塾長ほむほむ と 申します。
拙い作品ではありますが、なんとか完結まで行けるようにのんびりやっていきます!
よろしくお願いします!
プロローグ
僅か18歳にして、ジスタート王国とブリューヌ王国の王となった『ティグルヴルムド』の治世が始まって40年・・・・・・ティグルを慕っていた戦姫達や王妃殿下もひとり、ふたりと去っていき、王の座とあの黒弓を義理の息子である『ヴァレリー』に譲ってからさらに10年が経過しティグル自身にも一陣の風になるときがせまっていた。
「・・ティグル様」
聞きなれた侍女・・・ティッタの涙混じりの声が聞こえる。視界が年老いたティグルの思うようにはいかないため見えないが、おそらく泣かせてしまっているのだろう。
ここはブリューヌの王都ニースでもジスタートの王都シレジアでもない。
ーーーブリューヌの片田舎アルサスである。さらに言うならば「ティグルヴルムド」初代王の生家だ。
王の座を譲った後、それぞれの地にいる実の子供たちの反対を押し切りティッタとふたりだけでこの小さな屋敷で暮らしている。残念ながらティグルを慕っていた伴侶たちはもうここにいるティッタしかいない。
それがティグルがここに戻ってきた大きな理由である。暮らし始めた当初はまだ身体も動けていたため狩りをしていたが、ここ二年前から床に臥せることが多くなっていた。
そのため物思いにふけることが多くなりいつしかティグルは自分の行ってきた治世が正しかったかのかどうか走馬灯のように振り返っていく中で、自然と自らが王になる前の短くも長かった2年間に想いを馳せていく。
「ティ・・・・ッタ・・・・」
ティグルは天井を見つめたままそばにいるであろう伴侶の名前を呼んだ。もう自分に残された時間がわずかであることを覚悟したのかもしれなかった。
「はい、ティグル様」
あふれる涙をこらえ両手で細くなったティグルの左手を重ねてけなげに返事をする侍女。それを聞き最後の力をしわがれた声で言の葉に注ぐ。
「・・・ティ・・・ッタ・・・・・・・ほんとうに・・長い間、私・・を支えてくれてありがとう。感謝している。」
「ティグル様逝かないでください・・・」
「・・・すまない・・思えばティッタにはずっとつらい思いをさせてきた・・もちろんエレンやみんなと婚姻を結び家族を築けたこと後悔はしていない。この国の未来ももう大丈夫だろうと思う。・・でもティッタとは子供をなすことができなかったことが心残りなんだ・・。」
ティッタは言葉を発さず白の混じった栗色の髪の毛を左右に振りながら両手の力を若干強くする。
「・・・それだけではない・・・・・私が・・いや俺がエレンに捕虜にされてから、王となるまでの2年間はやはり何物にも代えられない思い出であり若干の心残りも正直ある。」
「ええ・・・。」
「だから・・・もしまた目覚めることができたなら・・・あの日のティッタに起こしてほしいなと思って・・・」
ティグルはなんとか笑おうとして、むせた。ティッタは手を一度はなし膝の上に置いていた白い布でティグルの口元の赤い線を消していく。そして再び両手をそえる。
「だから・・・なんといえばいいのか・・・・もしあの日からやり直せたならいろいろと運命が変わっていたかもしれないし・・ティッタと家族をなすことが・・・できたかも・・・」
もう一度咳き込み、赤いものを口から吐き出すことこそこらえたが、声の張りが一段と弱くなったようにティッタには感じられた。
「・・・ティッタ・・・もう夜だし俺は・・寝るよ・・・もう・・・ティッタに無理やり起こされることもないだろう・・・。向こうでエレンたちが待っているだろうし・・・」
「嫌です!ティグル様!!!寝てはダメっ!!!」
もう限界だった。ティッタはあらん限りの声と両手に込めた力でティグルを現世につなぎとめようとする。
「嫌っ!嫌っ! お願い!!わたしを・・・わたしをひとりにしないでくださいティグル様っ!!」
その声がほんのわずかティグルに力を与えたのか、天井をみていた顔がティッタのほうに向けられた。精一杯の笑顔を浮かべて何かを喋ろうとしている様子にあわててティッタはその補助をするように両手の位置を変え一言一句漏らさないようにする。
「・・・そのお願いはちょっと聞けないかな・・・だからティッタに約束する。・・・」
「・・・やく・・そく?」
「・・ああ・・もしも次に俺が目を覚ますときは・・一番最初にティッタに・・・おはようって言うよ・・・それじゃ・・ダメか?」
「・・・あ・・・・・・・それで・・・かまいませんから・・・だから・・・・」
ーーーーティッタは・・・逝かないでとはもう口に出せなかった。微笑こそ浮かべているもののティグルの身体が冷えてきており瞳の光もなくなっているのがわかったから。
「・・・・ありがとう・・・・ティッタ・・・・あい・・し・・・」
その最後の言葉の続きを言おうとしてティグルの口は動こうとしたが、声はもうなかった。「愛してる」 と言おうとしたのだろうとティッタは思ったが、
笑顔はそのままにティグルの両目が静かに閉ざされた。もう目覚めない眠りへと誘われていった。
「え?・・・ティグル様・・・ティグル様・・・・いやぁああああああああああああああああ!!!!!」
それに気づいたティッタは最愛の男の亡骸をもう一度抱きながら全身を震わせて大声で泣きだしたのだった。
改訂は常に意識しながらやりますのですごくスローペースです!