女の子だらけの職場で俺がヒロインなのは間違っている   作:通りすがりの魔術師

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乙女よ大志を抱け!!
ツバメちゃん嫌われてるらしいけど僕は好きです
特に胸がない部分とか。それをコンプレックスに感じて気にしてたらめちゃくちゃ可愛いと思う。これは友達とも話を深めた話題です。


鳴海ツバメは乙女である。

 

 

思い悩める表情をした人を見たらどう対応すべきか。

答えは人それぞれだろう。それは対応するかしないかだけでなく、するしないにしてもたくさんの分岐点がある。

 

まず対応する場合。どうやって話しかけるかだ。顔の話から入るか、雰囲気の話から入るか。もしくはどうでもいい世間話をしに行く。それか気付いてないふりしてさりげなく聞き出す。と、これだけでも多種類ある。

 

 

次にしない場合。これも相手の機嫌を損ねないような対応が求められる。大回りして目に映らないようにして避ける。スマホを取り出して電話をしてるふりをしてそれどころではないという風を装って過ぎ去る。それか清々しく目の前を通り過ぎるなどがある。

 

 

他にも相手の様子などで色々と変わってくる。相手が伏せていた場合は優しく話しかける、寝てるのかー?と少し明るめに聞いてみたりしてみる。ちなみに後者はホントに寝てたらキレられるので気をつけろ。俺が移動教室だからわざわざ起こしてやったのにキレられたことあるから。

俯きがちに暗い表情をしていた時は、上で述べていた対応の中でその人物の性格などを加味して実行していくべし。

 

 

「うぅ…」

 

 

さて問題です。今までに無かったケースに遭遇したのですが、俺はどうすればいいでしょうか。答えてくれる人などいるはずもなく、目の前で泣き出しそうな顔で下を俯く鳴海。

 

 

朝にコンビニに寄る時間が無く、仕方なく食堂でうどんを食べようと食券を買い、おばちゃんに作ってもらいお盆を持って席につく。割り箸を割る。綺麗に割れなかった。それで手を合わせていただきますと麺に箸を当てた瞬間だった、目の前の席に鳴海がやって来たのは。

 

 

特にお弁当やおにぎりなどを持ってきたわけでもなく、それでいて食券を買ってここで食べに来た様子でもなさそうだ。うどんを啜りながら、様子を見ていると動く素振りを見せない。

まぁ、何も言ってこないし、ただの気まぐれかと思って気にせず箸を進めるとぐぎゅううとおおきなお腹の音が響く。

その音の発生源が沈鬱な表情から顔を赤らめて「うぅ…」と恥ずかしそうな声を出したのが先程のことである。

 

 

「鳴海、お前飯は?」

 

 

「……朝ちょっと急いでて、財布忘れて」

 

 

「望月は?あいつに金借りるなりすればいいだろ」

 

 

「ももは無駄遣いしないようにって財布持ち歩いてないんです…」

 

 

うわぁ、真面目。そうだよな、お金ってあったら使っちゃうよな。俺もお金があったらコンビニとかでチキンとか買っちゃうからわかる。

 

 

「なるほどな。で、頼る相手がいないと」

 

 

「は、はい……」

 

 

「はぁ…」

 

 

財布から500円玉を取り出して鳴海の前に出すと「ほへ?」と鳴海は素っ頓狂な声を出す。可愛いなそれ。

 

 

「それでなんか買ってこい」

 

 

「いいんですか!?」

 

 

「え、そういう魂胆じゃないの?」

 

 

お金借りても問題なくて、なんなら1番ちょろそうな俺にご飯奢ってもらうために来たんじゃないの?

 

 

「いや、え、はは…」

 

 

反応を見るに図星らしい。こいつ。別に俺じゃなくても、桜とかうみこさんなら貸してくれると思うが。桜は喜んで貸しそうだし、うみこさんもなんだかんだ言いながらも「それで仕事に支障が出るといけませんから」とか言い訳して貸してくれそう。

 

 

嬉嬉として笊蕎麦定食を頼んだ鳴海はまた俺の前に座ると笑顔で手を合わせる。

 

 

「いただきます〜」

 

 

「へいへい」

 

 

どうやら、俺は随分とこの後輩になめられてるらしい。ここでガツンと先輩の威厳を見せてやるか。

 

 

「おい、鳴海。これが当たり前だと思うなよ?」

 

 

「わかってますよ。にしても、先輩は優しいですよね。高校とか大学ではめちゃくちゃもてたんですよね?」

 

 

穢れのない笑顔でそんなことを聞いてくる鳴海だが、そんな何気ない一言が比企谷八幡を傷つけた。

 

 

「えぇっ!?なんでそんな顔するんですか!?」

 

 

「お、おま…俺がモテるわけねぇだろ…!」

 

 

「悲しみながら怒ってる…」

 

 

もうやだこの後輩。確実に俺の急所をついてくる。真面目かと思ったら、一色を超えてくる小悪魔系だった。しかし、あいつみたいに計算された発言じゃなくて、本気で言ってるあたり本当に怖い。

 

 

「よし、話変えよう。そうだな、えっと、えっと……」

 

 

あれ?こういう時、何について話せばいいんだ?わかんねぇな。そもそも、俺この会社で仕事以外の会話したことあったけ?

