『・・・納得できないとはどういうことだサーシャ?』
エレンが俺の言葉に納得できないと言ったサーシャに振り向くと、サーシャは俺の黒弓をもったまま続ける。
『・・・さっきも言ったけど、筋は通ってるからおおよそについてはティグルは嘘を言っていないとは思うよ。きっと、レギンがレグナス王子であるとは知らずにご飯を一緒に食べたことは間違いないとは思う。レグナス王子から狩猟場でのことを誰にも話さないようにと言い含められた事もその通りだと思う。』
『なら、どこが納得いかないんだ?』
白銀の髪の毛を触りながらエレンが促す。
『ティグルがレグナス王子の裸の上半身を見てしまった・・・のくだりの部分さ。』
ーーーサーシャの言葉に俺は冷や汗をかかないようにつとめなければならなかった。まさにサーシャの指摘してきた部分こそ、捏造した部分だからだ。そしてサーシャは俺に向けて続けて言った。
『ティグルはいまいくつだい?』
『・・・16だ。』
『とすると6年前なら当時10歳だね・・・・レギンの歳は教えてもらってはいないけれど・・・僕の見立てではティグルより『年上』ってことはないと思うんだ。つまり最大で見積もっても同い年か年下となる。エレン・・・・君が10歳くらいのとき、同い年くらいの男の子から裸を見られたりした事はなかったかい?』
『・・・リムはもとよりサーシャも知ってるだろうが、私はそのころにはもう傭兵団で剣を振っていたしな。年上の男の方が多かったハズだがもしかしたらいろいろ見られていたのかもしれん。川で水浴びなんかしているときに皆から男みたいな胸だなと言われた事もあったな。まぁ、剣を振るのには『胸もそこまで邪魔』ではなかったしな。リムはどうだ?』
『・・・・そうですね。エレオノーラ様よりは女として男性の『そういった視線』には注意を払ってはいましたね。私は『若干身体の成長』が早かったようで、好きでもない男性に裸を見られるような真似はできませんし。もちろんそういった目で見られないように工夫をしていましたね。』
ーーー『前の俺』も知らなかった幼き日のエレンとリムの女性としてのたしなみの差を聞くことはできたが、サーシャがここから何を言いたいのかが予想できない。
『なるほどね。僕もリムアリーシャと同じような感じだね。『性別』を偽る必要もないし。つまりね、6年前の時点でレギンは『女性』でありながら『男性』になりきらなきゃいけなかった。でも身体の成長はごまかせるものじゃない。もし僕やリムアリーシャのように、年相応以上に女性として身体が成長していたらそもそも裸の上半身じゃなくても男性じゃないってわかっちゃうんだから。でも、ティグルは裸の上半身と言った。ということは年相応の成長しかしてないって事だと予想できる。だってレグナス王子は『男性』として生活しているわけだから、そんな性別を偽らなきゃならないレグナス王子が簡単にボロをだすだろうかって僕は思うのさ。それともうひとつ、レギンは当時男性の姿でティグルに接していたんだよね?でもあのときはエレンの好意で女性用の麻の服を着ていたんだよ?ティグルが女性用の服を来た人物をレグナス王子と呼び掛ける事に全く迷いがない点も怪しいといえば、怪しい。だってレグナス王子が女性であることをティグルが知っていることはレギンは知らないハズなんだから。レギンが驚いていた理由もそのあたりにあるんじゃないか・・そう思ったのさ。』