Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
アーサー王たちはフランスの援軍をただひたすら待ち続けるしかなかった。
ガウェインの死から三日の時が経ったがフランスからの返答はまだこなかった、そこにキャメロット城の状況を調べに行っていた兵士が戻って来るとキャメロット城の現在の状況をアーサー王に報告した。
モードレッドはキャメロット城を力と恐怖で支配するだけでなく、その周りの街に住む民たちも恐怖で蹂躙していた。
「モードレッドの馬鹿は何を考えてやがる」
状況を報告に来た兵士の話を聞いたケイはモードレッドの行動に怒りを露にした。
モードレッドは民たちに重い税を掛けて金品を奪い、民を兵として無理やり徴兵して兵力の増員をしていた。
少しでも逆らう者やアーサー王の帰りを望む様な発言をしたものは容赦なく殺した。
モードレッドは力と恐怖でブリテンを治めるというには歪で、支配するという言葉がピッタリであった。
もちろんモードレッドがそうする様に仕向けたのはモルガンであるが。
「分かった」
兵士の報告を聞いたアーサー王は短くそう答えるだけであった。
引き続きアーサー王はフランスの返答を待った、そして程なくしてフランス王から援軍を送ると言う使者が訪れた。
しかしフランスからの援軍は三日経っても、四日経っても来る様子は無かった。
アーサー王が催促の使者を送ってもフランスは時間が掛かると言って、微動だに動こうとはしなかった。
フランスは少し前まで戦っていた相手に援軍を送ることへの周囲の反発などが有り難しく、時間が掛かると説明するだけであった。
その間にもブリテンで行われているモードレッドの残虐な行動は毎日報告されていた。
「どうかお助け下さい、アーサー王様」
何時もの様にキャメロット城の様子を報告に来た兵士の後に傷だらけの中年の男がアーサー王の前に現れた。
その男はブリテンに住む何処にでも居る普通の民の一人であった。その男はこのままではいずれ妻と子供を殺されると思い意を決してブリテンから逃げ出してアーサー王に救いを求めに来たのだ。
男は深い傷を負っている状態で無理をしたせいで治療の甲斐も無くアーサー王と会った二時間後に息を引き取った。
死んだ男は最後の瞬間まで妻と子供、そしてモードレッドの非道の行いに苦しむブリテンを救ってくれと、譫言(うわごと)のように呟いていた。
「スグに出立の準備を整えよ」
アーサー王は兵士たちにそう言った。
「お待ちくださいアーサー王、今動けば相手の思う壺です」
ベディヴィエールがアーサー王に考え直す様に進言した。
ケイもベディヴィエールと一緒にアーサー王を何とか止めようと試みた。
モードレッドの悪政や非道な行いは全てアーサー王をブリテンへと誘き出すためにモルガンが意図的にやっていることであった。
傷だらけになりながらもアーサー王の前に現れた男もモルガンはわざと見逃してアーサー王の下へやったのだ、ベディヴィエールもケイもそれを分かっていたからアーサー王を止めようとしていた。
「私は王だ」
アーサー王は突然当たり前のことを口にした。
「王とは国があるからこそ存在出来る、そして国とは民が居て初めて国なのだ。
我らが勝ったとしても其処に民が居なくなっていては意味など無い、民が苦しんでいるのなら私は剣を取らねばならぬ。
それがあの日{選定の剣}を引き抜き王となった私の責任なのだから」
アーサー王もモルガンの魂胆は分かっていた、分かった上で危険に身を晒して国を、民を救いに行こうとしていたのだ。
「分かりました、たとえ地獄であろうとお供致します」
アーサー王の言葉を聞くとベディヴィエールは少し笑い、片膝を付いて傅(かしず)きアーサー王と共に行くことを口にした。
アーサー王がこういう方だからこそ自分は、そして皆が付いて行くのだとベディヴィエールは思い出した。
ケイもアーサー王の言葉を聞くと仕方なく折れた、何よりこうなったアーサー王は止まらない事は一番長い付き合いのケイが一番良く分かっていた。
「馬鹿は死ななきゃ治らねえか」
「王様に対して流石にそれは言い過ぎですよ」
ケイが皮肉を言うとベディヴィエールは少し笑いながらもケイを注意した。
ケイの口の悪さも今となっては同じ円卓の騎士のベディヴィエールしか注意出来る者は居なかった。
アーサー王に仕える円卓の騎士も聖杯探索に出た者を除けば今やベディヴィエールとケイの二人だけなのだから。