Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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第七章 7-1 モードレッドの最後

 アーサー王とモードレッドの戦いは時間が経つにつれ激しさを増していった。

 数の上ではモードレッドが多少は上回っていたが、モードレッドが率いる軍には致命的な欠落が見て取れた。

 

 「殺す、殺す、殺す」

 

 モードレッドは憎しみに取り憑かれたように剣を振るいアーサー王を目指して切り進んで行く。その強さは脅威的であったが軍として動きを見ると余りにも統率が取れていなかったのだ。

 今の憎しみに呑まれて理性を失ったモードレッドには軍を率いるには無理があった、モードレッドを唯一制御して参謀として軍を動かせる母であるモルガンを失ったモードレッドが率いる軍にはただ力によりゴリ押しをすることしか出来なかった。

 

 「右側の部隊を回り込ませて挟みこんで討て」

 

 一方アーサー王側の軍はアーサー王の指揮によって有利に展開を進めて行く、数の上では不利なアーサー王が率いる軍の方が一方的にモードレッドを討つかに思われたがモードレッド軍の異様さがそれを簡単にはさせなかった。

 現在モードレッドの下で戦う兵士たちは二種類しかいなかった、モードレッドの力による恐怖で戦うことを強制された兵士、そしてモードレッドの超越した力に魅了されて崇拝するようにモードレッドに従う者たち。

 モードレッドが率いる軍はモードレッドによるたった一つの絶対なる力によるカリスマによって動く異様な軍と言わざるを得なかった。

 

 「殺せ、殺せ、目の前の敵を一人残らず殺し尽くせー」

 

 モードレッド側の兵士たちも口々に相手を殺そうと叫び出した、モードレッドによる狂気が兵士たちにも伝染するように兵士たちは凶暴な獣へと変わっていった。

 一方アーサー王側の兵士たちには戸惑いや躊躇(ちゅうちょ)が存在した、元は同じ国の兵士たちの為に敵側に知り合いや過去に同じ戦いを潜り抜けてきた戦友たちがいるので当然の反応とも言えた、その差が本来ならば優勢であるハズのアーサー王側が苦戦を強いられている原因の一つとなった。

 戦いは次第に泥沼とも言える状況になっていった、互いの陣営は時間と共に死体の山を築いた。

 

 「これがお前が望んだ状況だと言うのかモードレッド」

 

アーサー王がモードレッドにそう問い質した時には既に戦いは最終局面であった、カムランの丘を埋める程の死体の山がそこには広がっている。

大量の死体から流れる血は溢れかえりまるで川のように流れていた、今のカムランの丘は死体と丘から零れ落ちる程の血の海でまるで地獄の様な光景へと変貌していた。

そしてカムランの丘に立っているのはアーサー王とモードレッドの二人だけとなっていた。

 

 「憎い、憎い」

 

 モードレッドはそう言うとアーサー王へと襲い掛かった、アーサー王も自身が持つエクスカリバーで応戦する。

 剣戟による互いの剣と剣がぶつかり合う音が辺りへと響き渡る、長いような、短いようなどれ程の時間戦っているのかアーサー王は分からなくなっていた。

 しかし次第にモードレッドの強力な剣の一撃を受けるアーサー王の腕は痺れて感覚を失わせていた。

 次のモードレッドの攻撃でアーサー王の剣が弾き飛ばされる、アーサー王は地面に突き刺していたもう一つの自信の武器である槍(ロンゴミニアド)を取るとモードレッドへと槍を突き出した。

 しかし武器を持ち替えたアーサー王よりも早くモードレッドの剣がアーサー王へと届きモードレッドの剣がアーサー王の体へとめり込んだ、その瞬間にモードレッドが一瞬動きを止めた。

 

 「バカ者が」

 

 アーサー王は小さくそう呟いた。

 アーサー王の槍はモードレッドの体を貫いていた、手に残る自身の子を殺したその感触はアーサー王は決して忘れることは出来ないであろう。

 最後にモードレッドが動きを止める原因となったのは頭から流れる血が目に入ったことかとアーサー王は思った、しかし疑問が生じた、モードレッドが自分との戦いで頭に負傷を負った様な素振りは無かったハズと。

 まるでモードレッドは自身の行いを後悔するように血の涙を流したようにアーサー王には見えたのだ、その真相がどうであったか知ることはもう二度と無いが。

 

 「オカ…シイナ…」

 

 槍で体を貫かれたモードレッドは途切れ途切れであるが言葉を口にした、そのモードレッドの目には先ほどまでとは違い目に光が戻っていた。

 

 「俺は…ただ父上に…認めて…貰いたくて。

  ただ褒めて…もらいたかった…だけだったハズなのに。

  何で…こんな風に…なっちまった…んだ……ろ………」

 

 モードレッドはそう言うと力なく地面へと倒れた。

国を二つに割る程の騒動を起こしたモードレッドの動機は余りにも純真で単純なものであった。

親に褒められたい、認められたいという子供が親に持つ当たり前の感情である。それが皮肉にも国を滅亡へと導いたのだ。

アーサー王は天を仰いで見上げた。

 

 「大バカ者が」

 

 アーサー王は震えた声で呟いた、アーサー王は天を見上げてモードレッドを必死に見ない様にした。

 今地面に横たわる変わり果てたモードレッドの姿を見たら今まで抑え込んでいた様々なモノが溢れかえってしまうと分かっていたから。

 

 「私には、まだやるべきことがある」

 

 アーサー王はそう言うと剣(エクスカリバー)を拾いキャメロット城の方角を見る。

 モードレッドの体を貫いた槍をアーサー王は引き抜こうとはしなかった、槍を引き抜いたところで死んでいるモードレッドに苦痛が生じる訳では無いと分かっていたがアーサー王は槍をその場へと残した。

 槍を引き抜きモードレッドから血が流れ出るのを見たくなかった、これ以上モードレッドが傷付く姿を見るのが辛かったのだ。

 部下も馬も失ったアーサー王は唯一人キャメロット城へと向かい歩き出しその場を後にした。

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