Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
{裸の王様}と名乗った男はアーサー王の攻撃を苦も無く受けながらアーサー王へと話しかけた。
「{運命}を君は信じるかい? アーサー王」
{裸の王様}の問いをアーサー王は無視をして攻撃を続けた、しかしアーサー王の攻撃はどれも相手には通じなかった。
アーサー王は相手に違和感を覚えていた、目の前の{裸の王様}と言う男からは強いという印象を受けなかった。
アーサー王程の者なら強さを隠そうとも相手がかもし出す雰囲気、体捌(さば)きなどからおのずと戦いの経験や実力などが読み取れる、しかし目の前の男からは自分の攻撃を受けきるだけの実力があるとは到底思えなかった。
アーサー王は{裸の王様}から距離を取ると剣を頭上へと掲げた。
「エクスカリバー<<約束された勝利の剣>>」
アーサー王は剣を振り下ろすが剣はただ空を切るだけだった。
本来ならば剣からアーサー王が持つ膨大な魔力が射出され目の前の敵を一瞬で屠(ほふ)るハズの宝具が発動されなかった。
「無駄だよアーサー王、王で在る君も、そしてどれ程強力な武器であろうとも王が保有する武器では私を討つことは出来ないからね」
{裸の王様}は距離を取ったアーサー王にゆっくりと近づいて笑みを浮かべる。
「私は文字通り何も持たぬ王様だ、歴史に名を残した英雄たちが持つような強力な道具など有してはいない。
それでも私が持つ力を君たちの様に宝具とあえて呼ぶならば、
我が宝具の名は 裸の王様<<剝ぎ取る権力>>」
{裸の王様}は自身の持つ宝具の説明をアーサー王にした、例え説明をしようとも自分の不利になることは無いと確信をして。
その力は王(または王女)が持つ力はモチロンのこと、王が保有する武器や防具、そして王が持っていたという逸話を含んだ武器までもその力を奪い、自分(裸の王様)以下の力へと貶(おとし)める能力であった。
「仮にこの場に君の家臣である兵士の一人でも居たのなら私を討つことも容易に出来たであろう、だが君は一人だ。何故なら全ては{運命}によって決められていたことだから」
{裸の王様}は剣を一旦収めると、アーサー王に更に喋り掛けた。
「例え私が居なくとも別の誰かが、別の理由が、他の何かしらがアーサー王を窮地へと追い込み、そしてブリテンは滅ぼす。
何故ならそう{運命}によってそう決められているからさ」
{裸の王様}はまるで高説を垂れる政治家の様にアーサー王へと語る。
「人が何をしようとも何も変わりはしない、{運命}によって全ては決められているのだから、ただ全てを受け入れ諦めれば良い。
人は、いや神話の神々たちですらも{運命}という物語のために用意された駒でしかないはずなのだから」
{裸の王様}はアーサー王に近づくと手を差し伸べた。
「アーサー王、いやアルトリア・ペンドラゴン。
全てを捧げ最善を尽くしてきたのに悲劇の結末を迎える君ならば私の気持ちを理解出来るハズだろ?
もしも別の選択をしていたら? もしも別の道を歩んでいたら? 幸せな結末を迎えられたとでも言うのだろうか? そんな事があるハズが無い、あって良いハズがないのだ。
どの様な選択をしようとも全ては{運命}によって決められた着地点へと導かれる。
だから後悔する必要など無い、今までの悲劇も仕方のないことだと諦めて死を受け入れろ、そうすればもう苦しまなくて済む」
{裸の王様}は最初こそまるで師が弟子にモノを教える様に高説を垂れていた、しかし最後の方にはまるで自分の考えを受け入れてくれと懇願する様な表情でアーサー王に手を差し伸べて同意を求めていた。
アーサー王は{裸の王様}が差し伸べた手を目掛けて剣を振るった。
{裸の王様}は咄嗟に躱したが剣が腕を掠めて腕から血が流れた。
「仮に全てが決まっていたとしようとも私は勝手に剣を置くことも、勝手に足を止めることも許されはしない。
私は王として、人の上に立つ者として、民を幸せにしなくてはならないのだ。
だから私は死ぬその瞬間まで足搔き、抗わなくてはいけない。それがあの日{選定の剣}を抜き王となった私の責任なのだから」
アーサー王の言葉を聞いた{裸の王様}は表情を歪める、その表情からは激しい憎悪と敵意が窺(うかが)えた。
「やはり歴史に名を残した王たちは傲慢(ごうまん)だな、神すらも抗えぬ{運命}に抗おうなどと」
{裸の王様}は激しい怒りに声を震わせて剣を再び抜いた。
「人は不条理な事にも神が与えた試練だと耐えてきた、しかし時代が進み神の存在が希薄になった時代にその身に降りかかる不幸をどうすればよい?
どうしようもない天災に大切な者を奪われた時、身勝手な逆恨みから大切な者を殺された時、自分に何か出来たかも知れないなどと苦しまぬために{運命}とはなくてはならないのだ」
{裸の王様}はそう言うとアーサー王に近づき剣を振るう、アーサー王も相手を討とうと剣を振るうが{裸の王様}の方が優勢でアーサー王は仰向けに倒された。
{裸の王様}はアーサー王の腹を鎧の上から足で踏みつけると剣を振り上げる。
「{運命}に楯突いたお前は簡単には殺さんぞ、その顔を剣で刻みアーサー王であると分からなくして四肢を切り落としてやる。
そして抵抗出来ないお前を穴さえあれば構わぬという戦場で飢えた男たちの慰み者にしてやろう、さぞ屈辱的だろう。
{運命}を受け入れていれば楽に殺してやったのにな」
{裸の王様}はそう言い終えると剣をアーサー王の顔目掛けて振り下ろした。
しかし剣がアーサー王に届く前に{裸の王様}は突然の衝撃を腹に受けて後ろに吹き飛ばされた。
何が起きたのか理解出来ずに{裸の王様}は先ほど衝撃を受けた自身の腹に手を伸ばす、すると手に生温かい液体が血であることを理解した。
先ほどの腹に受けた衝撃は武器により受けた攻撃だったのだ。
{裸の王様}は自身の腹を見ると剣の柄だけが宙に浮いてる様に見えた、しかしよく見ると自身から流れ出る血で形を現す。
柄の先にある自身の腹に突き刺さっている剣の刀身がガラスで出来た透明な剣であることがようやく理解出来た。
{裸の王様}はその剣が放たれた方向に目を向けるとその剣を射出したであろう男の名を憎々し気に叫んだ。
「衛宮、士郎ォォォォー」
{裸の王様}の視線の先には先ほど自身の腹を貫いた剣を射出したと思われる弓を構える士郎の姿がそこにはあった。