Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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6-3 果たされぬ約束

 ガウェインの働きによってフランス軍への総攻撃は中止となった。

 アーサー王は兵士たちの動揺を抑えるためにガウェインの死を伝えなかった、ガウェインの死を知るのはアーサー王、ケイ、ベディヴィエール、そしてガウェインの部下達と一部の兵士のみであった。

 ガウェインの死を知った兵士たちは涙を流してガウェインの死を嘆いた。

 

 「さて、どうしたものか」

 

 ケイはアーサー王に尋ねた、アーサー王は静かにフランスの出方を待つしかなかった。

 ランスロットがフランス王を説得しきれてない内にキャメロット城に向かえばフランスが背後を襲うであろう。

 全てはランスロットの働きに掛かっているのであった。

 

 

 

 一方その頃のフランス領内~~~

ランスロットはフランス王に謁見するとアーサー王の援軍を願い出た、その場には他の家臣たちも王の傍でランスロットの話を聞いていた。

 

 「何を馬鹿な事を」

 

 フランス王の家臣たちはランスロットの話を笑い飛ばした。

 今まで戦っていたブリテンが窮地に陥ったのに、その敵に助け舟を出す者など何処にいるのだと言って。

 それでもランスロットは王から目を逸らさずに睨み続けた。

 

 「今、私がアーサー王に攻撃を仕掛けたらどうするというのだランスロットよ?」

 

 「その時は私がフランス兵を止めます、たとえ殺すことになっても」

 

 ランスロットの言葉に辺りの家臣たちはどよめいた。

 先ほどまで自軍の頼りになる兵が突如王に宣戦布告をしたのだ、そのランスロットの言動に怒り出す家臣も居た。

 ランスロットに怒りの感情を持つ家臣の気持ちも最もである、アーサー王に追われて亡命した身でありながら、今度はアーサー王を助けなければ我らがフランス王に剣を向けると口にするランスロットの身勝手な振る舞いに怒る家臣も当然であった。

 フランス王はランスロットをじっくりと観察していた。

 

 「覚悟は出来ているのであろうなランスロット? 此処に居られなくなればお主だけでなく、ギネヴィア王妃の命も危険になるのだぞ?」

 

 フランス王はそう口にするとランスロットの体の動きを注意深く観察した。

 ランスロットからは一切の動揺を感じられない。

 ランスロットはギネヴィアの方向を向くと口を開いた。

 

 「申し訳ありませんギネヴィア様、我が命を掛けてギネヴィア様をお守りしますが、守り切れぬかもしれません」

 

 ランスロットは凛とした声でギネヴィアに謝罪を口にする。

 その言葉を聞いてギネヴィアは首を横に振った。

 

 「ランスロット様と共に居られるのであれば、例え地獄へ続く道であろうと私は嬉しく思います」

 

 ギネヴィアの言葉を聞くとランスロットは再びフランス王の目をジッと見て、フランス王の返答を待った。

 フランス王はランスロットが決してその胸の思いを曲げぬであろうと早々に分かっていた。

 フランス王は武勇が優れている訳でも無く、かといって特別な政治手腕やカリスマを持ち合わせているとは言えなかった。

 それでも強国ひしめく中で自国を他の国に負けない強国にしたのは、フランス王が人の心の機微を読み取るのに長けていて、人を上手く操る力が秀でているからであった。

 そのフランス王もランスロットには匙を投げた。

仮に今、アーサー王を攻撃すればランスロットは間違いなく敵になる、そしてランスロットを敵に回すと言うことは、ランスロットを慕ってブリテンを裏切った兵たちも全員敵に回すことになるのだ。

 アーサー王率いるブリテン軍と激しい戦いをしていたフランスには、もう余分な戦力などは残っていなかった。

 

 (さてどうしたものか? あのアーサー王を打ち取る好機が目の前にある、しかしランスロットと今戦うことになれば他国からの攻撃に耐えうる兵力を残して置くことさえ困難であろう)

 

 フランス王は心の中で葛藤していた、誰も成し遂げることなど不可能に思えたアーサー王を打ち取る栄誉、しかしその反面、ランスロットたちと戦い、そして更にアーサー王と戦った時にどれ程の戦力が残るであろうかと。

 アーサー王を討ち取った後に他の国からの進行を押し返す兵力など残らないであろうとフランス王は分かっていた。

 フランス王は仕方なくランスロットの要求を呑むことにした。

 

 (まあ良い、此処でアーサー王に大きな貸しを作るのも一つの手か)

 

 フランス王はアーサー王に援軍を送ることを決意した、そしてフランス王は恩を売るならばアーサー王が最も追い詰められている状態で助ける方が後々のことを考えるならば都合が良いと考え、アーサー王に援軍を送るのを引き延ばした。

 実際問題、昨日まで戦っていたブリテンに援軍を送ることを反対する家臣は半数近く居た。

 一般の兵の中にもブリテンへの援軍を心良く思わない者は多く居た。戦争だから仕方ないとはいえブリテン兵に仲間を多く殺されているのだ、その憎い相手のピンチを助けるなどゴメンだと考えるのは当然のことであった。

 フランス王は家臣や兵の心情をランスロットに説明をして時間を稼いだ、それでも援軍を送ることを約束するとそれをブリテン側であるアーサー王にも伝えた。

 

 (これで良い、反逆者(モードレッド)が長くキャメロット城を支配すればアーサー王がキャメロット城を取り戻したとしても国力の低下は免れないであろう)

 

 フランス王は援軍を送ると言ったが内心ではブリテンを恐れていた、そのためにブリテンの力をなるべく削ぐことを考えていた。

 しかし援軍を送る以上はブリテンに滅びてもらっても困るとフランス王は思っていた、

理想としては自国よりも多少国力が劣るが他国の脅威となるだけの力を持つ同盟国であることがフランス王の望みである。

 そのためにフランス王はアーサー王(ブリテン)がより追い詰められている状態で援軍を送るタイミングを計っていた。

 フランスが援軍を送る前にアーサー王が開戦するなどとフランス王は微塵も考えていなかった。負ければ国が亡びるリスクを抱えているのだ、普通の王であればそう考えるハズであった。

 しかし、この時に既にフランス王は読み間違えをしていた。

アーサー王という人間が国として一番重きを置いていることが民であるということを。

 

 

 結果、アーサー王がガウェインと交わした約束は果たされることは無かった。

 フランス軍の援軍が来る前にアーサー王とモードレッドの戦いの火蓋が切られたのだ。

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