「私とティグルで400を率いる。リム、お前に残りを任せる。隙を見て喰らいついてやれ。何か提案はあるか?」
「ロープが・・・エレオノーラ様?今なんとおっしゃいました?」
リムが何かをいいかけたあとエレンの方を鬼気迫る表情でみやる。
あまりにも的を射ていた采配に聞いている俺も聞き流しそうになった。エレンが『本来の体調』であるならばだが。
「・・・ちっリムめ・・・気づいたか・・・。」
「エレオノーラ様・・・まさかとは思いますが、ティグルヴルムド卿と共に兵を率いて戦場にでるつもりではありませんよね?エレオノーラ様はティグルヴルムド卿の要請により『レグナス王子』を死守するためにここにいらっしゃるはずですが・・・。」
「・・・兵を100ここに置いていくのならば私がいなくてもいいだろう。」
リムの理詰めの正論に旗色悪げに抵抗するエレン。心情的にはエレンを助けたいが、リムの言うことはもっともであり反論は難しいだろう。
それに『万が一』俺達がテナルディエ軍に敗れた場合エレンが『レグナス王子』と『ティッタ』のそばにいてくれれば『サーシャ』の援軍到着まで生き残ってくれる可能性もあがる。戦場では常に起こりうる状況を考えて行動しなくてはならないからだ。
とはいえそもそも俺は負ける気はないが。こうなると俺の意見がこの場を収める事になる。エレンとリムの口論を聞きながらも思考する。
現状で兵を率いる『指揮官』の役割ができるのは、俺、エレン、リムの3人だけ。
他に指揮官ができそうな人物となると・・『バートラン』は俺の側仕えであるし、今の『レグナス王子』には難しい。『ティッタ』はそもそも戦場すらしらない。マスハス卿ならば可能だが今この場にはいない。俺の考えている『作戦』を実行するならばどうしてもあと一人兵を率いる能力のある人物が欲しい。
『エレン』を『レグナス王子』と一緒に俺と行動させるか・・・・
俺がそんなことを考えていると玄関の扉が開けられて頭を下げた兵士が入ってきた。エレンとリムは口論を中断しティッタとレギンは身体を少しこわばらせている。
「軍議中失礼いたします!」
この人物は当たり前だが、ライトメリッツの兵士だ。本来はエレンかリムが用件を聞くべきなのだが2人とも俺に応対させるつもりのようでこの場の最高責任者という立場の俺に視線を送ってきた。俺はうなずくと入ってきた兵士に話しかける。
「大丈夫だ。ところでどうしたんだ?」
「はっ!・・・『白銀の疾風(シルヴヴアイン)』と名乗る傭兵団の代表2人がアルサスの領主に面会をしたいと来ております。」
「・・は?」
まさかの兵士の言葉に『前の時の記憶』がある俺とエレンの間の抜けた声が重なると同時にリムが信じられないという表情を浮かべて更なる爆弾を投下した。
「・・・『白銀の疾風(シルヴヴァイン)』の代表2人・・・まさか団長と副団長・・・義父上と義母上がアルサスに来られたのですか?」
ーーーその爆弾にエレンが即座に反応する。
「リム・・・何を言っている?『白銀の疾風』は私達がライトメリッツに行くときには解散したはずだろう!」
だが、リムは訝しげな表情を浮かべたあと何かを理解したような表情を浮かべて言った。
「エレオノーラ様・・・どうやらまだ記憶の混濁があったようですね。いいでしょうティグルヴルムド卿の前ですがお教えしましょう。私達の『義父上』こと『白銀の疾風』団長『ヴィッサリオン』様はご健在ですよ?」