東方緑妖想   作:和菓子屋蜜柑

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サブタイトルの通り、妖夢視点です
爽歩が白玉楼を去ってからの話となります
爽歩がいなくなった詳しい詳細は次回で


庭師とその後

動けるようになると、私は爽歩さんが置いていった救急医療道具で、手当を始めた

私も、一応持ってはいるが、包帯ぐらいしか、もっていない

爽歩さんが置いていってくれた救急医療道具の中身は常備薬(痛み止めから始まって、腹痛の薬など)包帯はもちろん、消毒薬、傷口を縫う針などもあった

爽歩さんは私に手加減をしていたようで、打撲が多かったけど、切り傷は、ほとんど無かった

傷の手あてが終わると、桜の花びらが私の目の前に舞い降りた

薄紅色の桜の花びら

これは・・・まさか・・・西行妖!?

 

「そう・・・ほさん?」

 

彼は幽々子様を止めることができなかったのだろうか

彼は幽々子様に殺されてしまったのだろうか

他に向かっていた異変を止める人間たちも幽々子様に殺されてしまったのだろうか

 

「はやく、いかないと・・・」

 

爽歩さんが、幽々子様が、どうなったのかを知るために

飛ぶ力も残ってなく、痛む身体で白玉楼へ続く道を上っていく

 

急がないと、急がないと

焦る気持ちと反比例して、脚は上手く動かない

怪我はそれほどしてないとは言えども、脚が鉛のように重い

 

「いっ・・・」

 

上手く脚が上がらずに、普段なら絶対に転ばないような階段で、脚がもつれて、転けてしまう

急がなきゃならないのに

両手を階段に付き、そのまま登る

まるで、あの人のように

 

「爽歩さんがみていた景色ってこんな感じだったのかな・・・」

 

四つ這いで進むと、さっきよりもマシに進める

 

でも、私は爽歩さんに会って何がしたいんだ

幽々子様の無事を確かめてなにがしたいんだ?

そもそも、私は白玉楼に帰ることは許されるのか

 

あと少しというところで、桜の花びらが止まった

空から舞って来た薄紅の花びらが消えた

代わりに暖かな風が私の頬を撫でた

それは春を思わせる風

 

と、いうことは・・・爽歩さんは・・・!

生きていると半ば思い込み、私は四つ這いだった体を起こし、両足に力をいれた

あの、サヨナラという意味を彼から聞いていない

 

「そう・・・ほさんっ!!」

 

さっきまで体が動かなかったなんて思わないくらい、足に力が入る

最後の階段を駆け上り、息が乱れたまま、西行妖の方に向かう

途中で脚がもつれて、何度も転びそうになる

でも、急がなきゃ

 

西行妖の元に着くと、そこにいたのは、紅白の博麗の巫女と白黒の魔法使いだった

・・・確か、幽々子様の元に行った人間は、もう一人いたはず

そう、爽歩さんと一緒にいた、あの銀色の髪をした女性。

幽々子様は、博麗の巫女と白黒の魔法使いの間で座っていた

 

「幽々子様っ!」

 

「あら、妖夢。無事だったのね」

 

「あ、半人半霊」

 

「失礼な。私には魂魄妖夢という、立派な名前があるんです」

 

白黒魔法使いに半人半霊と呼ばれて、癪にさわり、言い返す

種族名で呼ばないで欲しいものだ

 

「妖夢。ごめんなさいね」

 

何を話せばいいかわからなく、黙っていた私に、幽々子様が言う

 

「異変に巻き込んで」

 

「い、いえ」

 

「ところで、妖夢。爽歩を知らない?」

 

「え・・・」

 

「あ、爽歩なら咲夜に連れられてったわよ。ついでに私は霊夢。博麗霊夢」

 

博麗の巫女・・霊夢が言った

 

「あの、幽々子様。何も・・・言わないんですか?」

 

「・・・私に言える資格なんてないわ」

 

「あ~。幽々子?私たち帰るんだぜ。流石に生きてる私たちにはキツイからな」

 

「そうそう、宴会の費用、あんたらが出しなさいよ」

 

そう言って魔理沙と霊夢は飛んで帰った

幽々子様に手を貸し、起こすと、幽々子様は言った

今、一番私が知りたくて、知りたくない、触れて欲しくないこと

 

