Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
エミヤは{選定者}たちが使っているアジトに戻るとそこには{選定者}本人が一人椅子に座っていた。
{選定者}はエミヤ気が付くと声を掛けてきた。
「これは抑止力殿、色々とお忙しそうですね」
「裏でコソコソと動き回っているお前ほどでは無いがな」
エミヤの言葉に{選定者}は自分がやるべき仕掛けは全て終わったと満足そうに言った。
そして{選定者}はエミヤが何をやっているのかと問い掛けた。
「私は本来この時代にいるハズの無い衛宮士郎に付いて色々と調べてたものでね」
エミヤは衛宮士郎に付いて調べていた、その理由はこの時代に現れた衛宮士郎を殺せば第五次聖杯戦争で出来なかった自身の悲願を達成することが出来るかということであった。
仮に第五次聖杯戦争で衛宮士郎を殺したとしてもエミヤ自身が世界の守護者という悲運から解放される可能性は低いであろう、それでも後悔しか残らなかった人生に終止符を打てる可能性があるのならとエミヤは願った。
「それでは抑止力殿は衛宮士郎を殺すのですね」
「いや、此処で奴を殺すつもりは無い」
エミヤの言葉に{選定者}は耳を疑った。
{選定者}は衛宮士郎を生かす理由をエミヤに問うた。
するとエミヤはこの時代に現れた衛宮士郎に付いて、自分が調べたことを話した。
今この時代に居る衛宮士郎を殺した所で衛宮士郎が本当に死ぬ訳ではない様であると、元の時代にただ戻るだけであろうと。
この時代に現れた衛宮士郎は聖杯戦争に参加した英霊たちに近い生身の人間とは違うものだと。
「この時代から異物が消えるだけで私は良かったのですがね。
まあ、今となっては私にとってはどうでも存在ですよ、小石一つ投げ込まれたところで氾濫(はんらん)した川の流れが変わることなど絶対にないのだから」
{選定者}はエミヤの説明を聞いたがどうでも良いことだと笑った。
そして{選定者}はエミヤが今後どう動くのであろうかエミヤに質問した。{選定者}としてはこの時代に居るハズの無い人間の行動はなるべく把握しておく必要があったからだ。
「第五次聖杯戦争の時とは状況が変わった、衛宮士郎を殺したところで意味は無い。
ならば私のやることは衛宮士郎の生き方(考え方)を変えることだ、その歪な考えを変えることで、後悔しか残らない最後に向かわせないために」
この時代に現れた衛宮士郎の生き方を変えたところでエミヤ自身の悲運が変わる可能性は極めて低いであろう、それでもエミヤにはその可能性に掛けるしかなかった。
エミヤの話を聞くと{選定者}は大きな声を立てて笑った、そして{選定者}はエミヤに自身の顔を近付けて目を覗きこんで話した。
「愚かだな抑止力、いや世界の守護者、いいや衛宮士郎」
{選定者}は普段の態度と喋りを変えてきた、いやこれが{選定者}本来の姿なのであろう。エミヤはそう思った。
そして{選定者}は言葉を続けた。
「どう足掻(あが)こうとも何も変わりはしないさ、絶望を前に人が出来る唯一の救いは諦めることだけなのだから」
{選定者}は嘲(あざけ)笑いその後も言葉を続けた、後悔とは過去に違う選択をしていたら別の未来が待っているかもという思いから生まれるモノだと。
しかし、{選定者}曰(いわ)くどの様な選択をしようと全ては無駄であると。何故なら人が産まれいずる前から全ては{運命}によって決まっているのだからと。
「前にも言っただろ、歴史に名を残した賢王と言われる王と、愚王と嘲(あざけ)られる王の違いは{運}だと。
そう、全ては{運命}さ。どんな歴史に名を残した英雄たちも特別だから名を残したのでは無い、ただ{運命}にそう選ばれただけの駒でしかないのだ」
{選定者}は言った、人は{運命}という鎖に繋がれた奴隷であると。
だから絶望を前に人は諦め、そして受け入れるしかないのだと。どう抗おうとも全ては{運命}によって決められている定めなのだから。
「大災害に巻き込まれたことも、衛宮切嗣という人間に救われたことも、そして今のお前
の現状も全ては避けようがない{運命}という始めから決められた決定事項なのさ。
だから諦めるしかないのさ、それが人に出来るたった一つの事なのだからね」
{選定者}はそう言うと誰も居ない方向へと向いてまるで舞台の上の役者の様に大袈裟な立ち振る舞いをする。
「私は他の王たちから劣っていたのでは無い、ただ{運命}からそう決められたからだ、それを証明する為に最も愚かな王で在る私が他の王たちを殺そう、全ては{運命}という存在を証明するために」
{選定者}の言葉はエミヤに言ったのか? それとも自分に言い聞かせているのか?
はたまたこの場に居ない誰かに語りかけているかの様な判断しづらいモノであった。
エミヤは{選定者}の言う通りこの世の全てが決まっていることならばそれは自分にとって救いだろうか? それとも、
エミヤは天を仰いだがそこには暗い洞窟の天井があるだけであった。