Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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7-11 たとえ、想い描いた理想とは違っても…

 自身の召喚者である{裸の王様}の首を刎ねたモードレッドの体が光の粒となりモードレッドは消えようとしていた。

 

 「モードレッド、何故…?」

 

 「俺様を見損なうじゃねえ、今のボロボロのアンタに勝ったところで何の自慢にもなりゃしねえからな」

 

 アーサー王の疑問にモードレッドは顔を横にしてそっぽを向いて言った。

 

 「俺様が勝ちたいのはブリテンを統治していた強く、偉大なアーサー王だ。

  何時か俺様はアンタを超える、その時まで他の奴に負けたら承知しねえからな」

 

 モードレッドはアーサー王の顔を見つめてそう宣言した。

 かつてのモードレッドは苦痛に顔を歪めてその生涯の最後の幕を閉じた、ただ親に認めて貰いたかっただけだったと悔しそうに言葉を残して。

 しかし今のモードレッドはアーサー王を、親を超えるのだとスッキリとした顔で言い放った。それは自信家で傲慢なそんなアーサー王がよく知るモードレッドの顔であった。

 

 「いつかまた剣を交える時まで精々達者で暮らすんだな、あばよ父上」

 

 モードレッドは少し恥ずかしそうにそう言うとモードレッドの体の半分以上は光となって消えようとしていた。

 

 「ああ、何時でも相手になろう王として、そしてお前の父親として」

 

 アーサー王がそう言うとモードレッドは少し笑ったような顔で光となって消えた。

 アーサー王は光が消えてもそこにまだモードレッドが居るかの様にモードレッドが居た場所を見つめ続けた。

 

 「セイバー、これで終わったのか?」

 

 士郎はそんなアーサー王に質問を投げかけた。

 アーサー王は首を横に振ると、王として自分にまだやることがあると口にした。

 

 「私にはまだ国の為に、そして民の為にやらなければならないことがある」

 

 アーサー王はそう言うとキャメロット城がある方向へと顔を向けて言った。

 ブリテンは既に崩壊をしているのを他国が黙って見ているハズがなかった、ブリテンの領土を、そしてそこに住まう人々を奪おうと複数の国の魔の手がブリテンへと迫っていた。

 士郎にもセイバーがまだ剣を振るい戦い続けるのだと分かった。

 

 「なら俺にも手伝わせてくれ」

 

 士郎はアーサー王の力になろうと協力を申し出た。

 しかし、その時に異変が起きた。士郎の体も光の粒となって消えようとしていたのだ。

 それは士郎がこの世界に来た役目を終えた証なのか士郎もまたかつての聖杯戦争のセイバーの様に光の粒となって元の時代に戻ろうとしていた。

 

 「ふざけるな! 俺はまだセイバーの為に何も出来てない、何の力にもなってないのに」

 

 士郎が悔しそうに叫ぶとその言葉を聞いたアーサー王は首を横に振った。

 

 「私はずっと後悔しながら生きてきた、何かを決断する度に多くの命を奪ってきたのだ。

  それでも国の為に、国に住まう民の為に最善を考えて決断を下してきたつもりだが常に疑問が頭を掠(かす)めた。

  あの日{選定の剣}を引き抜いたのが私でなければ、別の誰かが王になっていれば民はもっと幸せになれたのではないか?

  私と関わり持った者たちも不幸に死ぬことは無かったのではないかと」

 

 アーサー王は寂しげな目をして士郎にそう語った。

 士郎はセイバーの言葉を否定しようと口を開こうとしたがアーサー王の目が士郎の言葉を止めた。

 士郎は黙ってセイバーの続きの言葉を静かに聞こうと口に出掛かった言葉を飲み込んだ。

 

 「もしも願いが一つ叶うなら私はあの日に戻り王となることを拒むであろう、そうすれば私などの為に命を落とす者も救われる。

  私が王になったせいで多くの者を不幸にしなくて済む、私の人生はそんな後悔しか残らない人生だ」

 

