Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
ブリテン軍とフランス軍の戦いは拮抗していた。
当初のブリテン軍の勢いから戦いは一方的になるかと思われた、しかしフランスにも名立たる将は多く居た、そこにランスロットも加わったことでフランス軍の戦力は強大なモノとなっていた。
それでもブリテン軍の方が戦力としては上であるハズだった、それが拮抗している理由の一つにランスロットの出現で未だにブリテン軍の兵たちの動揺が収まりきらずにいたことも理由の一つであった。
「皆の者進め、大義は我らに在り」
アーサー王の掛け声で士気は上がったが、ランスロットが敵側に回ったことの動揺を完全に打ち消すことまでは出来なかった。
アーサー王は自軍の兵を三つに分けると人数を一番多く攻撃の軸とする主軍を自身で率いた、アーサー王の補佐としてベディヴィエールもその軍に組み込まれた。
そして残り二つの軍はそれぞれ円卓の騎士であるガウェインとケイに指揮を任せた。
それに合わせるようにフランス側もブリテン軍と同様に軍を三つに分けて戦った。
「チッ、フランス兵も思ったよりもやるじゃねえか」
ケイは愚痴を吐きながらも戦っていた。
数で劣りランスロットの出現で兵の混乱も残る中、それでも互角の戦況を維持するだけでも称賛ものであるが、拮抗する状況にケイは苛立ちながら剣を振るった。
ケイが率いる軍とアーサー王が率いる軍の二つはフランス軍と互角の戦いを繰り広げていたが、ガウェインが率いる軍はフランス軍を押し込んでいた。
「何処にいるランスロットー、私の前に出てこい」
ランスロットに対する怒りを胸に燃やすガウェインの猛攻を前に敵対するフランス兵も尻込みをする気迫であった。
そんなガウェインの勢いに引っ張られるようにガウェインが率いる軍も勢いを増してフランス兵に襲いかかった。
しかし誰も止められないと思える程のガウェインの猛攻を止める者が現れた、その男はガウェインの振りかぶった剣を自身の剣でピタリと止めた。
「ようやく現れたな、ランスロット」
ガウェインの剣を止めたのはかつては同じ円卓の騎士で有り友であったランスロットである。
ガウェインとランスロットの剣が激しくぶつかり合う、ガウェインの勢いを止められるとガウェインが率いていた軍も勢いを失いフランス兵が押し戻し戦況は互角に近い状態になった。
「何故ガレスとガヘリスを殺した、二人はお前を誰よりも尊敬していたんだぞ」
ガウェインの怒声が戦場に響き渡る。
その声には怒りが込められている様で、まるで悲しみ嘆いている様でもあった。
ガウェインの言葉を聞いたランスロットは戦いの最中だというのにガウェインから顔を逸らした、罪の意識でガウェインの顔をまともに見れなかったのだ。
それでもランスロットは剣を強く握り絞めると剣を振るった。
「どんな言葉を口にしようと私が二人を手にかけた事実は変わらない。
それでも、今の私には死ねない理由がある」
ランスロットはガウェインが自分を殺して少しでも心が楽になるなら殺されても構わなかった。しかし、今のランスロットにはギネヴィアを守る役目がある。
ランスロットにはもう自分の意志で戦いの舞台から降りることは出来なくなっていた。
「何て戦いだ、人間とは思えないぞ」
ガウェインとランスロットの戦いを遠巻きに見る兵士はそんなことを口にした。
二人の戦いに割って入り、その首を手柄にしようとした兵が居たがものの数秒も持たずに死体へと変わった。
ブリテン兵とフランス兵は乱戦となっていたが、誰も二人が戦う半径数メートルには近寄らなかった。
ガウェインとランスロットが戦う周りに誰も居ない空間が数メートルでき、その外側で敵味方入り乱れる乱戦となる少し異様な光景がそこには広がっていた。
そんな戦いが数時間にも及んだ、そして日が落ちると両軍から撤退の合図が響き渡る。
「ガウェイン様、撤退の合図です」
日が落ちガウェインとランスロットが戦う軍以外では既に撤退が始まっていた、しかし三つの内の一つの軍を預かる将であるガウェインが引かないことには兵も引くことが出来なかった。
ランスロットもフランス側から撤退しろとの命令が下ったが、ガウェインが手を休まずに攻撃を繰り返す中でそんな余裕があるハズもなかった。
両軍の兵士たちも流石に撤退命令が下る中で戦う自軍の将を止めに入った。
その隙をついてランスロットは馬を走らせてその場を離脱した、そしてフランス軍の本陣へと馬を走らせた。
ランスロットが引くのを見るとフランス兵も本陣へと帰還する、しかしガウェインは尚もランスロットを追い掛けようとした。
「駄目です、ガウェイン様」
ガウェインがランスロットを追い掛けようとするのを他の兵士が止めようとするが、ガウェインはランスロットの後を追った。
このまま行けばガウェインは僅かな兵でフランス軍の本陣へと突撃することとなる、殺してくれと言わんばかりに。
ガウェインの部下は何とかガウェインを止めようと必死になるが、力及ばずガウェインは部下を振り払いランスロットの後を追いかけようとする。
そこに聞き覚えのある声がガウェインを止めに入った。
「落ち着いて下さいガウェイン卿」
「無駄だベディヴィエール、このバカ頭に血が上ってやがる」
円卓の騎士であるベディヴィエールとケイがガウェインを連れ戻しにきたのである。
円卓の騎士が二人掛かりでようやくガウェインをアーサー王が待つブリテン軍の本陣へと連れ戻すことに成功した。
こうして戦いは次の日へと持ち越された。
太陽が上るとブリテンとフランスの戦いが再び始まった、激しい戦いは日が上る度に二~三日と続いたその後に異変は起こった。
ブリテン兵の中でフランス側、いや、正確にはランスロットに味方しようとする離反兵が出たのである。
ランスロットの兵士に対する人望の深さが伺い知れた。
そして離反兵が出たことでアーサー王が率いるブリテン軍はフランス軍に対して、苦境へと立たされる事となった。