「まぁ、僕としては戦後の処理が一段落したらティグルを『レグニーツァ』に連れていこうと思ってるんだ。いくらレグニーツァの役人の皆が優秀であっても、いつまでも公国を戦姫不在のままにはしておけないからね。もちろんレギンの提案は『前向き』に検討はさせてもらうけれど、ティグルはあくまで、僕の捕虜だからね。レグニーツァに一緒に来てもらうことに支障はないハズだよ。レギンはライトメリッツに残ることになるけれど・・・エレンやリムアリーシャがいるから安心してほしい。もしなにかあったならまたレグニーツァから向かえばいいんだからね。」
ーーーはっきりいってそれは困る。俺の記憶が確かならそう遠くないうちに『ブリューヌの内戦』がはじまる。そのとき、エレンに・・・・
そこまで考えて今の現状をもう1度整理した。そして聞かなければならないことをあらためて認識したのだ。もしかしたらリムあたりに殴られる可能性もある。だが、ここではっきりさせておかなければならないのも事実だった。
「それはたしかにその通りだ。だが、それはそれとして俺もエレンに聞きたいことがある。」
「・・・ほぅ?私にか?答えられる事なら答えてやろう。」
「・・・言いにくいんだが、エレン・・君はなにか『病気』もしくは長期的な『怪我』を抱えていたりするのか?」
そのときサーシャ以外 の2人の様子が多少ではあるが変わったのを感じた。
エレンはまだ余裕の表情を見せているが、リムはあからさまに怒りというか落ち込んでいるというか、不安定な表情を浮かべる。
「・・・・どうしてそう思う?」
「ひとつはあからさまに足を引きずっていること。それに立っているときに杖をついている君の様子を確認していたが、かなり辛そうにしていたこと。ふたつ目としては、今回の会戦は、本来なら君が出征するはずだったんじゃないか?リムアリーシャさんの話や君の佇まい、在り方を見る限りだがそれに特別戦闘が苦手ということもなさそうだ。病気ないし怪我があって長期間の出征が出来ない。そこで、公私に渡って仲がよく距離もそこまで離れていないレグニーツァのサーシャに代理を依頼した・・・違うか?」
ーーー俺の言葉にエレンはサーシャとリムに視線を送ってから、答えた。
「・・・今からする話は私とリムとサーシャにしか話していないことだ。もしサーシャの捕虜であるお前が聞いてしまったなら、ブリューヌに戻ることは万が一にもなくなるぞ?レギンにも当然話されては困る。それが嫌ならこれ以上は聞かないことをおすすめするが?」
ーーー俺に迷う選択肢は『いろいろな意味』でなかった。
「わかった。それでかまわない。もしその話次第ではレグニーツァに向かうのを考えさせてもらうかもしれないからな。」
サーシャの視線に一瞬冷たさが宿ったが、すぐに戻ったようだった。
「・・面白いやつだな・・いいだろう話してやる。お前の想像通り・・・私はある『病』に犯されている。その症状として『体力の低下』と『両足の機能の低下』が見られている。どちらも全盛期だった頃にくらべれば半分以下といったところだな。」
ーーー俺は自分の感じていた嫌な予感がここまで的確に当たっていたことを呪った。そして、真っ暗になりそうだった。