「・・・私が思っていた以上に大事な話がきけてなによりだったな。助かったぞティグル。」
エレンがそう口を挟むと俺は頭の中の整理をおさめて、
「いや、こちらこそ貴重な情報だったよ。捕虜の俺にそこまで話してくれるとは思っていなかったし、なにも話が通っていない状況で『魔物』を迎え撃つことになるよりよほどいい。これなら多分『なんとかなるさ』。」
ーーー俺の言葉にエレンがなにか思うことがあったのか口を開いたままになっているが、サーシャが続ける。
「魔物の話はこれでいいかな?僕にとっても重要な情報を得られたし、聞けてよかったよ。さて、今度は僕からティグルに聞きたいことや話したいことがあるんだけれどエレンいいかな?」
「・・・あ、ああ・・・かまわない。」
「じゃあ・・・・ティグル・・昨日君を訓練場に呼んだ理由を話そうと思ってね。」
ーーーサーシャの持つ俺の弓の下から覗く白い太ももに目が引き付けられそうになったとき横から今まで黙っていたリムの冷たい視線を感じたため、俺は慌てて視線をあげた。
『前の俺』と変わらず今の俺も『女好き』であることに変わりかはないんだろうかと思いながら、視線に気を付けるようにする。
「結果的には、俺の方から力試しを提案する形にはなったが、本当は違ったんだろう?」
「そうさ。リムアリーシャ、僕がティグルを捕虜にして『ライトメリッツ』に連れてきたことについてもう1度不満を唱えた理由を説明してもらえるかな?」
サーシャに名前を呼ばれ説明を求められたリムは、愛想のない表情と憮然とした色を青い瞳に宿らせて渋々と言った感じで口を開いた。
「私をはじめ、将軍や部隊長がエレオノーラ様の名代の立場にあったアレクサンドラ様がヴォルン伯爵を捕虜としたことに不満を表明しました。その理由は、エレオノーラ様は戦姫となられる以前から、幾多の戦場を駆け抜けてきましたが、いままで敵を捕虜にしたことは1度としてなかったのです。」
どこかで聞いたことがあるような話だったが、俺は頭の中で整理して問い返した。
「・・・・つまりエレンの名代たるサーシャが捕虜を2人も連れてきた。エレンに何らかの心境の変化がありそのような指示を与えた。もしくはそういう心証を周囲に与えて、『ライトメリッツ』を混乱させようとしている・・・・そういう風にとられかねない。・・・か?」
「・・・そういう事です。しかも兵士達の間にくだらない噂が流れたのです。」
「噂?」
「僕が君に一目惚れしたとか、偵察を送ったエレンが君を気に入って、僕に捕虜として連れてくるように命令したとか、そういう噂だよ。」
サーシャの言葉に俺はエレンを見る。
「少し考えれば、そうでないことはわかりそうなものだが、今まで『捕虜』にした事がなかったという事実が独り歩きしたようでな。不満を述べた者達に理由の差異はあれど私も静観するわけにはいかなくなってしまってな。サーシャに事情を聞けば『弓の腕』は尋常ではないというからその腕をリムや皆の前で見せつけてやれば・・・・そういう意図で呼びつけたんだが、予想外の事はあったが結果としてはよかっただろう。正直私もサーシャの慧眼にはおそれいった。」
エレンの胸の谷間に視線が向きそうになるのを懸命にこらえている俺。エレンに続いたのはサーシャだった。