Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
フランスへと亡命したランスロットはフランスの王にある要求を迫られていた。
それはブリテン(アーサー王)が軍を上げてフランスへと進軍してきた、それを迎撃する為の軍の指揮官の一人にランスロットも出撃するように迫られたのだ。
ランスロットはアーサー王と袂(たもと)を分かつ事となった、しかしそれでもかつての友や仲間と剣を交えたくは無いという気持ちは当然であった。
「アーサー王が我が国に攻め入ってくるのはランスロット、お主を保護したことが原因だ。
お主の選択は我らと共に戦うか、この国を去るかだ」
フランスの王は口では好きに選べと言ったがランスロットがフランスから出て行くことは無い、そう確信をしていた。
何故なら、ランスロットにはギネヴィアという足枷がある以上ブリテンという強国からギネヴィアを守れる別の強国の庇護が絶対に必要だからである。
ランスロットは苦悩したが結局ギネヴィアを守るためにかつての仲間たちと剣を交える道を選ぶしかなかった。
「私は一体どこまでアーサー王に不義を重ねるのかな」
ランスロットは自身の境遇を皮肉って笑った、それでも自分が進む道はもう一つしかないのだ、そう覚悟を決めると剣を携えてかつての仲間たちと戦うために戦場へと向かった。
ランスロットは心の中で奇妙な違和感を覚えていた、今の自分の境遇はまるで何者かの意志でこうなるように仕向けられたのではないかという思いが。
それは人では推し量ることの出来ない何か、言うなれば{運命}のような存在を感じた。
ランスロットは頭を横に振ると馬鹿な考えを追い払った、戦場に向かうのに余計なことに気を取られれば命を落としかねない。
ランスロットは自分の命など今更どうでも良かったが死ぬわけにはいかなかった、ギネヴィアを守る為に。
アーサー王がフランスの領土へと足を踏み入れると、そこには国境を守るフランスの兵との交戦が始まった。
国境を守る兵たちは必死に抵抗を見せたがアーサー王が率いる屈強のブリテン軍の前に簡単に突破されてしまった。
その後もアーサー王の進軍をフランス兵が止めに入るがアーサー王たちの進軍のスピードを緩めることさえ叶わなかった。
「王よ、ブリテン軍の強さは異常です、このままでは我が国は滅ぼされてしまいますぞ」
フランス王に仕える家臣たちは慌てふためき混乱していた。
そんな家臣たちが慌てふためく中でもフランスの王は一人冷静に椅子に座り、慌てる様子は全くなかった。
そんなフランスの王を見て家臣たちも落ち着きを折り戻しつつあった、何故なら家臣たちは自分たちが仕える王は勝算の無い戦いをする王ではないことを知っているからである。
家臣たちは静まり一同が王を注視した、そしてフランスの王はゆっくりと口を開いた。
「安心せよ皆の者、全ては想定内だ」
フランスの王はそう言うと自国の兵士たちの多くを自国の深くで集める様に家臣たちに通達した。兵力を一ヶ所に集めて進軍するブリテン軍と正面衝突する道をフランスの王は選択した。
兵の数で言えばフランス軍の方が多かった、アーサー王が率いるブリテン軍は城の守りの為に全軍の四分の一をキャメロット城へと置いてきたからである。
その上攻めるブリテン軍は普通ならば守るフランス軍の二~三倍の兵力を必要とする、それでもまともに戦えばフランスの王は自国が負けると読んでいた、フランスの王はそれ程までにアーサー王(ブリテン)の軍力を評価していた。
しかし、それでもフランスの王は余裕の笑みで笑った。その絶対の自信がまもなく明らかになろうとしていた。
アーサー王たちはフランスの軍の抵抗が弱くなったのを感じた、それを逃さずに進軍速度を速めたがある地点でブリテン軍は足を止めた。
「全軍、足を止めよ」
アーサー王はそう言うとブリテンの兵たちはその場で行軍を止めた。
フランス領土の深くまで入ったところでアーサー王は見渡す限りのフランス兵が目に入った、そこでフランスは此処を決戦の場とすることをアーサー王は悟り慎重に相手の出方を窺(うかが)っているのだ。
フランス兵は陣形を変えてブリテン軍の迎撃態勢を取った、そのフランス兵の先頭には隊を指揮する隊長らしき者たちが見受けられた。
そしてその中の一人にアーサー王たちが見知った人物が一人居た、ランスロットである。
「どこまで騎士の名を貶めて恥を晒す気だ、ランスロット」
アーサー王の横に控えるガウェインは大声で怒りを込み上げながらランスロットをなじった。
敵国の兵として現れたランスロットにガウェインは怒りを露(あらわ)にするが、他の兵たちには動揺が広がっていた。
ランスロットが国を追われる身になったこと知っていようとも、敵として自分たちの前に立ちふさがるとは大半の兵は思わなかったのだ。
ブリテン兵の大半の者は未だにランスロットを尊敬している者、好意を持つ者が多くいた。
ブリテン軍の強さの秘密の一つであるアーサー王による一枚岩の団結力に小さなヒビが入る音がどこからか聞こえた気がした。