Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

7 / 86
1-7 理想という名の呪縛

 士郎は{マーリン}の説明をケイから聞いた後で気になっていたことがもう一つあったので士郎はケイに再度質問をした。

 

 「何で俺が危ない所を救ってくれたんだ?」

 

 士郎は先ほどまでのやり取りでケイが自分を歓迎していないことは分かった。そのケイが何故モードレッドに殺されそうになっていた自分を助けたのか士郎は気になっていた。

 士郎の質問にケイは面倒くさそうにではあるが答えた。

 

 「お前を助けた理由は二つだ、一つはアルトリアの秘密を知っているかも知れないと思ったからだ。お前がアルトリアの秘密を知っているならその情報の出所を知っておく必要があったから生かした。

  もう一つは……アルトリア自身のためだ」

 

 士郎はケイの説明の前者は理解出来た、自分が他の誰かからアーサー王の秘密を聞いたならば自分に教えた人物の存在も知る必要があったということだ。

 しかし後者の発言の意味を士郎は理解出来ずにケイに聞いた。

 ケイは士郎がモードレッドにボコボコにされていた時のアーサー王の様子を語った。

 アーサー王は平静を装っていたが地面に突き立てた剣の柄を強く握り締めて耐えていた、アーサー王は自分の提案で士郎が命を落とすかも知れない状況に心を痛めていたとケイは士郎に語った。

 

 「それでもアルトリアは戦いに手を出さなかっただろうな、どちらかに肩入れをすれば公平を欠くことになる、王としてそれは許されざることだからだ

  お前が死ねばアルトリアは一人で誰にも悟られぬように後悔を胸に抱くだろう、そんなアルトリアを見たくなかっただけだ」

 

 ケイはそう言うとアーサー王が王となってのこれまでのことを士郎に語った。

 アーサー王は{選定の剣}を岩から引き抜いたことで王となった、しかしアーサー王は何か失敗をする度に自分でない他の誰かが{選定の剣}を引き抜いていたらと後悔をしない日はなかった。

 そしてアーサー王は決して間違いを犯さず、皆が理想であると思い描く王となる様にアーサー王は自分の感情を殺し、理想の王を演じるようになったのだと。実際にはアーサー王ほど素晴らしき王は世界中探してもそうは居ないだろうに。

 アーサー王は今も何か上手く行かないことがあれば一人で自室に籠り自責の念で苦しんでいる、しかし人にその弱い姿を見せることは無く完璧である姿のみを外に見せている。

 そんなアーサー王を中には人の心を持ち合わせぬ冷酷な王と捉える者たちも居た。

 

 「アルトリアは{選定の剣}を引き抜いた時から理想の王という名の呪縛に取り憑かれている。{選定の剣}を抜いてからアルトリアの笑った顔は一度として見ることは無くなった」

 

 ケイは表情を曇らせてそう語った。

 士郎はアーサー王に付いて誰よりも深く理解しているケイとアーサー王の関係が気になって質問をした。

 

 「俺はアルトリアの兄だ、まあ血は繋がってないがな。ちなみに他の奴が居る時や民衆の前ではちゃんとアーサー王と呼んでるぞ」

 

 ケイは笑いながら士郎に自分とアーサー王の関係を説明した。そしてケイは自分とアーサー王は家臣と主君の関係になったことで、アーサー王の重荷を軽くすることは自分ではもう出来ないのだと。そういうしがらみの無い士郎に期待はしていないが居ないよりはマシだろうと。

 ケイは言いたいことを言うと士郎を残して部屋を出ようとした、しかし振り返りるとケイは士郎に一言釘を刺した。

 

 「お前はアルトリアのことを女と知っている数少ない一人だ、可愛い妹をイヤらしい目で見たらお前の下半身に付いてる粗末な物を切り落とすからそのつもりでいろよ」

 

 そう言い残すとケイは部屋を出て行った。

 士郎は口は悪いがアーサー王を大事に思うケイに最初とは違い悪い印象を受けなくなっていた。

 こうして士郎とセイバーが再び出会った最初の長い一日がようやく終わりを告げた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。