 

 

「ぷっ!あははははは!」

 

 

必死に話す話題について考えていると鳴海が吹き出した。

 

 

「なんで笑うんだよ」

 

 

「だって、先輩あんなに女の子に囲まれてるのに後輩と話できないって……おかしくて…ははは!」

 

 

お腹を抑えて勢いよく笑う鳴海に視線が集まるが、本人はそれに気づくと口を抑えて自重する。ようやく、静かになったかと俺は食べ終わった皿を返しに行きに立ち上がろうとすると、鳴海に止められる。

 

 

「あ、待ってください先輩。ちょっとお話が」

 

 

時計を見て時間を確認して「10分だけだぞ」と前置きをする。それに鳴海は頷くと箸を置く。

 

 

「私、ここに就職するためにあらゆる物を犠牲にしてきました」

 

 

「たとえば?」

 

 

「親が厳しい人だったので、成績上位を取りつつ上京するためのお金をアルバイトしながら稼いで。おかげで中学時代は勉強の毎日。高校になってからはそれにアルバイトも加わりました」

 

 

「…それで?」

 

 

「多分、だいたいの高校生が体験してる青春ってのを私は経験してないんです。友達とカラオケとか、買い物行ってプリクラ撮るとか。ご飯食べに行くとか」

 

 

「でも、それは望月がいれば今からでも遅くないだろ」

 

 

俺の言葉に鳴海は大きく頷く。

 

 

「はい。だけど、ももがいてもどうしてもできない青春があるんです」

 

 

まるで俺から次の質問が欲しいかのような目で訴えかけてくる鳴海にため息をついて「それはなんだ?」と聞くと、鳴海はふふっと笑う。

 

 

「ズバリ、男女交際です」

 

 

「……はぁ?」

 

 

え?お前ってそういうキャラなの?てっきり、窓のガラス叩き割るとか、盗んだバイクで走り出すとかかと思ったわ。いや、それはないか。うん、冗談だ。

 

 

「私、中学高校と共学だったんですけど、さっきの理由で彼氏作れなかったんですよ」

 

 

「…おう。え?彼氏欲しかったの?」

 

 

「いや、別に」

 

 

じゃ、いいじゃん経験しなくて。てか、そんな経験不要だから。必要性皆無だから。そもそも、すべての学生が恋愛を経験して成就させるとか世界平和と同じくらい難しいことだから。

 

 

「だったら…」

 

 

「でも、この前ここに就職が決まって欲しくなったんです」

 

 

胸の前で手をギュッと握ると鳴海はそう呟く。望月からこいつの境遇は聞いている。実家の旅館を継ぐように親に言われていたがそれを断ってこうしてイーグルジャンプに来たと。そのため、親からの仕送りはなく自分でアルバイトして稼いだお金でやりくりしていることも。

きっとさっきの話はすべて事実なのだろう。勉強とアルバイトに青春を捧げた彼女は、楽になった今。自分が経験できなかった青春というのを経験してみたくなったのだろう。

 

 

「で、俺に用ってのはあれか?彼氏の候補を紹介しろってことか?悪いが、俺は友達が少なくてな…」

 

 

「はい?何言ってるんですか先輩」

 

 

いや、俺の男の知り合いって弁護士見習いの爽やかイケメンと小説家志望のヲタクと超絶可愛い戸塚、あと小町に張り付くカメムシみたいなのくらいだぞ。あと、戸部とか葉山の取り巻きとろくろ回しするやつ……あ、玉縄だ。それくらいか?それくらいだな多分。

この中でろくなの戸塚くらいしかいないけど、戸塚を紹介するわけにもいかねぇし。大志も小町から引きはがすために押し付けるのもなぁ。

 

 

「別に先輩に人脈がないのは分かってますから」

 

 

「え?……あ、そう」

 

 

「だからなんでちょっと傷ついてるんですか」

 

 

自分で言う分にはいいんだけど、人から言われるとちょっと嫌じゃない?分からない?この俺のめんどくさいメンタル。鳴海はジト目を向けるとすぐに咳払いして、目を逸らしながらこう言った。

 

 

「だからですね、その…先輩に青春を味合わせる役をしてもらってもいいかなーって」

 

 

「は?」

 

 

モジモジと体を揺らしながら爆弾発言をした鳴海に俺は驚きのあまり口をポカンと開ける。

 

 

「ほ、ほら!私が知ってる男の人で安心できるの先輩だけですし!それに先輩ってなんだかんだ優しいじゃないですか!」

 

 

手をブンブン振りながら激しく俺のプラスポイントを上げようとするが、聞いてる本人としては何言ってんだこいつ状態である。

 

 

「冗談もその辺にしとけ。だいたい俺なんかと」

 

 

「冗談じゃないです」

 

 

窘めるように俺が言うと、鳴海はきっとした目付きで俺を真正面から見据える。

 

 

「こんなこと、冗談じゃ頼めないです」

 

 

鳴海は席から立ち上がり「お願いします」と

俺に頭を下げる。周りからは奇異な目が集まり、俺はやむを得ず口を開く。

 

 

「わかった、分かったから座ってくれ」

 

 

「ほんと、ですか?」

 

 

上目遣いでそう聞かれたら「あぁ、おう…」

と変な声が出てしまった。

 

 

「やったー!じゃ、まずは電話番号交換しましょう。次にメールアドレスとLINEやってます?」

 

 

水を得た魚のように畳み掛けてくる鳴海の認識を俺は改めなければならないらしい。

鳴海ツバメは小悪魔ではない。乙女であると。





(ボツネタ)

メルアドなど交換中の一幕

八幡「あ、LINEやってない」
ツバメ「だからグループにいなかったんですね」
八幡「」




1日1話更新結構久しぶりにやってるんですけど、最初期から僕の作品見てる人は感想欄やお気に入りリストであんまり見かけなくなりましたね
地味に一年半経っててなんとなく時間の流れを感じました。
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