 アーサー王はそう語りながら目を瞑ると多くの自分と関わった者たちの顔を頭に思い浮かべた。

 自分を信じ集まった兵士や民、自分が滅ぼした国や敵、そして自分を支えた円卓の騎士たち。そんな円卓の騎士たちもその大半を自分のエゴで殺したのだとアーサー王は拳を握り絞めた。

 士郎はセイバーの言葉を否定しようと声を出し掛けたが途中で止めた、セイバーの目を見るとそこには凛とした揺るぎない力強い目を見たからだ。

アーサー王はゆっくりと目を開くと言葉を続けた。

 

 「私の人生は決して満足できると言えないだろう、それでも私は自分の人生に納得しようと思う。

そうしなければ私を信じ命を掛けた者たちの気持ちまでもを否定することになってしまうから。

そう思えたのは士郎、アナタに会えたからだと私は思っている。

だから感謝の言葉を言わせてくれないか?」

 

 アーサー王はそう口にすると片膝を付いて剣を士郎に捧げるように掲げた。

 

 「我が名はアルトリア・ペンドラゴン。

我が騎士道に掛けて、聖杯戦争で汝の剣となりこの身を捧げることを此処に誓う。

我がマスター士郎よ」

 

 それはアーサー王という身分では決して取ることのない誰かを主とする忠誠の近いであった。

 士郎は涙が溢れそうになった。しかしそれはセイバーの今の言動だけが理由では無く、士郎が感じていた違和感に気付いてしまったからだ。

 アーサー王が士郎に言った言葉で士郎はセイバーと最初にあった時の違和感にこの時ようやく合点がいった。

 

 (そうか、此処は俺が知ってるセイバーと、聖杯戦争で共に戦ったセイバーとは別の世界なのか)

 

 士郎はアーサー王の言葉を聞いて今目の前に居るセイバーは聖杯戦争で会ったセイバーとは別人であることが分かった。

 アーサー王は自分の人生に納得すると言ったのだ、その言葉が真実ならば聖杯戦争といった願いを叶える戦いに参戦する理由が無いのだ。

 それはつまり今目の前に居るセイバーは聖杯戦争に参加したセイバーとは別人であることを意味していた。

 

 「ありがとう、頼りにしてるぜセイバー」

 

 士郎は本当の事をセイバーに伝えずに自分の胸にしまう事にした。

 その選択が正しかったのか士郎には分からない、しかし目の前に居るセイバーの顔を見たらそれが間違いでは無いと思えた。

 士郎の目の前に居るセイバーの顔はあの日、聖杯戦争を終えて消え去るセイバーの笑顔と全く同じであったからだ。

 士郎が聖杯戦争の最後に見たセイバーの笑顔が心の底からの本物だったとするならば、今目の前に居る別のセイバーもきっとそうなのだと士郎は信じたかった。

 士郎もかつての聖杯戦争の時のセイバーと同じように笑顔をで別れようと精一杯の笑顔で別れを告げた。

かつてのセイバーが最後に最高の笑顔で別れることで士郎は救われた気持ちになった、だから今度は士郎が最高の笑顔で行く番だと思った。

 

 「ありがとう、士郎」

 

 光の粒となって消えた士郎が居た場所を見つめてアーサー王は嚙み締めるように口にした。

 そしてアーサー王は士郎が乗ってきた馬に跨(またが)るとキャメロット城のある場所へと馬を走らせた。

 王として最後に自分がやるべきことをしようとアーサー王はたった一人、様々な国の軍が押し寄せる最後の戦場へと向かうのであった。




 ここまで読んで頂きありがとうございます。
 最後の方で書きましたが士郎が召喚されたブリテンは士郎が居る世界の過去では無く、とても似た並行世界の過去でしたという話です。
 なので円卓の騎士の死に方やその他諸々、多少の違いなどがありますがとても似た並行世界なので色々と違ってますよと言った感じになります。

 とりあえずこの後の投稿はエピローグという形でお送り致します。
 エピローグ・アルトリア編で2~3回の投稿。
 エピローグ・マーリン編で短いのを1回。
 エピローグ・士郎編で2~3回の投稿で完結となりますので最後まで読んでもらえるとありがたいです。
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