Fate/stay another world   作:レッサーパンダ

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エピローグ アルトリア編(後編)

 ベディヴィエールは白起との戦いの際に白起の最後の抵抗にあって足止めを食らっていた。

 それでも何とか白起の最後の足掻きである足止めから抜け出すとアーサー王を探してベディヴィエールは奔走をした。

 情報を集めてアーサー王が赴いたと思わしき場所を追って最後の目撃情報であるキャメロット城の周辺まで辿り着くとアーサー王の足取りは途絶えた。

 ベディヴィエールはそれでも諦めずに少ない痕跡から奇跡的にアーサー王の足取りを掴むと馬を全速力で走らせた、そして木々が生い茂る森へ行きついた。

 そして奥に進むとそこには木に寄り掛かり息も絶え絶えなアーサー王の姿がベディヴィエールの目に飛び込んだ。

 

 「お待たせして申し訳ございません。アーサー王」

 

 ベディヴィエールはそう言うと片膝を付いて頭を下げて傅(かしず)いた。

 

 「私の最後には必ず貴公が駆け付けると思っていた、誰よりも忠義心が厚いベディヴィエールという男ならばと」

 

 アーサー王はベディヴィエールの方を向くと少し笑った様な顔を見せた。

 ベディヴィエールはここまで疲弊したアーサー王を見たのは初めてであった、そして何よりベディヴィエールが驚いたのはアーサー王の表情である。

 ベディヴィエールが知るアーサー王は常に厳格を身に纏(まと)いその表情は険しく他者を寄せ付けないものであった。

 しかし今目の前に居るアーサー王には威厳や厳格も備えているが、それとは別に優しさが見て取れたのだ。

 

 「ベディヴィエールよ、私の王としての最後の命を下す。この剣(エクスカリバー)を泉の精霊へと返してきてくれないか」

 

 アーサー王がこの森に来たのはエクスカリバーを精霊へと返すことが目的であった。

 しかしまともに動けないアーサー王はベディヴィエールにその役割を頼んだのだ。

 ベディヴィエールはエクスカリバーを受け取ると精霊が居る泉へと進んだ、しかしベディヴィエールは途中で引き返すとアーサー王の下に戻って来た。

 

 「どうか傷を癒してアーサー王御自身の手で剣を返しては頂けないでしょうか」

 

 ベディヴィエールは剣を返す為にアーサー王が必死に死に抗っていることを分かっていた、自分が剣を精霊へと返せばアーサー王を繋ぎ止めているモノが消えるのではと危惧していた。

 しかし、アーサー王は首を横に振ると再びベディヴィエールに剣を精霊へと返すように言ってベディヴィエールは精霊の下へと向かわせた。

 ベディヴィエールはアーサー王が考えを変えないことを分かっていたが懇願せずにはいられなかった。

 

 「剣(エクスカリバー)を精霊の下へと返しました」

 

 ベディヴィエールはアーサー王にそう伝えたが、実は一度目と同じように途中で踵(きびす)を返すと嘘の報告をした。

 鞘には傷を癒す力があった、剣自体に傷を癒す力は無いハズであったが万が一にでもアーサー王の傷を軽くしてくれないかとベディヴィエールは淡い期待を抱き、剣をアーサー王の近くに置いておきたかったのだ。

 アーサー王の命令を無視してでもアーサー王に生きて欲しいというベディヴィエールの願いであった。

 しかし、アーサー王はベディヴィエールの嘘を見抜くとベディヴィエールを優しく諭した。

 

 「強大な力(エクスカリバー)は新たな争いを生む火種となる、どうか私のせいでこれ以上多くの血が流れることの無いようにしてくれないか」

 

 ベディヴィエールはアーサー王の思いをこれ以上無下には出来ないと三度目にしてようやく断腸の思いで剣を泉へと返した。

 そしてベディヴィエールはアーサー王の下へと戻るとそこには既に息を引き取ったアーサー王が最初と変わらずに木に寄り掛かった状態で居た。

 

 「アーサー王?」

 

 ベディヴィエールは小さくそう言葉を漏らした。

 そこに居るアーサー王はまるで木漏れ日の中でうたた寝をする幼い少女のようにベディヴィエールの目には映った。そしてそれこそが本当の姿であると悟った。

 ベディヴィエールはアーサー王と離れていた間に誰かがアーサー王の心の重く硬い鎖を解いたのだと分かった、その時に何故か一人の少年の姿が頭に浮かんだ。

 

 (ありがとう、我が王の力となってくれて)

 

 ベディヴィエールは心の中で少年に礼を言うとアーサー王の下へ静かに近寄り繊細で壊れやすい人形を抱く様に片腕で器用にアーサー王を抱えると森の奥へと姿を消した。

 それ以降アーサー王の姿を見た者は誰もいない。

 

 

 ブリテンの民でアーサー王がまた現れるのを待つ者の間で噂が流れた、アーサー王は伝説の島であるアヴァロンで傷を癒していつの日にかまた我々の前に姿を見せてくれると。

 そんなまことしやかな噂話はアーサー王を再び望む民たちの希望が産んだ願いだったのかも知れない。

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