣のガードごと士郎を後方へと大きく弾き飛ばした。

 後ろに大きく弾き飛ばされた士郎にモードレッドは追撃を掛けようと距離を詰める。

 

 「トレース・オン」

 

 士郎は体勢を立て直すとモードレッドの迎撃に備えた。

 剣の技量でモードレッドに傷を付けることを難しいと考えた士郎は今度は弓を精製した、かつて第五次聖杯戦争で遠坂凛が使役したサーヴァントであるアーチャーが創り出した武器をイメージしながら。

 士郎が精製した弓の矢は螺旋状の槍のような武器であった、その武器を弓の弦で引き絞りモードレッドへと放った。

 モードレッドは士郎が放った螺旋状の矢を叩き落そうとした、しかしモードレッドの予想よりも遥かに威力を有したその矢を叩き落とすのは容易ではなく、モードレッドは剣で矢の軌道を逸らして直撃を何とか逸らした。

 士郎が放った矢の軌道を後ろに逸らした際にモードレッドは顔に傷を負った。傷と言っても左頬を軽く切っただけであったが。しかし、傷を負わされたモードレッドは怒りで体をプルプルと震わせていた。

 

 「貴様、よくも父上の前で…」

 

 モードレッドはそう言うと鬼のような形相で士郎へと襲いかかった。

 士郎は渾身の一撃でさえモードレッドにかすり傷を負わせることが精一杯であったことに動揺を隠せずにいた。

 士郎はその同様で一瞬の判断が遅れるとモードレッドは既に士郎との距離を詰めていた。

 モードレッドは距離を詰めると剣の柄で士郎の頭を殴打した、士郎はバットで頭を殴られたような衝撃で痛みで意識がとびかけた。

 倒れた士郎にモードレッドは更に腹に強い蹴りを叩き込んだ、士郎は胃液が込み上げ息が出来ずにいた。悶(もだ)え苦しむ士郎の頭をモードレッドは上から強く踏みつけた。

 モードレッドは倒れた士郎に更に蹴りを何度か叩き込み士郎の顔を腫れ上がり別人のようになっていた。士郎は既に意識が飛びかけて朦朧(もうろう)としていた。

 

 「雑魚の分際でよくも父上の前で醜態を晒させてくれたな」

 

 モードレッドはアーサー王の見ている前で傷を負わされたことに激しい怒りを覚え、頭に血が上っていた。

 モードレッドは剣を上に振り上げるとその剣を士郎へと振り下ろした。

 モードレッドの剣が士郎に届く刹那、ガキンっと音を立てて別の剣がモードレッドの振り下ろした剣を止めた。士郎の危機を救ったのは意外な人物だった。

 

 「決闘の邪魔だてするとはどういう了見だ、伯父上」

 

 「決着は付いた、剣を収めろモードレッド」

 

 士郎とモードレッドの戦いに割って入ったのはケイであった。

 ケイはモードレッドの剣を止めはしたがジリジリと押されて差し込まれる状況である、ケイは大きく息を吐いて一気にモードレッドの剣を押しのけ跳ね返した。

 ケイはモードレッドの剣を何とか退けたが手に痺れが残っている、モードレッドと本気で戦えば相手に分があることをケイ自身が誰よりも理解していた。それでもケイには士郎を殺(や)らせる訳にはいけない理由があった。

 

 (何で俺が何処の馬の骨かも分からん奴のために体を張らなきゃならないんだかな)

 

 ケイは心の中で士郎をチラリと見て毒づいた。

 モードレッドの怒りは収まらず剣を鞘に収めはしなかった、モードレッドは剣を頭上に掲げると剣が光を帯びて輝き始めた。

 チッ、ケイはモードレッドが本気で宝具《必殺技》を使おうとしていることに焦りを見せた。ケイは自身の後ろに居る士郎を逃がそうとしたが士郎は自分で動ける状態ではなかった、ケイは覚悟を決めて自身も宝具《必殺技》を出して応戦しようとした。

 両者の宝具《必殺技》がぶつかればケイは自分が押し負ける可能性が高いことは分かっていた、それでも互いの宝具《必殺技》が相殺して威力が減れば死にはしないだろ、ケイはそう自分に言い聞かせるようにして覚悟を決めた。

 ケイが普段見せている人を小馬鹿にするような笑みは消え、鋭い眼光がモードレッドに向けられた。

 モードレッドは普段見せない本気の表情のケイを見て背筋をゾクりとさせた、しかし父親の見ている前で傷を負う醜態を晒されたモードレッドに引く選択しなどなかった。

 

 「うおぉぉぉー」

 

 互いが大声を出して宝具《必殺技》がぶつかり合う刹那、一人の男が間に割って入った。

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