Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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ここから敵側視点の話になります。

エミヤと表記する衛宮士郎は抑止力となった後の衛宮士郎です。

士郎と表記する衛宮士郎はアーサー王側にいる衛宮士郎となっています、分かりづらくてスイマセン。



第裏一章 1=1 裏で蠢く者たち

 一人の男が立っていた、その男の出で立ちは赤いジャケットを羽織り、浅黒い肌に白い髪が印象的な若い男であった。

 その男は世界の均衡を保つためにこの時代に派遣された抑止力の役割を担っていた。男の生前の名前は衛宮士郎、かつてヒーローになることを夢見て生涯を費やした真っ直ぐ純真で透明なガラスの様な男だった。

 エミヤは今回の任務に少々頭を抱えていた、今まで幾つもの任務をこなしてきたエミヤであったが今回は今までと多少事情が違っていた。

 いつもと違った事情というのは今回は自分が何をするべきなのかエミヤは分からなかったのだ。今まででそんなことはマズ有り得なかった。

 

 (まあ、第五次聖杯戦争の時のような自分のことすら思い出せない状況よりはマシか)

 

 エミヤはかつて遠坂凛のサーヴァントとして召喚され、アーチャーとして戦った第五次聖杯戦争の時のことを思い出して苦笑した。(※第五次聖杯戦争の時はサーヴァントと呼ばれて今回は抑止力の役割を担っているので多少事情が違うが)

 

 「初めまして抑止力殿、いや衛宮士郎、もしくはアーチャーと呼んだ方がいいのかな?

  どのようにお呼びしましょうか?」

 

 一人の男が笑いながらエミヤに近づいて来るとエミヤに突然話しかけてきた。

 エミヤは自分の素性を知る謎の男に警戒の態勢を取る、謎の男は敵意が無いのを表現するように両手を上げる仕草を取った。

 エミヤは自分のことを知る謎の男を良く観察した、身長は自分よりも頭一つ分から二つ分は低い。体格は華奢(きゃしゃ)で雰囲気からも自分が脅威と感じるような強い敵であるとエミヤは思えなかった。

 しかし謎の男が持つ妙な自信にエミヤは警戒を解かなかった。

 

 「衛宮士郎殿、貴方がこの時代に来た目的と私がやろうとしていることは同じと言っていい。我々は協力関係を築けるはずだ」

 

 「良いだろう、話だけは聞いてやる。但し俺はとうの昔に衛宮士郎の名は捨てた。その名前以外で好きなように呼べ」

 

 謎の男の提案をエミヤは承諾した。謎の男が話の続きをするにあたって仲間の待つ場所へとエミヤに移動を願い出た。

 エミヤは罠の可能性を考慮に入れつつも現状の把握のために謎の男の後を付いて行った、謎の男は人が寄り付きそうもない洞窟まで行くと足を止めた。

 エミヤは洞窟内に三~四人程度の人の気配を感じた、人の潜む気配の方向に目を凝らした。

 

 「ようやく戻ったのか{選定者}、後ろの連れてる奴が新しい仲間と言うことか?」

 

 「これは義経殿、出迎えありがとうございます」

 

 洞窟の暗がりから現れたのはエミヤよりも頭二つ分以上も背が低い男? いや女であろうか? 義経と呼ばれた者がエミヤと謎の男の出迎えに姿を見せた。

 エミヤは義経と呼ばれた者の出で立ちを見て違和感を覚えた。義経が着る鎧はこの時代の人間の着る鎧というよりは昔の日本の武将が着るような甲冑である。

 出で立ちと名前からエミヤはこの場に居るはずの無い歴史上の日本の人物、源義経が頭を過った。

 

 「貴方の想像通りですよ抑止力殿。義経殿は本来ならこの場に居るはずの無い人物、国を超え、時代を超えて私が召喚した英霊の一人です」

 

 エミヤの考えを見透かすようにエミヤを連れて来た謎の男、いや義経が{選定者}と呼ぶ男はエミヤに喋り掛けてきた。

 エミヤは{選定者}の言葉を聞いて耳を疑った、冬木の聖杯戦争のようなシステム化された状態でもない限り時を越えて人を召喚するような大魔術などおいそれとは出来ない。それも目の前の男は複数人の英霊を召喚した口振りである。

 エミヤは最初に{選定者}に抱いた印象は脅威となり得ない取るに足らない相手であった、しかしその考えを改める必要性があるとエミヤは考えを変えた。

 

 「それでお前たちの目的とやらは聞かせて貰おうか?」

 

 「我々、というよりは私の目的はアーサー王を殺すことさ。目的の一つに過ぎないがね」

 

 エミヤの質問に{選定者}は喜々として自分の目的を語った。

 歴史に名を残し称賛された王たちが本当にそれ程の実力を持った存在なのか? 本当に素晴らしき王ならば自分などと言う障害を撥ね退けるハズだ、それが出来ない王ならば偶々運よく過大評価されただけのハリボテの王である。

自分は時代を超えてそんな王たちを殺し選定する者、だから{選定者}なのだとエミヤに説明をした。

 

 「抑止力殿、貴方が何故この時代に呼ばれたのか私なら大体の予想が付きます」

 

 エミヤは{選定者}の言葉の続きを黙って促し、{選定者}は更に説明を続けた。

 本来ならば抑止力がこの時代に現れる必要はなかった、しかし世界のバランスを崩す可能性の芽が生まれたのだと。

 本来の歴史ならばアーサー王は途中でその命を落とす。しかし、もしもアーサー王と円卓の騎士が存命していたら? アーサー王率いる勢力は世界の勢力図を大きく塗り替えるであろうと。

 エミヤは{選定者}の話を聞いて多少の納得をした。もしもアーサー王が命を落とさず他の国との戦いを続けて行けば世界のバランスを崩しかねない事態になりかねない。

 しかしエミヤは何故その情報を自分は知らないのか、今までの抑止力として訪れた時は自分の果たす役割を始めから分かっているのが普通であるハズなのに。

 自分の中の疑問を冷静に分析しようとしていたエミヤだったが、{選定者}の次の言葉にエミヤは何も考えられない程の衝撃を受けた。

 

 「そうそう、本来なら命を落とすハズのアーサー王が何故存命の可能性が生まれたのかの説明をしてませんでしたね。

  歴史という泉に波紋を広げた小石の名前は衛宮士郎、抑止力殿は嫌と言う程聞いた名前ですよね」

 

 {選定者}の言葉にエミヤの体は一瞬硬直した。

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