Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
士郎との別れの後にアーサー王はキャメロット城へと馬を走らせた。
そしてキャメロット城に辿り着いたアーサー王の目に飛び込んだのは自国の民たちが蹂躙され、陵辱されている姿であった。
アーサー王は覚悟をしていたとはいえその光景に腸(はらわた)が煮えくり返る思いであった。
(私が王になどならなければ)
アーサー王の心に今まで幾度も訪れた後悔の感情が顔を覗かせる。
しかしアーサー王は歯を食いしばる、王として今やるべきことをやるのだと。そう士郎に言った自分の言葉に己を奮い立たせた。
アーサー王は自身の聖剣を抜くとその剣に魔力を込めた。
「エクスカリバー<<約束された勝利の剣>>」
アーサー王は国民を巻き込まぬようにエクスカリバーの攻撃を空へと放った。
国民に襲い掛かる敵国の兵士たちを狙えば混雑とした今の状況で自国の民たちも多く巻き込んでしまうからだ。
空に放った一撃に他国の兵士たちがそちらに視線を移した、するとアーサー王の姿を見て他国の兵士たちは馬鹿にするように笑う者たちが大半であった。
「今更何の用だあの王様は、もう国が崩壊したアーサー王などに何が出来るんだ」
他国の兵士たちはアーサー王を中傷し、笑い者とした。
かつては恐れていた存在が落ちぶれた様を見て他国の兵士たちはまるで自分がアーサー王よりも強い存在になったかのように振る舞う。
そしてアーサー王の首を取ろうと素早く動く部隊がアーサー王に迫った、百以上はいる兵士を無駄な無く統率された動きから良く練兵された部隊であることが他の他国の兵士たちからも見て取れた。
「その首貰ったぞアーサー王」
部隊の隊長と思わしき先頭の男がアーサー王を討とうとあと少しで剣が届きそうな距離まで詰めると叫んだ。
たとえ滅び掛けの国の王とはいえアーサー王の首を取ればその名誉は計り知れない、後れを取った他国の兵士たちもアーサー王を討とうとその後に続こうとしたがピタリと動きを止めた。
「エクスカリバー<<約束された勝利の剣>>」
アーサー王が放った一振りで眼前に迫った百以上は居たであろう部隊は塵も残さずに消滅した。
それを見た他国の兵士たちは目の前で起こったことがまるで現実か疑うように目をパチクリとさせている。
「我が名はアーサー王、我がブリテンの民たちに仇なす敵にはこの体が首だけになろうともその敵を噛み殺そう」
アーサー王はそう叫ぶと他国の兵士たちをギロリと睨んだ。
ブリテンの民から金品を奪おうとする兵士、女を犯そうと服を剥ぎ取ろうとしていた兵士たちはアーサー王の言葉を聞くと民たちからパッと離れた。
先ほどまで他国の兵士たちはアーサー王など今更恐れる対象ではではないと高を括っていた、しかしたったの一振りでその考えは払拭された。
この状況ではアーサー王といえども、いやどんな英雄であろうとどうにか出来る状況では無い。
現に他国の兵士たちが一斉にまたブリテンの民たちに乱暴をすればアーサー王一人では対処の仕様など無いであろう、それでも兵士たちがブリテンの民に手を出そうとはしなかった。
彼らの本能がアーサー王逆らってはいけないと、命が危険だと訴えかけていた。
「真に恐ろしいのはアーサー王である」
他国の兵士たちの中の指揮官と思わしき男たちはポツリ、ポツリとそんな言葉を口にした。
それはかつて大国の王がアーサー王を評価した言葉であった。
当時その言葉を聞いた他国の国々や位の高い者たちは強大な力を持つブリテンの王に向けた世辞でしかないと誰もが思っていた。
その言葉を残した王は言った、ブリテンは強大だ、兵士一人一人の質が高くそれを指揮する円卓の騎士たちはまさに我が国の脅威であると。
しかし私が何よりも脅威と捉えているのはアーサー王というたった一人の王であると。
その言葉は真に受ける者は居なかった、その言葉を残した王の家臣たちですらただの社交辞令であろうと思っていた程である。
その大国の王が残した言葉が一切の誇張の無い言葉であると今この場に居る者たちは初めて理解した。
「ブリテンの領土は貴様たちにくれてやろう。
ただしブリテンの民を傷付けるならば私は地獄の底からでも這い出よう。
ゆめゆめ忘れるな、我が名はアーサー王、ブリテンの民を守護する者なり」
そう言い残すとアーサー王はその場を後にした。
実際はアーサー王はモードレッドから受けた傷により剣を振るうことすら激しい痛みを伴っていた。
しかしその場に居た者でアーサー王が深い傷を受けているなど感づく者など居なかった。
そしてアーサー王がその場を去ろうともブリテンの民たちに危害を加えようなどとする者はもう一人として現れなかった。