Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
士郎は目覚めると暗闇の中に居た、暗闇に目が慣れてくると今居る場所が何時も鍛錬をしている蔵の中であることが分かった。
そして隙間から太陽の光が若干だが差し込み現在が朝か昼の時間帯であることがうかがえた。
「全部夢だったのか?」
士郎は一瞬全ては自分がセイバーに会いたい一心で夢を見ていたのではないかと頭を過った。
士郎は魔力回路を開いて小さく呟いた。
「トレース・オン」
すると士郎の手の中にはあの時にセイバーと対峙していた敵である{選定者}を討った剣が具現化された。
それはアーチャーから、つまり未来の自分自身(衛宮士郎)から渡された武器である。
アーチャーが何故それを自分へと渡したのか士郎には分からなかった、それでもその剣はアーチャーの、未来の衛宮士郎が歩んだ道を現したモノであると士郎には感じられた。
士郎はその剣を強く握り絞めた。
「あー、士郎こんな所にいたー」
蔵の扉が開くと少女の高い声が蔵の中に響いた。
その声の少女はかつて聖杯戦争で士郎や凛とバーサーカーのクラスのサーヴァントを使役し戦った魔術師の一人、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンであった。
「イリヤ」
士郎は共に暮らす少女の名前を口にした。
そしてイリヤが居る蔵の扉の前に行き空を見ると既に太陽が真上まで上がっていた。
イリヤは何故か少し怒っているように士郎の目に映った、士郎はその少女を怒らせるようなことをした覚えがないのでどうしたのかイリヤに尋ねた。
「もう士郎が居なくなって皆心配したんだから」
するとイリヤの口から士郎が別の世界(並行世界)に行っていた間に起きたことを説明した。
士郎は今が昼間であることから前日の夜から自分は半日ほど姿を消していたと思っていたが実際に士郎が姿を消したのは、一昨日の夜からであった。
そして昨日の時点で学校に無断で欠席をして心配した桜(士郎の後輩で凛の妹)と藤ねぇ(士郎の高校の教師で士郎の保護者の藤村大河)が学校が終わり家に訪れたらしい。
桜と藤ねぇは前日の夜に士郎の家で一緒に食事をしていたことから突然今日になって士郎が消えたことからイリヤに士郎の居場所を尋ねたがイリヤも知らずに皆が困惑した。
「大河なんて士郎が不良になったーて、騒いで大変だったのよ。士郎を見つけたら道場で腐った根性を叩き直すって朝まで竹刀もって士郎の帰り待ってたんだから」
イリヤの話を聞くと士郎は藤ねぇに会った時にどう言い訳をしようか苦笑いをした。
そして心配した桜も朝まで士郎の家に居てそこから学校へと向かったのだと聞くと士郎は桜に多少の罪悪感を覚えた。
「でも警察を呼んだりして大事になってなくて良かったよ」
士郎はこれ以上周りを巻き込んで迷惑を掛けていないことに少し安堵した、しかし桜と大河は警察に連絡をしようとしていたとイリヤが説明をした。
それに待ったを掛けたのが凛であった、桜から話を聞いた凛も昨夜士郎の家に来ていたのだ。
そして藤ねぇたちに少し心当たりがあるので警察への連絡を待って欲しいと言ったのだと。
「どうせ衛宮君のことだから厄介事に首を突っ込んだ可能性が高いわね、私の情報網で何か事件がなかったか調べるわ。
下手したら他の魔術師が絡んでる可能性もあるから警察が動くと返って衛宮君が危険になるかも知れないしね」
凛はイリヤにだけそう耳打ちすると情報を集める為に凛はすぐに何処かへと向かったのだとイリヤは士郎に説明した。
士郎は凛にまでまた迷惑を掛けたのかと頭に手を置いて何と詫びようか頭を抱えた。
イリヤは凛に士郎が見つかったことを伝えると言って自分の部屋に魔術の式神を急いで取りに行った。
「俺も急いで学校に行って桜と藤ねぇを安心させないとな」
士郎はそう言うと急いで制服に着替えると学校に向かおうと革靴を履いた。
すると家を出ようとする士郎にイリヤが慌てた様子で玄関に来ると皿の上に乗った不格好な形をしたおにぎりを差し出した。
「士郎が戻った時にお腹が空いてるかもと思って作って置いたの、あんまり形は良くないけど」
イリヤはそう言うと士郎はイリヤの頭に手を置くとありがとう、と感謝の言葉を伝えた。
「イリヤ、今日の夜に食べたい物を考えといてくれ。迷惑かけたお詫びに今日は皆に精一杯腕を振るうからさ」
士郎はそう言うとイリヤが作った不格好なおにぎりを口に詰め込むと学校へと急いで走りだした。
士郎は走りながら今晩の夕食の献立に頭を巡らせていた、長い間調理することから離れていた士郎は今晩は存分に腕を振るうつもりでいた、家にある食材だけでは物足りず学校の帰りにどんな食材を買おうかと悩みながら。
(桜と藤ねぇ、それと遠坂と…)
今回のことで心配を掛けた桜と大河、そして迷惑を掛けたであろう凛を食事に招こうとしていた。それだけではなく他にも誰かを呼ぼうと士郎は今晩の食事に呼ぶ相手を考えていた。
(美綴と一成も誘ってみるか)
士郎は一成(士郎の友人で士郎の通う学校の生徒会長)と美綴(士郎が元居た弓道部の部長)も夕食に招こうと思った。
士郎は様々な料理を想像して作るつもりでいたが流石に全員を呼んでも食べきれないかも知れない、と疑問が過ったが残った分は次の朝にでも回せば問題ないだろうと考え直した。
今日は今まで世話になった皆に自分が作った料理を士郎は振る舞いたかった、これから先にその機会がないかも知れないと思いつつ。
士郎はこの時、既に高校を出た後の進路をどうするかを決めていた。
そんな時ふと今晩の食卓を囲むイメージの中に一人だけ絶対に居ない人物を想像して士郎は苦笑した。
(そしたら食事が残るどころかまた藤ねぇとおかずの取り合いになっちまうか)
士郎はその食卓に一番居て欲しい少女の姿を想像した、だがそれは決して叶わないことを士郎は知っている。
その声を聞くことも、その姿を見ることも二度と無いであろう、そう思うと士郎は拳をギュッと握り閉めて走るスピードを上げた。
(それでも、二度と会えないとしても、俺の中にずっと消えないセイバーが残してくれたモノが確かにある)
士郎はどれだけ疲れようとも学校まで一度も足を止めることなく駆けて行った。
平和な昼下がりに暖かい風が町に吹く、また季節が一つ変わっていくことを知らせるように。
次回の投稿で最後となります。
今回までの話が本編で次回に投稿する話がエピローグの予定でしたが、やっぱり士郎とセイバーが居てこそFateと思う私は士郎とセイバーが別々になった時点で全てエピローグとする形にしました。
プロローグが長くて申し訳ないですが、次で終わりますので最後まで読んで下さると嬉しいです。