「ねぇ、妖夢。あなた・・・爽歩と戦ったの?」

 

「・・・はい」

 

「私も爽歩と戦ったわ。思い切り、弾幕もぶつけた」

 

「っ!」

 

「でも、勝てなかったわ。・・・私が今いるのは彼のおかげよ」

 

「私も・・・勝てませんでした。あの、幽々子様。なんで・・・爽歩さんは・・・いないんですか・・・?」

 

「妖夢・・・」

 

「爽歩さん、さよならって、私に言ったんです」

 

「爽歩は・・・暇を頂くと言って、私を落としたわ。私を、あなたを救うために」

 

暇を頂く・・・

白玉楼に務める事を辞める・・

 

「そんな・・・爽歩さんに、好きって言ってもらえたのに、大好きって言ってもらえたのに・・・もう・・・・会えないんですかっ・・・」

 

嗚咽が漏れる

涙が止まらない

私は俯いた

こんな顔、幽々子様に見せられない

 

「妖夢・・・ごめんね・・・私はあなたの気持ちは知ってたわ・・・。本当に・・・私の我が儘に付き合ってもらって、あなたの幸せを壊してごめんなさい」

 

幽々子様の悲痛な声

顔を上げると、形のいい目の端から涙が流れていた

 

「ごめんなさい、妖夢。ごめんなさい、爽歩」

 

自分(幽々子)に付いてきてくれた従者

自分(幽々子)に反旗を翻し、主人の命を救った従者

大切な従者と、従者だった者に対して謝っていた。

二人の従者の幸せを奪ってしまった事に対して、謝っていた

 

「幽々子様・・やめてください・・・。私に謝られる資格なんてありません・・・」

 

「違うわ。従者の幸せを祈るのは、主の役目なの・・・。妖夢、爽歩・・こんな主でごめんなさい・・・っ」

 

「ゆ、ゆゆこ、さまぁっ」

 

こんなに泣いたのは、師匠が、お祖父様が何も言わずに、白楼剣と楼観剣を置いて、白玉楼を去った時以来だろう

感情のまま、涙を流すし、流れる涙が涸れた頃、私はようやく顔を上げれた

 

「幽々子様、私、お夕飯の準備してきますね」

 

爽歩さんへの思いを逃れることから私は、夕飯の準備に取りかかった

目元が痛い。熱くなって、重い

多分、赤くなってるだろう。あとで幽々子様にも、氷嚢を持って行こう

厨房へやってくると、そこに置いてあったのは、爽歩さんの前掛け。

白玉楼から出る前に置いていったやつだ

私が爽歩さんに贈ったもので、とても大切にしてくれていたもの

 

「爽歩さん・・・」

 

涸れたはずだった涙がまた出そうになる

いけない。これじゃ、また振り出しだ・・・

 

「お夕飯・・・作らないと・・・」

 

「痛っ・・・あ・・・」

 

包丁で野菜を切っていると、指を切った

近くにあったちり紙で圧迫止血をする

予想以上に、ぼーっとしながら野菜を切っていたようだ

血が止まったのを確認して、私はまた夕飯を作り始めた

 

「こんなに、白玉楼の厨房って・・・広かったっけ・・・」

 

一人で立っている厨房は寂しくて、広かった

お夕飯ができあがって、いつもの机に箸を並べ、ご飯とおかずを全て並べた

幽々子様も既に座って待っている

 

「妖夢、大丈夫・・・?」

 

「はい、大丈夫です。幽々子様、これで目元をお冷やしください」

 

「ありがとう」

 

始まった夕食は、味気なく、寂しい

ぽつんと、抜けた場所は狭いけど、大きい

 

 




書いてて寂しくて、泣きたくなった
爽歩が白玉楼を辞めた理由は、主である幽々子に対し、牙を向き、挙げ句の果てに、本気の弾幕で落としたためです
爽歩は、、大切な場所である白玉楼を、妖夢や幽々子様のそばから自分がいなくなることで、自らの罪?を償おうとしました
一方、妖夢は爽歩に、好きと伝えられなくて、白玉楼から去ってしまった爽歩にもの凄い喪失感を抱いています
最後に、爽歩から伝えられた「大好き」という言葉と「さよなら」という言葉が昔、最愛の祖父である妖忌に何も言われずに白玉楼から去った姿とだぶっています
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