魔弾の王 ~再臨~   作:塾長ほむほむ

27 / 44
26話

ーーーあの日から20日ほどがすぎた。

 

俺はサーシャの『部下』としてライトメリッツで過ごしていた。表向きは、『ブリューヌ』の動きを探る斥候としてのものだ。何かあればすでにレグニーツァに戻っているサーシャと連携してすぐに動きだせるようにだった。

 

 

事実上は捕虜に近いものだが、問題はない。ルーリックや一部の兵士たちと『遊び』の賭け事に興じたり、厨房の人間から頼まれた動物などの解体を手伝ったり、条件付きではあるが、弓の訓練をしたり、レギンと話したり、エレンの前でリムと『弓以外』の武器を使った模擬戦を行ったりといったものでおおよそこんな調子でライトメリッツでの生活にすっかりなじんでいった。

 

 

 

俺はいま、訓練を終えて近くの井戸に向かおうとしているところだ。

 

俺をはじめ兵士たちはみな、訓練を終えるとそこで簡単に身体をながす。

公宮内にも兵士たちのための浴場はあるにはあるのだが、使用時間が決まっている上に、自分たちで水を運んで、沸かさなければならない。しかも女性兵士たちが行列を作っていることもあり待っている間に使用時間が迫ってきてしまう。

 

そのため、井戸はよく使われているのだ。井戸が見えてきたところで、俺は足をとめた。

やはり訓練を終えた2、30人ほどの兵士たちが井戸の回りに集まっていた。

 

 

俺は彼らに見つからないように、足を進める方向を変えた。ルーリックや一部の兵士たちとはそれなりに打ち解けて遊んだり、賭け事などをしている俺ではあるが、すべての兵士たちと仲良くやれているわけでもない。

 

彼らの中には俺がエレンやリムたちと話している場面を見て露骨に嫌な視線を向けてくる者も当然いた。

いま水浴びしているのはどちらかといえばそうした連中だ。

 

 

 

ーーーだがそれも含めてライトメリッツでの生活を楽しんでいることに間違いはないのだが、あの日のサーシャから言われていることがある。

 

 

ーーー「ティグル・・・・まずは『エレン』から信頼を勝ち取るんだ。」

 

 

 

エレンから信頼を勝ち取るといっても具体的にどう動けばいいのか正直わからない。

『前の俺』の時とは置かれている状況が違うからだ。

 

エレンは基本的に執務室か自室にいることが多い。今の体調ではそれも仕方がないというのはわかる。しかもリムや女性兵士や侍女たちのうち誰かかれか常にそばにいるため前のときのようにエレン自身が単独で行動することが極めて少ない。つまり『エレン』と『2人きり』になれないのだ。

2人きりで話ができれば、もう少し突っ込んだ話も可能ではあるのだが・・・・残された時間も決して多くはないことは俺が1番わかっている。

 

建物の角を曲がり、目立たない小道に入る。

この先に、別の井戸がある。公宮内を散策している時に見つけたものだ。小道のあたりには背の低い木が繁っているせいか、毎回この付近を通る度に身体を寒気が抜けるが今日はなぜかそのようなものを感じる事なく歩いていく。

そろそろ井戸かと思ったとき、どこかで聞いたような『ざあ』と水を流す音が聞こえた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。