魔弾の王 ~再臨~   作:塾長ほむほむ

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7話

「よくわからないが幸運だな。ありがたく使わせてもらおう。」

 

そう言って俺は馬に跨がり移動を開始する。

 

途中4人ほどのジスタート軍の騎士を葬りさったところで馬の手綱を引く。

 

「敵か?」

 

 

およそ300アルシンほど先だろうか先ほど葬りさった騎士と同じ甲冑を着込んだ騎士の一団と捕虜とおぼしき姿が見える。

 

「7人・・・いや、捕虜らしき人物も加えれば8人か?」

 

 

 

自惚れるつもりはないが、俺は生まれつき目がいい。

狩りによってさらに鍛えこまれ300アルシン程度までなら人間の顔を見分けることも不可能ではない。

 

 

矢筒の中身をたしかめると残りは4本だ。

 

 

弓には自信があるが、一矢で2人を射たおすことはできない。『黒弓の真の力』を使えばできなくはないだろうがそんなことをするつもりはない。

 

 

先ほどの騎士達のように犠牲を厭わずにあの人数で容赦なく斬りかかってこられたら馬があってもどうしようもない。

 

俺はなおも騎士達を観察する。先頭の騎士を目にしたときマスハス卿の言っていたことに間違いがなかったことを悟った。

 

「やっぱり『エレン』じゃないのか・・・・。」

 

 

俺は『エレン』ではなかったことに若干の悲哀を覚えたがそれも一瞬のことで『彼女』に見惚れてしまった。

 

 

黒髪は肩にかかるくらいで切りそろえており、細面だが、黒を基調とした軍装にエレンよりも細いであろう身体を包んでいる。太腿の辺りにある2本のベルトがまた眩しく見える。ほっそりとした腰にちらりと見える『双剣』の『竜具』も何度か見た覚えのあるものだ。使い手は違っていたが。

 

 

なによりも彼女の持つ『黒色の瞳』から発するエネルギーが『前の俺』が知っているものと明らかに違う。

もしかすると病にはかかっていないのかもしれない。

俺は我にかえり冷徹に思考する。

 

 

ーーーさて、どうするか?

 

 

捕虜と思われる人物は厚手のマントを身体全体に羽織っていて正直ブリューヌ人かどうかもわからない。とりあえずこの人物については考えないことにする。

 

となると客観的に見てとれる手段は2つ

『投降』か『戦姫の戦意を奪う』かだ。

 

 

ーーー状況としてブリューヌ軍大敗はもはや疑うべくもない。追撃戦が行われているくらいなのだから。

 

 

マスハス卿やバートラン、アルサスの兵士たちが生き延びる確率を上げるためにも俺がとる手段は後者しかない。

 

 

「ある意味で久しぶりだが・・やってやるさ。」

 

俺は馬から降りて、矢を1本引き抜くと弓につがえながら久しぶりに神の名を唱えた。

 

 

「風と嵐の女神エリスよ・・・・・・。」

 

 

きりりと弦のきしむ音が鼓膜をくすぐると同時に矢をある場所を目掛けて放った。

 

戦姫のそばにいた騎士の馬、その頭部に深く突き刺さる。馬が横転して騎士が投げ出されたと認識する前に俺は2本目を放つ。こちらも見事に別の騎士の馬の眉間に突き刺さる。

 

 

「よし。」

 

 

2人の護衛を倒したことで、ようやく戦姫への道ができた。

 

黒髪の戦姫に矢を届かせる隙間を、作ることができた。

 

 

「ここからだな。」

 

 

俺は矢筒に手を伸ばす。淀みはないハズだ!

 

 

ーーー他の騎士達が彼女を守ろうとしても無駄だ。ごくわずかの時間だが俺にとってそれだけあれば充分だ。

 

 

この状況で彼女がとる行動は、馬首に身を伏せるか、落馬するか、あるいは『エレン』のように助走なしで馬ごと飛んでこちらとの距離を詰めるかだ。

 

たとえできたとしても、跳躍から着地、そして矢から隠れるまでに隙ができる。

 

 

そこで俺は戦姫を見据えた途端に、猛烈な歓喜と寒気に襲われた。

 

笑ったのだ。あの時の『エレン』の様にあきらかに自分をみて楽しそうに。

 

 

「・・・・面白い!」

 

 

俺もまた笑いながら残りの矢を2本とも抜き取る。1本を口にくわえ、もう1本を黒弓につがえた。

 

しかしというかある意味予想がついたというか『彼女』も『エレン』と同じように馬に乗ったまま遥か高く飛んだのだ倒れた部下たちの上を。

 

だが、それは織り込み済みだ。『前の俺』は動揺したかもしれないがそこに俺は第3矢を放つ。

 

それは戦姫の馬の眉間に突き刺さる。これであとは彼女は落馬するしかない。そう考えた時だった。

 

 

なんと、彼女はその馬を踏み台にして2本の双剣を抜き放ち鳥が羽ばたくようにこちらに跳躍したのだ。

 

 

「・・・・・嘘だろう?」

 

 

俺はそう口にしながらも最後の矢をつがえる。

 

彼女と俺の距離はまだある。しかも彼女は空中にいる、今矢を放てば命中する確率は高い。だが、俺は彼女の『戦意』を奪いたいだけで殺傷する気はない。

 

その躊躇いが狙いを甘くしてしまったか、最後の4本目に至っては・・・・信じられないが・・・・『彼女』の足場にされてさらなる跳躍を許してしまったのだ。

 

 

ーーーはっきりと言おう彼女は『エレン』以上だと。

 

 

 

矢は尽きた。彼女ももう10秒もせずに空中から俺の前に立つだろう。近くに馬はいたが今更跨がって逃走するつもりももはやなかった。

 

 

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