Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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第裏五章 5=1 反乱の最初の犠牲者

 アグラヴェインは椅子に座ると五分程目を閉じて体を休めた。

 彼は円卓の騎士の中で、いやブリテン中を探してもアグラヴェイン程多忙の人物は居ないであろう。

 アグラヴェインは日に二時間程しか睡眠時間を取っていない、その上起きている間は常に仕事に追われていた。それでも過労で倒れないのは一日に数分間の睡眠を何度も取っているからである。

 そんなアグラヴェインに部下の兵士が慌てた様子で急報を告げに現れた。

 

 「何事だ?」

 

 アグラヴェインは慌てふためく部下に端的に質問をした。

 部下の慌てた様子を見てアグラヴェインは他の国が動き出したかと思った、しかし予(あらかじ)めブリテンに攻め入ってきそうな国との国境には強い兵士を配備している、どの国が攻め入って来ようとも防衛する準備は完璧であった。

 それを知っているハズの部下が他の国が攻めてきた程度でこれ程取り乱すとは思えなかった、アグラヴェインは嫌な予感がした。

 

 「反乱です、モードレッド様が謀反を起こしました」

 

 部下の言葉にアグラヴェインは耳を疑った。

 様々な事態を想定して動いていたアグラヴェインであったが、モードレッドが謀反を起こすなど完全な想定外だった。

 アーサー王を誰よりも崇拝していると言ってもよいモードレッドに限って馬鹿なと思う他なかった。

 そんな思いと裏腹に城の一部から火の手が上がっているのがアグラヴェインの目に飛び込んできた。

 

 「私が直接出向く、先ほどの指示通り他の兵士に伝えよ」

 

 アグラヴェインは先ほど火の手が上がったモードレッドが居ると聞かされた場所へと足早に向かった。

 仮にモードレッドが謀反を起こしたとしてもアグラヴェインはそれを鎮圧する自信があった、と言っても自分が武力でモードレッドに太刀打ちできないことは百も承知である。

 アグラヴェインはモードレッドに始めから打ち負かそうと思ってなどいなかった、ただモードレッドを足止めするだけで反乱を鎮圧するのは十分だと考えていた。

 現場に到着したアグラヴェインの目に飛び込んだのは血塗れで倒れる兵士たちと、返り血で染まった剣を握るモードレッドであった。

 

 「血迷ったかモードレッド?」

 

 アグラヴェインはそう言うと剣を構えて身構えた。何か理由があるのか? はたまた誰かに操られているのではないかとモードレッドの様子を窺った。

 

 「憎い、にくい、ニクイ」

 

 壊れたラジオの様にそう繰り返すモードレッドを見て正気の状態ではないことはアグラヴェインにもスグに分かった。

 アグラヴェインはモードレッドを取り押さえる、もしくは最悪殺さねばならないと考えた。

 取り押さえるとなれば武力では上のモードレッド相手に手加減などする余裕など普通は無いハズだ、しかしアグラヴェインには十分な勝算があった。

 それは今回の謀反でモードレッドに加担する兵は決して多くは無いと分かっていたからだ。

 モードレッドをこの場で足止めすれば城の兵士たち、そして城の外を守る兵士たちが駆け付ける。そうなれば幾ら武力に優れたモードレッドといえども捉えることは難しくないとアグラヴェインは考えていた。

 

 「憎い、裏切った、父上、にくい」

 

 モードレッドはまともに喋られる状態では無かった。ただ同じ様な単語を繰り返しているだけである。

 そんなモードレッドが自身の前に立ちはだかるアグラヴェインに剣を振りかざす、アグラヴェインは防御に専念して時間を稼ごうと立ち回る予定であった。

 しかし、そんなアグラヴェインの考えは一瞬で意味の無いものとなった。

 モードレッドの振り下ろされた剣はアグラヴェインの防御しようとした剣を叩き折り、剣の勢いはそのままアグラヴェインの鎧と、アグラヴェイン自身の肉を切り裂いた。

 

 (バカな、この私が一撃で)

 

 アグラヴェインはモードレッドの一振りで床に倒れこみ自身から流れ出る血の海に横たわっていた。

 アグラヴェインはモードレッドと本気の殺し合いなどしたことは無い、それでもモードレッドの実力をある程度把握しているつもりであった。

 しかし、モードレッドの力はアグラヴェインの予想を凌駕していた。

 

 (有り得ぬ、ランスロットやガウェインと同等。いや、それ以上ではないか)

 

 モードレッドの一撃を受けたアグラヴェインはその武力を円卓の騎士で最も秀でた二人、それを凌駕すると肌で感じた。

 アグラヴェインはモードレッドの身に何が起こったのかと重症の中で必死に答えを探した、そんな時に近づいて来る足音が聞こえた。

 

 「良くやったわねモードレッド。私のカワイイ子」

 

 アグラヴェインは力を振り絞り顔を上げて声の主が誰か確かめた。

 その声の主はモードレッドとアグラヴェイン自身の母親である、モルガンであった。

 アグラヴェインはモルガンの姿を見て全てを理解した。

 

 「騙されるなモードレッド、その女を信じるな」

 

 アグラヴェインは最後の力を振り絞り必死にモードレッドに語り掛ける。

 

 「目を覚ませ、我々が仕える方はアーサー王、唯一人だと言うこと……」

 

 アグラヴェインが言葉を最後まで言い終える前にモードレッドの剣がアグラヴェインへと突き立てられた。

 モードレッドの剣に貫かれたアグラヴェインはもう二度と話すことはなかった。

 アグラヴェインの体からはまだ大量の血が床へと広がり血の海を広げていた。

 

 「馬鹿な子ね、あんな小娘(アルトリア)に味方しなければ死ぬことも無かったのでしょうにね」

 

 モルガンは愚か者を見るようにアグラヴェインを見下ろすと吐き捨てるように言った。

 

 「うおぉぉぉー、憎い、父上、殺す、アーサー王」

 

 モードレッドが雄叫びを上げて同じような言葉を繰り返す。

 城の留守を任された円卓の騎士二人、その内の一人が反乱を起こし、もう一人が殺された。

 城に残された者たちはモードレッドの強さを目の当たりにし、逆らおうとする兵士は一人も居なかった。

 元々モルガンが根回しをして味方に付けていた若干の兵士たちがモードレッドに忠誠を誓うと、他の兵士たちもモードレッドに恐怖して従う他なかった。

 王に謀反を起こした逆賊が目の前に居る。しかし、キャメロット城でモードレッドと戦おうとする者は居なかった、たった一人を除いて。

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