エレンとサーシャが自分の『竜具』をそれぞれ手に俺に向けながら言った。
俺はわかってはいるが、『今の俺』は『知らないハズ』であるし『魔物』達に関する話を聞くために、なれないながら進める。
「・・・一応聞くが、その剣と双剣は、常識では考えられない力を発揮するものなのか?」
「もちろんだ。『竜技(ヴェーダ)』と言ってな。私もサーシャも使える。体力は使うし連発はできんがな。」
エレンが答えサーシャも無言で頷く。俺はエレンの『銀閃』に視線を向けて言った。
「・・・・だとするならば、おそらく『魔物』達が出てきたら俺と一緒に戦ってもらうことになるかもしれないな。ひとつ聞かせてくれ。正直に言って、俺は『魔物』と直に相対したことはないんだ。だから、先ほどの先祖から伝わる話までしかわからないんだ。だから2人の経験と情報を教えてもらえないか?」
それに答えたのはエレンではなくサーシャだった。
「なら、僕の話を聞いてほしい。」
俺は頷くと、サーシャが忌々しげに語りだした。
「今から、4ヶ月程前の事になる。僕の公国の『レグニーツァ』と『ルヴーシュ』で海賊討伐の共同作戦を行ったんだ。作戦は滞りなく進んでいたんだけれど、僕の旗艦になんの前触れもなく『魔物(ヤツ)』が現れたんだ。最初は武器もなく鎧すら身に付けていない麻の服を着こんだ人間の男に見えていた。僕の事を『双剣』と呼んだんだよ。物凄い殺気を帯びた赤い目でね。」
ーーー『前の俺』はその時サーシャと一緒に戦った『リーザ』と『マトヴェイ』からそれぞれ『トルバラン』と自らを名乗った魔物との戦いの一部始終は聞いていた。エレンや他の皆には内緒で。だが、時期としてはもっとあとにおこる出来事だったハズだと記憶している。
ーーーどういう事だ?
「僕がヤツに敵意を向けると、瞬く間に身体がふくれあがって額には角が何本が生えてね。正直泣き出したくなったよ。しかも僕を狙って振り下ろされた腕は船の甲板をあっさりと粉砕して大きな穴を作る始末。まともにやりあえるとは、思えなかったよ。そのあとなんとかヤツに手傷を負わせて、エリザヴェータ・・・ルヴーシュの戦姫が援護に来てくれて『しばらくやりあったところ』でヤツは行方をくらました。・・・と、こんなことがあったからねすぐに『連絡のとれる』戦姫達には魔物についての報告をいれたんだ。」
「ジスタート王には報告をしていないのか?」
「うん。僕を入れた『6人』の戦姫で話し合った結果ね。『魔物』なんていう『武勲詩(ジエスタ)』にすらでてくるかどうかもわからないものを証拠もなく報告できないって事でね。もともと陛下は事を荒立てるのは好まないお方だし、思わぬ混乱を招く可能性もあったからね。実際、連絡がとれなかった『ブレスト』の戦姫はどうかわからないけど『魔物』と直接やりあったのは僕とエリザヴェータだけだったみたいだしね。」
何気なく『オルガ』と思われる『ブレスト』の戦姫の情報も手に入った。彼女は今回もこの世界のどこかを見て回っているのだろう。
今は『魔物』の問題が先だ。
「・・・となると6人の戦姫は人間を襲う『魔物』が存在するという認識は『共有』していると解釈していいんだな?」
「認識の重要の程度に差はあるけれど。そう解釈してくれればいいよ。」
ーーーサーシャの言葉に俺は安心感を得た。おそらく俺は遅かれ早かれ魔物達と戦うことになるだろう。そしておそらく始まるであろう『ブリューヌの内戦』も絡んでくる。頭のなかを整理するのは重要になりそうだった。