Fate/stay another world 作:レッサーパンダ
エミヤは{選定者}の言葉に脳の動きが一瞬止まった。そして次の瞬間に笑いが込み上げきた。
かつて第五次聖杯戦争で凛とセイバーを守るためにバーサーカーの前に立ちはだかり、唯一のチャンスを自ら捨てた。
エミヤは凛とセイバーを守った選択に後悔は無い。しかし、もしも自分を縛るこの呪縛から解き放たれる事が出来たなら、世界の均衡を保つシステムの一部となった自分を唯一開放するかもしれ知れない可能性。
殺したところで自分が今の役目から開放される可能性は万に一つであろう、それでも万に一つの可能性を得ることが出来たのだとエミヤは笑った。
「どうやら協力関係を築けそうですね。こちらとしても{マーリン}という一番厄介な障害を取り除いた直後に新たな不確定要素の出現に多少頭を抱えていたので助かりますよ」
{選定者}の{マーリン}を取り除いたという言葉には続きがあった、{マーリン}を殺すために召喚した魔術師殺しのエキスパートが{マーリン}の始末に向かったが命を奪うことには失敗したのだ。
だが{マーリン}は深手を負い姿を眩ませた、流石は伝説の魔術師だと{マーリン}のことを{選定者}は称賛した。しかし{魔術師殺しのエキスパート}が{マーリン}を追っているので{マーリン}がアーサー王たちと合流して我々の邪魔になることは無いと自身を持って{選定者}は口にした。
「それでどうアーサー王を殺すのか我々も聞いてないので、早く段取りの説明を願いたいんだがな」
洞窟の奥から線の細い背の高い男が{選定者}に質問を投げかけた。
{選定者}はその質問を無視して線の細い背の高い男のことをエミヤに紹介をした。
「こちらは宋江(そうこう)殿、かつて梁山泊という豪傑たちの頭領であった英雄です」
{選定者}は新たに現れた宋江のことをエミヤに簡潔に説明をすると洞窟の奥の光の届かない方向にチラリと視線を送った。
エミヤも洞窟の奥の方にもう一人誰かいることは気配で分かっていた、そしてその人物が只者ではないということも。
「他は出払っていますがもう一人仲間がいるのですが、気難しい方なので紹介は今度にしましょう。義経殿や宋江殿以上の英雄なんですがね。
一人殺せば殺人者で百人殺せば英雄と言うのであれば、奥に居られる方は40万人の人間を殺した大英雄ですからね」
エミヤは{選定者}の言葉に多少驚きの表情を見せた、40万人もの人間を殺した人物など一部の独裁者か有史以前の神話の人物くらいしか思い浮かばなかった。
奥の人物に多少の興味は覚えたがエミヤはどうでもいいことだと洞窟の奥の人物のことよりも今後の{選定者}の行動について質問をした。
「アーサー王を殺す計画は着実に進めているのでご心配には及びません。先走ってアーサー王に殺された者が一人いましたがね。
アーサー王と円卓の騎士たちは英雄の中でも別格です、あなた方ですら一対一の戦いでは厳しいでしょうからね」
{選定者}は笑いながら仲間の死とどうでもよさそうに話した。そして他の者にアーサー王と円卓の騎士と許可なく戦わないように言った。
「確認するがアーサー王とやらを殺すことに成功したら約束はちゃんと守って貰えるんだろうな」
「モチロンですよ、アーサー王を殺した暁(あかつき)にはあなた方の願いはちゃんと叶えるのでご心配なく」
義経は{選定者}に確認を取ると納得したのかそれ以上は何も言わなかった。
エミヤは義経たちと{選定者}が交わした約束とやらについて{選定者}に尋ねる、すると{選定者}は自身が呼び出した義経たちサーヴァントのことについて説明をした。
「私が呼び出しほとんどの英雄たちにはある共通点がありましてね、義経殿も宋江殿もその例に漏れずなんですよ。
その共通点は主と言うべき存在に裏切られているんです、そして約束とはその主に対する復讐です」
{選定者}の話を聞いてエミヤは自身の記憶を確かめる、義経は兄である頼朝に献身的に仕えたが最後はその兄に殺された。
そして梁山泊は最初こそ自国に敵対していたが後に自国の為に外敵と戦うが最後は自国に裏切られた。洞窟の奥の40万人を殺した人物も裏切りにあった人物なのであろうかとエミヤは再度洞窟の奥を見た。
「英雄を召喚して願いを叶えるか、まるで冬木の聖杯そのものだな」
エミヤは冗談交じりで{選定者}を皮肉めいた。
「私は聖杯と関係があるのかもしれませんよ。極東の地である冬木市の聖杯戦争を私はよく知ってます、第四次と第五次聖杯戦争については特にね」
{選定者}はエミヤに怪しい笑みを見せた。