Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
キャメロット城を目指すアーサー王の足取りは重かった。
アーサー王自身も今の自分に多くのことは出来ないことは分かっていた、それでも今の状態のブリテンを他国が黙って静観はしていないだろうと。
弱い国は滅びる、そして滅びた国の領土を、そして人を奪おうと他国は虎視眈々と狙っているのだから。
だからこそアーサー王はキャメロット城に戻りブリテンを守る為に何かしようと帰路を目指すのだった。
「モードレッド」
アーサー王は小さくポツリと呟いた。
モードレッドが最後に口にした言葉がアーサー王の頭から離れなかった、モードレッドはただ自分に認められたい一心で動いていたことに。
(もしも、私がモードレッドの、他の者たちの気持ちを汲んでいたらこんなことにならなかったのだろうか?)
アーサー王は心の中で自問自答をしていた、自分が今まで国の為に、民の為にやってきたことは間違っていたのだろうかと。
今までアーサー王は円卓の騎士たちを含む家臣(兵士)たちと距離を置いてきた、モチロン戦果を上げればそれに相応しい褒美を取らせたがそれ以上は踏み込もうとしなかった。
その理由は誰か特定の者に目をかければ、優遇をすれば恩恵を受けられなかった者たちに不満が生まれるからである。
故にアーサー王は他の者たちから距離を置いた、王として公平で公正にいるために。
しかしその結果がモードレッドに悲惨な最後を迎えさせる原因となったかと。
(私は何処かで間違えたのだろうか?)
アーサー王の頭に今までのことが頭を駆け巡る、正しいと思い感情に蓋をして、心を殺して行(おこな)ってきた行動が間違いだったとするなら自分の今までの人生に意味はあったのかと。
(もしも時間を戻せるならば、あの時{選定の剣}を抜いた自分を)
アーサー王の心には後悔の念が渦巻いていた、いっそこの場で倒れて最後を迎えられたらどんなに楽であろうか?
そんな誘惑がアーサー王の頭をかすめる、それでもアーサー王はキャメロット城へと歩み続ける、ブリテンの民が他国の侵略者たちに蹂躙されているかも知れない? 王として民を守るという責任がアーサー王の足を動かし続けた。
国と民の為にその全てを捧げるアーサー王の行為はどこか異様にすら思える程に。
「ボロボロではないですか、そんな状態でまだ{運命}に抗おうとするつもりですか?
アーサー王殿」
キャメロット城を目指すアーサー王に岩に腰かけたフードを目深に被った男が声をかけてきた。
アーサー王は得体の知れぬ男の相手をしている暇は無いと言わんばかりに先を急ぐと言って男を素通りした。
しかしフードの男はアーサー王を先には行かせまいと道を塞ぐ。
「無駄ですよ、ブリテンは滅びる{運命}です。
それに貴方は私の手で殺さなければならない、何故なら私は王を殺す為に生まれた存在なのだから」
フードの男は剣を抜くとアーサー王も剣を抜いて対峙した。
先を急ぐアーサー王は行く手を阻むフードの男に問答無用で切りかかった、しかしフードの男はアーサー王の攻撃を難無く凌いだ。
アーサー王の体はボロボロであった、それにモードレッドから受けた傷も決して浅いとは言えない傷である、しかしそのことを差し引いてもアーサー王は自身の体に違和感を覚えた。
「失礼、まだ名を名乗っていませんでしたね。私は{選定者}、今回のブリテンの騒動を引き起こした者と言った方が分かりやすいですかね」
ボロボロのアーサー王とは反対に、{選定者}は余裕を含んだ態度で自己紹介を始めた。
{選定者}の言葉を聞いたアーサー王は剣を握りしめて{選定者}に襲い掛かった。目の前にブリテンを最悪の状況へと招いた元凶がいるのだから当然の行動であった。
{選定者}はアーサー王の攻撃を苦も無く防いで見せた。
「これから死にゆく貴方には私の真名を言うのが礼儀でしょう。
我が真名(な)は{裸の王様}、一人の英霊を依代(よりしろ)に後世で蔑まれた愚かな王たちの怨念が集まりて生まれた王を殺す為の王様さ」
{選定者}、いや{裸の王様}と名乗った目の前の男はそう言って邪悪な笑みを見せた。