「本来であれば、『アルサス』に『テナルディエ』侯爵が攻め寄せて来た報告を受けたなら、すぐに『エレン』に兵を貸してもらって行きたいところだが、今の名目上の『エレン』と俺との関係でそれは難しいだろう?」
「・・・たしかに不自然だな。もともとお前はサーシャの捕虜だ。しかも今はサーシャの部下だ。もしどうしてもアルサスに遠征するならレグニーツァの兵士でなければ言い訳にすらならないな。『前の時』でも私達がアルサスに到着したのはかなりギリギリだった。名目的にも時間的にも厳しくなるな。」
「いまはレギン・・・いや『レグナス王子』もいるから。その点をうまく利用できれば・・名目としてはなんとかできるだろう。あまりレギンを戦場に連れ出したくはないが『前の』時とは与えられた条件や状況が違うからね。」
俺がそう言うと、エレンはなぜか頬を膨らませながらこちらを見て言った。
「なるほどな。状況や条件が違っているというのはわかるが、私の誘いは迷わずに断っておいてサーシャの誘いにはあっさりうなずいた点はいささか傷ついたぞ。今だから言えるがな。」
「す、すまないエレン。でもその分サーシャも協力してくれるはずだ。今のエレンをブリューヌの内乱に連れていくわけにもいかないし、リムだって反対するだろう。」
「・・それでも私は行く・・と言いたいところだが、この身体ではかえってティグルに迷惑をかけるだろうな。だが、このままなにもしないのは私が耐えられない。だからライトメリッツから兵を『1000』と『リム』をお前に貸してやる。おそらくサーシャも兵を連れては来るだろうがな。」
俺はエレンの言葉に驚きを隠せず、問い返した。
「・・・いいのか?」
「かまわん。どのみちリムは私の命令であれば聞く。サーシャも『おそらく』来るのだろうから、サーシャの副官とすれば兵士達も問題はなかろう。私は『レグニーツァ』と『ライトメリッツ』の2国を統治することになるだろうな。」
「・・・ありがとうエレン。」
「それよりティグル・・今の想定がそのまま出来て、『アルサス』を解放できたとしてだ・・・後々にブリューヌのなんといったか忘れたが、なんとか公爵絡みで『あいつ』とやりあう事になるんだろう?大丈夫なのか私抜きで?」
ーーーここでエレンが言った『あいつ』とは・・・ジスタートの公国のひとつ『オルミュッツ』を統治する戦姫『リュドミラ=ルリエ』の事だ。
『前の俺』が『テナルディエ公爵』と対立した際に、先祖の代から続く『つきあい』の義理から俺達に兵を向けたことがあった。それを切り抜けたあとは俺にとってのよき『同盟者』となり何度も助けてもらった。
その後俺がジスタートの王になる前に想いを打ち明けられ恋人となった人物だ。当たり前だが、現在は俺はともかくミラは俺の存在を知らない。
「・・正直俺はまだそこまで考えてはいないが、『サーシャ』がそれなりの手を打ってくれているハズだ。」
「・・・随分とサーシャを信頼しているようだが、お前はサーシャから何を言われたんだ?」
「・・サーシャからは『エレン』の信頼を勝ち取れとしか言われていないんだ。具体的な策はなにも言われてないよ。」