Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
ケイとモードレッドの宝具《必殺技》がぶつかり合う刹那、一人の男によってそれは回避された。モードレッドはその男に言葉を吐き捨てる。
「貴様も邪魔をするのか、ガウェイン」
二人の間に割って入った人物はガウェインであった。
ガウェインは片方に剣を突き付けて、もう片方には手で攻撃させないように押しとどめた。
「モードレッド卿、ケイ卿の言う通り貴公の勝ちで決着は付いてるハズだ」
「ガウェイン、退かぬなら貴様も殺すぞ」
「太陽の位置をよく見ておけモードレッド卿、今の私と対等に戦える奴など居はしないぞ」
モードレッドは太陽の位置が真上に上る少し前であることを確認すると一瞬、躊躇(ちゅうちょ)を見せた。
ガウェインは午前九時と午後三時からの三時間の間は力が三倍になるという力を授かっていた、モードレッドも円卓の騎士の中でトップクラスの実力者であるが力が三倍になったガウェインを相手にするには分が悪いことは明白であった。
「面白れぇ、力が三倍の状態のテメエを倒せば円卓最強は俺になるってことだろ」
モードレッドはガウェインを前にしても剣を引かずに戦う姿勢を崩さなかった。
ガウェインはやれやれといった表情でモードレッドと向かい合い、対峙する姿勢を取った。
「そこまでだ」
モードレッドとガウェインが一触即発の状態の時、ここまで沈黙していたアーサー王がようやく重い腰を上げ声を出した。
今まで誰が来ようとも剣を収めようとしなかったモードレッドであったが、アーサー王の静止の声には渋々ながら剣を収めて従った。
円卓の騎士たち同士の避けられぬと思われた戦いは、アーサー王の一言によってあっけなく場を収めた。
意識が混濁(こんだく)している士郎には何が起こっているのか理解することは出来なかったが。
「急いで其処に倒れてるガキを治療室に運んどけ」
ケイは一般の兵士に士郎の介抱を命ずるとケイ自身も士郎と一緒に付いて行った。
他の円卓の騎士たちも士郎とモードレッドの戦いに納得がいったのか? はたまた元よりアーサー王の意向に逆らう気がなかった者が大半であったのか? 士郎を客人と迎え入れることに納得をしてその場を引き上げていった。ただ一人、モードレッドのみが納得出来ない様子でいたが。
士郎はある一室で意識を取り戻した。士郎の周りにはローブのような物を身にまとった魔術師たちが取り囲んでいた。
士郎は何事かと驚き起き上がろうとした、しかし自分を取り囲む魔術師たちは自分の治療を魔術でしていることが分かると士郎は黙って治療を受け続けた。
「治療が終わったらそのガキを置いて他の者はこの場から退出しろ」
椅子に座っている男がそう言うと士郎を治療していた魔術師たちは士郎を残して退出した。魔術師たちに命令をした椅子に座って男はケイであった。
ケイは士郎の方にツカツカと近づいて行くと剣を士郎の喉元に突き付けた。
「お前はアルトリアのことをどこまで知ってるんだ?」
ケイの質問に士郎は困惑した。ケイの言うアルトリアとはアーサー王であることを士郎は理解したが、ケイの質問の意図を理解出来ずにいた。
士郎はモードレッドとの戦いでケイが自分を助けたことを知っていた、意識が混濁していたが何となくではあるがあの場の状況を士郎は見聞きしていた。
士郎は自身を助けたケイが今、今度は自分の命を奪おうと喉元に剣を突き付けている理由を必死で脳を動かし答えを探した。
士郎が答えを見つけるよりも早く、士郎たちが居る部屋の扉が開きある人物が部屋へと入って来た。
「剣を収めよケイ、士郎は私が女であることを知っている」
士郎たちがいる部屋へと入って来たのはアーサー王であった。アーサー王の言葉を聞いたケイはアーサー王をギロリ睨み付けた。
「アルトリア、お前がコイツにその秘密を話したのか?」
「いや、士郎は元より私の秘密を知っていたのだ」
アーサー王の言葉を聞いたケイは再度士郎を問い詰めた、アーサー王が女であることは円卓の騎士たちですら知る者は一部の極秘事項である。よそ者である士郎がその事実を知っていることにケイは焦りを覚えた。
万が一にでもアーサー王の秘密が知れ渡れば民草に動揺が広がり、アーサー王を失墜させようとする者、アーサー王を侮り国に攻めてくる他国が増えることは明白であった。
女であると言う下らない理由だけでアーサー王を低く評価する愚か者が現れるのは男性社会であるこの時代においては避けようがない事実であった、ケイはそれを危惧した。
「言え、貴様は何者で何処でその事実を知った?」
ケイは凄い剣幕士郎に詰め寄った、士郎はアーサー王に説明したように自分が遠い未来の人間で第五次聖杯戦争に参加した時にセイバー、つまりアーサー王をサーヴァントとして共に戦ったことをケイに話した。
士郎の話を聞いたケイはあからさまに士郎に疑いの眼差しを向けた。士郎は信じて貰えないことを始めから覚悟していたので落胆は少なかった。
「士郎の話が全部本当であると信じるのは私も難しい、しかし士郎が私を欺き騙そうとしているとはどうしても思えないのだ。
士郎には秘密を公言しないように言ってある、今後も客人として扱うつもりだ」
アーサー王の言葉を聞いたケイは納得はいっていないようであったが、アーサー王の意向に従う仕方なく従うむねを首を縦に軽く振って見せた。
アーサー王はそう言うと忙しそうに扉を開けて部屋を出て行こうとした、しかし思い出したように振り返り口を開いた。
「今日の円卓の会議で話し合う予定であった{マーリン}失踪の件は後日改めて行う」
アーサー王はそう言い残すと今後こそ本当に部屋を後にして士郎とケイは二人だけ部屋に取り残された。
「{マーリン}の奴が居ればこのガキが本当に信用できるかも簡単に分かっただろうにな、肝心な時に居やがらねえからなアイツは」
ケイはそう誰ともなしに愚痴った。
士郎は{マーリン}という名に聞き覚えがあった、アーサー王伝説の話を読んだ時に確かそんな名前が出て来たと頭の中の記憶を探った。
しかし士郎はセイバー、いやアーサー王のこと以外は記憶に余り残っていなくどうしても思い出せないのでケイに{マーリン}のことを尋ねた。
「{マーリン}てのはアルトリア、つまりアーサー王に使えている宮廷魔術師だ。その{マーリン}が何者かの襲撃にあって今は行方が掴めずにいるんだよ」
ケイは面倒くさそうに士郎に説明をした。
アーサー王や円卓の騎士たち、ましてや士郎も知る由はなかった。{マーリン}の襲撃をした者たちが円卓の騎士の崩壊を目論み、アーサー王を失墜させようとしている者たちの最初の一手であったことを。