「エレンは、ひとりなのか?見張りとか護衛は?」
「今ははずしてもらっている。私の体調を慮ってほぼ四六時中はりつかれているんでな。正直息がつまる。だから水浴びと就寝時とその・・・化粧室に行くときだけはな・・・。」
俺が先ほどより動揺を抑えてエレンを見ながら話していたのに気づいたのか、こちらを向いてくるエレン。おそらく俺が本当に遠慮なしに隣にくるとは思ってなかったんだろう。
「流石にそれはむぼ・・・・ん?」
いつの間にか俺の足元に何かが身を寄せてくる。体長は4チェートほどのずんぐりとした幼竜だ。
「『ヴェーテ』・・・?」
俺はエレンからヴェーテの方へと視線を移す。体格はトカゲに似ているが、頭部に生えた2本の角と、身体のほとんどを覆っているごつごつした緑青色の鱗、背中でぱたぱたと揺れている蝙蝠に似た翼が違う生き物であることを証明している。どことなく好意的にこちらを見上げてくれているような気がする。
「・・・・たしかに以前私の飼っている竜の名前が『ヴェーテ』であることはお前にも告げてはいるが・・・妙にヴェーテがなついている様に見えるな。」
ーーー元来竜は知能が高く、幼い竜でもかなり正確に人間の顔の識別ができるという。
『前の俺』は『ルーニエ』をはじめ何頭か見ては来ていたが、いまの俺はおそらく『2頭目』ということになるのだろう。
「ティグル・・・私のいない間にヴェーテに会ったことがあったのか?」
「いや、今日がはじめてだ。」
エレンが裸のまま不思議そうな顔で俺に問いかけてくるがなるべく気にしないような素振りで答えて、俺は『ヴェーテ』を抱っこした。なぜかは自分でもわからないが、ヴェーテは抵抗することもなく、むしろ自然体のままにおとなしくなっていた。
「・・・珍しいな『ヴェーテ』が私以外の初めて見た人間に抵抗することなく抱っこされるなんて・・・・。」
「そうなのか?」
「ああ、今でこそなれた人間にはさわられても抵抗したりはしないが、初めて見た人間には基本的にさわられそうになっても嫌がるんだがな。」
ーーー俺はそれを聞いてほんの少しだけあり得ないことを考えついてしまったが口にはださなかった。しばらくしてエレンがまた問いかけてきた。
「お前は竜を見るのは何度目だ?」
「・・・2回目だな。2年前に狩りをしていた山奥で見たことがあるよ。6、70チェートはあったかな・・・多分地竜(スロー)だったと思うけど。」
「・・・ティグルは運がいいな。私はいままで『ヴェーテ』以外の竜を見たことはないんだ。」
いつの間にかエレンは裸ではなく最低限の短衣を身にまとっていた。これはこれで何かがかきたてられてしまいそうになるが、先ほどよりはマシだろう。
俺はヴェーテを撫でてみようとして手をさらに伸ばすと、ヴェーテはやはり逃げることなく撫でられるままになっていた。