魔弾の王 ~再臨~   作:塾長ほむほむ

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15話

失敗するとは全く思っていなかったのかエレンは目を丸くして紙を凝視する。

 

 

『前の俺』の時と変わらない素の可愛い表情を見せたエレンに思わず抱き締めてしまいそうになったが、どうにかこらえてうつむいて紙を拾いリムに渡した。

 

 

 

『エレオノーラ様、いつも言っておりますが紙は貴重なのですから、無駄遣いはなさらないでください。』

 

 

 

『気を付ける』

 

とまるで母親に叱られたこどものような顔と声でエレンはぽつりと言った。サーシャに助けを求めるべく視線を向けたが、

 

 

『エレン、今日は体調もいいみたいだしティグルと話すのが楽しみなのは僕もそうだからわかるけど、まずはやるべきことをやろうか。』

 

 

と姉のようにたしなめられエレンは書類の処理に戻りほどなく仕事を終えた。

 

 

 

 

『今日も起こすのに手間取ったのか?』

 

 

『・・いえ。今日は声をかけたときには起きておられました。』

 

 

ーーーリムの返答に俺は苦笑を浮かべ先ほどの部屋でのことを回想する。

実際のところリムの殺気と気配を感じて、飛び起きたのだ。『前の俺』の時と同じように彼女を危険な存在と俺の本能が認識したのだ。

 

『前の俺』の時のうっすらとした記憶だが、後に彼女と俺は『愛妾』の名目で男女の関係をもつが、俺と一緒に『盗み食い』をするまでになるハズだ。

 

 

もちろんどちらの事も言えないので黙っておく。

 

 

『捕虜としての自覚が出てきたのかな?』

 

 

エレンはくすりと笑ってややおぼつかない様子で杖を使いながら椅子から立ち上がろうとする。俺は思わず声をかけてしまう。

 

 

 

『エレン・・・さすがの俺も君が立って話すことが辛いだろう事はわかる。俺としては少しでも長い時間君と話したいんだ。だから座ったままでかまわない。』

 

 

 

 

リムの冷ややかな視線が俺に突き刺さるが、それに気づかないようにして笑みを浮かべたサーシャと急に顔を赤くしながらなおも立ち上がろうとするエレンに向ける。

 

 

『だ、だが・・・・』

 

 

 

『エレン・・・・ティグルがそういうんだからそうしたら?ここは公式の場でもなんでもないし。無理することないって僕は思うけど?』

 

 

 

『・・・・わかったそうさせてもらう。』

 

 

サーシャのひと押しもあってエレンは再び座った。

ややしばらく顔を赤くしていたが落ち着いたのを見計らってエレンが話の口火を切った。

 

 

 

『さて、まずお前に最初に聞きたいことはあの時『レギン』のことを『レグナス王子』と呼んだことについてだ。異国のサーシャや私はおろかリムでさえレグナス『王子』がブリューヌの次代の後継者に近い王族だということは知っている。最初にレギンに私たちが話を聞いたとき『レグナス王子』という言葉は出てこなかった。レギンがレグナス王子本人であるなら王族ということにもなる。レギン本人が私たちに王族であることを言わなかったのは自分の保身もあるからまだ納得できる。だがただの『伯爵』でしかないお前がなぜそのことを知っている?女の服を纏っていたレギンもお前が『レグナス王子』と呼んだことに驚いている様子だった。つまりレギン本人から聞いたわけではないということだ。説明してもらおうかティグル?』

 

 

 

ーーー正直不味すぎるが嘘をでっちあげたところでかえって立場を悪くするだろう。ならば・・・・

 

『前の俺』の記憶と一部の捏造を頭で構築しゆっくりと俺はそれに答えた。

 

 

 

『・・・いまから6年前に行われたブリューヌの狩猟祭にて俺は『レグナス』と名乗った『王子』と面識がある。エレン達も知っているだろうがブリューヌでは弓は蔑視されている。そんな武器を持った俺にレグナス王子が興味をもったというわけだ。とんでいた鳥を射落として火をおこして捌いて、こんがりと塩をふって焼いてな。鳥肉を食べながらレグナス王子は興奮しながらこう言ったんだ『焼きたての、あたたかいものを食べたのははじめてだ』とね。そのときその・・・本人は気づかなかったみたいだし覚えてないようだが、彼の・・・・いや彼女の裸の上半身を偶然に見てしまったから『男』ではなく『女の子』だと知ったんだ。

レグナス王子には『狩猟場でのこと』については秘密にしろと言われたし『レギン』という名前は出てこなかった。だから彼女の顔を見て『レグナス王子』と呼んだんだ。・・・それが理由だが納得してもらえるか?』

 

 

そう言ってからエレンやリムは、そういう経緯なら・・・・と納得してくれたのかうなずいてくれたが・・・・

 

 

 

『・・・・筋は通ってるけど、僕は納得できないなぁ』

 

 

黒髪の戦姫は疑いのまなざしをこちらに向けて言った。

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