「・・・『ヴェーテ』かいい名前だな。」
「お前もそう思うだろう?だが、リム達にはなぜか不評でな。今更名前を変えるつもりもないしいいんだが。」
エレンは俺という賛同者が出来たことが嬉しかったのかニコニコと年相応の笑顔をみせる。それに比べると、リムが難しい顔をしていた。
「・・・エレオノーラ様から名前について相談されましたので私は『ルーニエ』という名前を推したのですが・・・」
「僕は『ヴェーテ』って、名前いいと思うけど・・・たしか古代のジスタート語で風を意味する言葉だったよね?風のイメージが強いエレンの飼ってる竜に名付けるにはピッタリだと思うよ。」
ーーー俺はサーシャの言葉に若干のひっかかりを覚えたが、この場では気にしないことにした。
「サーシャもそう思うだろう?まぁ、それはいいとして。ティグル聞きたいことは以上か?」
俺は首を縦にふる。とりあえず自分とレギンの状況は把握出来たし、レギンとの話し合いについては向こうからの要望が出てからで十分だろう。『前の俺』の時と同じように、ここにいる間閉じ込められっぱなしではないというのはありがたい。
「そうか。では部屋に戻るといい。私はサーシャと少し話をするからリムに部屋まで送ってもらえ。」
「ティグル、そういうことだから夕食後に僕が君の部屋まで行くよ。それじゃああとでね。」
2人の戦姫に見送られて執務室を出ると、リムもついてきた。
来たときとは違い、俺の右隣に位置して歩き出すリム。
「ああ、部屋まで送ってくれるんだっけ?」
「ええ。他の者に任せても構わないんですが、歩きがてら貴方にいくつか教えて欲しいことがあるので、部屋までお送りします。」
「そうか。答えられる範囲でなら答えるよ。」
「では、・・・なぜアレクサンドラ様の提案を即決で了承しなかったのですか?」
「・・・今は言えない。ただ、サーシャは真剣だった。俺にはそう思えたし、あの提案はまっとうなものだったよ。だから、考える時間が欲しかったからとしか答えられない。」
ーーー疑問の色をにじませた青い瞳を俺に向けるリム。俺は真剣な表情で返した。
「なるほど・・・では、次に貴方はどうして今回の会戦において『エレオノーラ』様に出征の命令が出たはずだと考えられたのですか?」
「・・・このライトメリッツとアルサスはヴォージュ山脈を挟んで隣接している。そもそもの会戦の原因となった状況と事を荒立てるのを好まないジスタート王の性格などを考えれば1番近いエレンに任せるのが無難だとおもうが。」
「そうですか・・・・では最後です。エレオノーラ様の『病』の話を聞くかどうかの時・・・貴方は全く迷うことなく聞く事を選択された。貴方はブリューヌの人間・・・国に帰れないかもしれないという脅しを受けても貴方は聞く事を選択した。なぜですか?貴方は捕虜、貴方にとってエレオノーラ様は敵のはずです。」
リムの顔に疑問というより困惑の色が浮かんでいる。
「すまない、それにはうまく答えられる自信がないな。俺なりの策略があるという風に考えてもらえたら、気が楽にはなる。」
ーーー本当の事をいうわけにはいかない俺はしどろもどろにならないようにいまのリムが納得できるようにつとめて答えていく。