Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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6-10 立ちふさがる障害

ベディヴィエールは何者かが自分たちがアーサー王の所へ行く邪魔をしようとしていると気付くと馬が潰れない様に気遣いながら馬を急がせた。

 しかし白起はそんなベディヴィエールたちの前に現れる、白起は替えの馬を用意して馬を全力で走らせ何頭もの馬を潰すことでベディヴィエールの先回りをしたのだ。

 突然自分たちの前に単独で現れた白起を見たベディヴィエールはスグに白起が敵である事を悟ると部下たちに戦闘態勢を取らせて陣形を指示した。

 

 「私が一人でも油断をせぬか、先ほどの死霊兵たちが私の術であると理解しているのだな。

  頭がキレて状況の把握も正確、悪くない相手だ」

 

 白起は嬉しそうに笑うと自身の宝具を展開してかつて自らが殺した兵、死霊兵たちを呼び出した。

 

 「我が名は白起、{選定者}の命により参った。さあ、存分に血が湧き立つような戦い(殺し合い)を始めようではないか」

 

 白起は自身の名前をベディヴィエールに伝えるとベディヴィエールたちの十倍程度の死霊兵を従えて戦う姿勢を見せた。

 ベディヴィエールは敵の数に違和感を覚えた、敵の数がこちらの十倍は居るであろうがその少なさに。

 白起はベディヴィエールの心を読んだかの如くそのベディヴィエールの抱いた疑問に答えた。

 

 「そちらの戦力は先ほどの戦いで把握した、貴殿の抱える兵力と私の兵力はおおよそ同じ位にしている。

同等の兵力でこそ指揮官の腕の見せ所であろうからな」

 

 白起はあえて自身の兵力を絞り同程度の兵力でベディヴィエールと戦おうとしていた。

 その理由は白起自身が戦いを楽しむ為であることが大きかったが、もう一つの理由としては死霊兵を増やし過ぎると細かな動きが出来ないからであった。

 白起が生前で指揮していた部下であれば何万でも手足の様に自在に操れたが、死霊兵では数が多くなるにつれて精密な戦術の動きをするのは難しかった。

 ベディヴィエール程の者ならその隙を突いて突破される危険性がある為に白起はあえて死霊兵の数を絞ったのである。

 

 「アナタには悪いが先を急いでいるのでアナタを楽しませるつもりはありませんよ」

 

 ベディヴィエールはそう言うと素早く攻撃に行動を移した。

 部下もベディヴィエールの小さな動作でどう動くかを察すると電光石火の如く白起に襲い掛かった。

 しかし白起はベディヴィエールがどう動くのか始めから分かっていたようにベディヴィエールたちの攻撃をアッサリといなしてみせた。

 白起のその動きにベディヴィエールも白起が相当の強者であることを悟った。

 それでもベディヴィエールは足を止めることなく次々と陣形を変えて白起を攻撃するが、その悉(ことごと)くが白起は揺らりと柳(やなぎ)の様にいなし続けてベディヴィエールたちはダメージを与えられずにいた。

 

 「この時間の無い時に」

 

 ベディヴィエールは珍しく目の前の敵に苛立ちを見せた。

 白起はベディヴィエールの怒涛(どとう)の攻撃を躱(かわ)し続けた、そしてベディヴィエールたちが攻め疲れて一瞬動きが鈍る瞬間を逃さずに白起は攻撃を仕掛けてベディヴィエールたちにダメージを与えた。

 戦況はベディヴィエールたちが押している様に見えたが実際にダメージが大きいのはベディヴィエールたちの方であった。

 

 「残念だな、同じ条件ならもっと楽しめるものを」

 

 白起は残念そうに呟いた。

 ベディヴィエールたちはアーサー王の下に急ぐ為に早期の戦いの決着を望んでいた、その為に戦い方の幅を狭めていた。白起はそれを読んで戦術を組み立てていたのだ。

 ベディヴィエールがじっくりと目の前の敵と対峙することが出来れば戦況も好転する可能性は有る、しかし先を急ぐベディヴィエールにその選択肢は無かった。

 

 「悪いが今回は強引な手で行くぞ」

 

 ベディヴィエールは部下たちにそう言うと陣形を変えた。

 ベディヴィエールは兵をなるべく密集させて陣形を小さく纏めた、そしてそのまま敵将の白起を目掛けて突っ込んだ。

 ベディヴィエールは強引に力技で白起と死霊兵たちを突破する方法を選んだ、その方法ではベディヴィエールたちも被害が大きくなるので避けたかったが他に手段がないので苦渋の決断である。

 アーサー王の下へ多くの兵を届けたかったベディヴィエールはなるべく被害を抑えたかった、しかしそれが難しいとみるとベディヴィエールは覚悟を決めて肉を切らせて骨を断つ作戦に変えた。

 

 「そう来るのも想定内だ」

 

 ベディヴィエールたちは無理矢理の突破をしようと馬を走らせたが、白起は自身の手を大地に着けると突然数十メートルの巨大な穴が白起の目の前に現れた。

 馬で飛び越えるのは無理と判断するとベディヴィエールは馬の足を止めて強行突破を中止した。

 白起は久しぶりの全力を出して戦える相手を前に満足そうに笑みを浮かべている、ベディヴィエールはそんな白起を睨み付けながら次の手をどうするか考えていた。

 ベディヴィエールに先を急がなければいけない足枷があるとは言え、現段階では戦術眼という点に於いては白起がベディヴィエールの上をいっていた。


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