Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
エミヤは士郎が生成した武器に一瞬意表を突かれたがそれだけであった。
エミヤは士郎の行為を鼻で嘲笑うと自身が持つ双剣を手放しエミヤも武器を生成した。
「トレース・オン」
エミヤの手の中には士郎と同じ魔槍・ゲイボルグが生み出された。
「俺(未来)に出来てお前(過去)に出来ぬことは山ほどあるが、お前に出来て俺に出来ぬことなど何一つ在りはしないと知れ」
士郎が必死になって生成したゲイボルグをエミヤはいとも簡単に生成した、エミヤが本気になれば本物であるゲイボルグに極めて近い性能を持つ武器を作ることも可能であったがそれをすればエミヤ自身が危険であるためにそれは避けた。
エミヤが生み出したゲイボルグは士郎と大差の無い力である、武器の性能が同じであれば結局はそれを扱う者の差で勝敗は決する。
士郎が苦肉の策で編み出したエミヤを倒す算段はあっけなく露と消えた。
それでも士郎は一縷(いちる)の望みを掛けてゲイボルグでエミヤに戦いを仕掛けようとしていた。
「俺がお前に勝てる見込みが少ないことなど承知の上だ、それでも俺はセイバーの下に行かなきゃならない。
散々助けられてきたセイバーの助けに少しでもなるなら俺の命くらい掛けてやるさ」
士郎は時間が無いことを分かっていた、たとえ危険だとしても自分の命を懸けることに何の迷いもなかった。
セイバーの力になれる可能性が僅かでもあるのならと士郎は玉砕覚悟の突撃に出ようとした。
「言ったはずだぞ、お前如きの命では何も変わりはしないと。
アーサー王は死に、そしてお前は後悔しか残らぬ未来を歩む。自身の愚かさを知ることになるだけだ」
エミヤは士郎の説得を諦めると士郎を返り討ちにしようと身構える。
本来ならばエミヤは士郎を殺すつもりならば距離の離れた今の状況であろうと殺す事は出来た、しかしそれを何故かしようとは思わなかった。
士郎は知りえなかったがゲイボルグはその手から離れようとも相手を殺すだけの力があった、本来の性能から落ちる偽物とは言えゲイボルグには投擲(とうてき)して相手を殺す方法もあるのだ。
しかし第五次聖杯戦争で士郎はクー・フーリンがゲイボルグを投擲して使う姿を一度として見てはいない。それ故に士郎はそんな使い方があると知りはしなかった。
「あの日切嗣が俺たちを助けなければ俺たちはそこで終われたんだ、凡人が英雄の真似事をしたところで悲劇しか生まれはしない。
俺がやってきたこと、そしてお前がこれからやろうとしていることもそれと同じさ」
エミヤは切嗣を批判した、しかしその言葉は歯切れが悪く何処か寂しそうに士郎の目には映った。
「俺はお前を英雄とは認めない。それでも、世界や歴史なんて関係なくお前が助けた人たちに取ってお前は英雄だ。
あの日俺を助けてくれた切嗣は俺にとってはどんな歴史の英雄にも負けない英雄だから、これから先に何があろうとも。
お前だって同じハズじゃないのかよ?」
士郎はそう言うと覚悟を決めて駆け出した。
セイバーの下に行くために障壁となる未来の自分を打ち倒そうと。
士郎が突っ込んで来るのにエミヤは一瞬反応が遅れた、士郎の言葉を聞いたエミヤの脳裏に見たことも無い人々の顔がフラッシュバックしたからだ。
エミヤは戦いの最中に雑念を抱いた自分を 責するとゲイボルグを構えて士郎を迎え討とうとした。
(初動が遅れようとお前に勝ち目など無い)
エミヤは戦いの最中に他に気を取られた自分を恥じたが士郎に負ける可能性は皆無であると思っていた。
どれだけ後手に回ろうともそれを覆す程の実力差があると分かっていた、自分が士郎(過去の自分)に負けることなど万に一つも無いと。
それは士郎にも分かっているハズである、それでも何の迷いなく突っ込んで来る士郎の目を見てエミヤは先ほど士郎の言葉を聞いて頭にチラついた人々が誰であったかを思い出した。
(そうか、あれは昔俺が戦場で救った人たちか)
エミヤは士郎を見て過去の自分を思い出した、身一つで戦場を駆け回りそこで苦しむ人を救おうと這いずり回った自分自身を。
救えぬ命の方が遥かに多かった、それでも僅かであるが救うことの出来た人の顔をエミヤは思い出していた。
エミヤはゲイボルグを強く握り絞めると士郎に向かって突き出した。
「ゲイボルグ」
士郎とエミヤの声が重なり槍が繰り出される。
そして因果を穿つ魔槍・ゲイボルグが心臓を貫いた。