『凍漣の雪姫』はやはりたまらんね!
「ヴィッサリオンが・・・生きているのか・・・本当に・・・」
エレンはリムの言葉を受けて衝撃を受けているようだ。エレンが心配ではあるがとりあえず俺は『前の記憶』にあることを知らないふりをしてリムに問いかけた。
「リム。その『白銀の疾風(シルヴヴァイン)』って傭兵団を知っているみたいだが、俺ははじめて聞くがどういう傭兵団なんだ?信用できるのか?」
「客観的に言えばそうですね・・・『報酬』と『雇用主』の要求が釣り合っていると判断されれば一般的な傭兵団よりも親身に仕事をしてくれます。まして義娘である私と『エレオノーラ』様がいればなお強固な信頼を得ることも可能かと。」
後半の言葉は完全に私的な物になっているがどうやら話を聞いてみたほうがよさそうだと判断した俺は兵士に言った。
「・・・・それじゃあその代表の話を聞きたいから連れてきてくれ。」
「はっ!失礼します。」
俺の言葉で兵士が家を出ていったのを確認したあとティッタの肩に手を添えて言った。
「ティッタ・・・・お茶をあと2人分追加で準備してもらえるか?」
「はっ・・はい!」
ティッタが慌てて立ち上がりお茶の準備をしに台所へと向かう。それを確認してからというわけではないだろうがレギンが言った。
「ティグルヴルムド卿・・・私はいったん別室に行った方がよさそうですね。」
「ああ、そうだな。あとでティッタを向かわせるからとりあえず俺の部屋で待機しててくれ。多分長くなると思う。」
「わかりました。ではエレオノーラ様、リムアリーシャさん私はいったん失礼します。」
「あ、ああ。」
「わかりました。」
レギンの声でようやく気を取り直したらしいエレンと普段通りのリムが返事をしたところでレギンが席を外した。
俺はまだ『記憶の齟齬』に困惑している様子のエレンと家族に会えるからだろうが少しだけ表情を綻ばせているリムに声をかけることにした。
おそらくこのあとの流れ次第ではあまり効果はないだろうと思いながらだったが。
「エレン、リム。なにがあっても君達は『ライトメリッツ』の戦姫とその副官だ。今回の彼らは『アルサスの領主』である俺に会いに来ている。それぞれ色々思うところはあるだろうが決して取り乱さないでほしい。」
「わ、わかっている!」
「もちろんです。」
ーーー程なくして先ほどの兵士が戻ってきて言った。
「失礼いたします!『白銀の疾風(シルヴヴァイン)』の代表の方々をお連れいたしました。」
「じゃあ入ってもらってくれ。」
そうして兵士に促されてこの家に入ってきたのは2人の男女だった。
まず女性のほうに俺は見覚え・・・正確には『前の俺の記憶』からだ。
艶やかな黒髪は腰あたりほどはあるだろう。左目を隠すように流れている。かなり鍛えられているのに女性らしさも兼ね備えている。
そして印象的なのは『隼』の模様が縫い込まれた黒い服だ。当たり前だが武器はもっていない。俺が『覚えている』限りよりは年齢を重ねているからかわからないが瞳が優しくなっているような気がした。おそらくは30手前くらいかと思われる。自信はないが。
一方男性のほうだが、年齢は40前半あたりに見える。中肉中背身につけている服は『隼』の模様が縫い込まれているということ以外は普通の平服だ。左頬の白い傷跡が目立つが穏やかな笑みが印象的だ。
そして、エレンが男性の姿を見て今にも抱きついて泣き出しそうな様子とリムの女性に注ぐ視線と様子からやはり『彼ら』が『白銀の疾風』の団長と副団長であると納得したのだった。