女の子だらけの職場で俺がヒロインなのは間違っている   作:通りすがりの魔術師

23 / 39


頭が冴えてるうちにささっと
でも書いてて楽しかったです
めちゃくちゃ久しぶりに味わったわこの感覚


あと、唐突なエルキドゥ幕間謎だけどありがとう。


色んな意味で八神コウはめんどくさい。

 

 

 

 

昨日の夜のことだ。イーグルジャンプの新作ゲーム『PECO』のキービジュアルをキャラクター原案者の涼風青葉が描くか、イーグルジャンプで長期に渡ってイラストを描いてきた八神コウが描くかで勝負が起こった。

 

 

上層部の意見としては、フェアリーズストーリーを手掛けた葉月しずくと八神コウの期待の新作ゲームとして売り出したかったようだが、八神さんが発案者の涼風が描くべきだと言い出したのが発端である。多分。

それに涼風は了承して勝負になり、結果として涼風のは選ばれなかったものの、版権イラストして何らかの形で使うということでこの一件は幕を閉じたのだが。

 

 

「よぉし、はちまんかえるどー!」

 

 

「この人、めちゃくちゃ酔っ払ってやがる」

 

 

この物語にはまだ続きがあったのだ。八神コウが勝ったら比企谷八幡が何故か焼肉を奢らされるという謎ENDが。

 

 

「はちまんおぶってー」

 

 

呂律も回ってない。自分で歩けなくなる。それほどになるまでドリンク飲み放題を利用してビールを飲みまくった八神さんは俺が手を引っ張っる形で店の前に立っていた。キービジュアルを描いてる際に本気を出すために完全に禁酒したらしく、その反動がきているのだろう。にしては、飲みすぎだ。

店から出すのにも一苦労し、これから家に送ることを考えると非常に頭が痛くなる。いっそのこと遠山さんに迎えに来てもらおうか。

とりあえず八神さんのあやふやなナビに従って歩き出すと、しばらくしないうちに八神さんが何か思いついたように声をあげる。

 

 

「そっかー!べつに自分の家に帰らなくてもはちまんのところに泊まればいいじゃん!わたひてんさーい」

 

 

「どこがだよ」

 

 

確かにここから俺の家は近いけども。会社の先輩、それも女の人を泊める器量なんて俺には持ち合わせていない。まぁ、その辺でタクシー拾って連れて行ってもらおう。そうするとしよう。と、財布を開くと。

 

 

「ちっ、全然入ってねぇじゃねぇか」

 

 

いつもより多めに持ってくるべきだったか。これじゃ、八神さんの家まで送れても金が足りなくて今度は警察署行きだな。銀行も開いてないし、金は引き落とせない。

 

 

「八神さん、今いくら持ってます?」

 

 

「はひまんに奢ってもらうからいちえんももってきてましぇん!」

 

 

はぁ、使えねぇ。仕事以外でのこの人実は無能なんじゃないの?なら、どうしたものか。

 

 

「八神さんの家ってこっから歩いて何分くらいですか?」

 

 

「うーんとね!電車で15分くらい!」

 

 

「じゃあなんで駅前と逆方向にナビしてるんですかね」

 

 

 

しかも、徒歩で聞いたのに電車の時間返してきた。だいたい単純計算で40分くらいか?いや、この酔っぱらい様だとそれ以上かかるか。本当にどうしたものか。俺の家に寝させようにも、俺仕事だからな。この人に夕方まで寝られたらやすまにゃならんくなるし。

 

 

「ねぇいこうよーねぇねぇー」

 

 

「あー分かったよ分かりましたよ!行きますよ!」

 

 

そうなると休みの日が仕事になるので折れることにした。しつこいし、俺も明日は仕事があるので仕方なく自分の家まで歩き出す。家に着く頃には日は跨いでしまい、エレベーターで家の前まできて一旦八神さんを背中から降ろす。

 

 

「わぁー、はちまんのいえだーどんなへやなのかなー」

 

 

「うぜぇ」

 

 

酒臭いし、でも髪からはいい匂いするし、おぶってる時地味に柔らかいの当たってたし。そんなに大きくなかったけど。本人は気づいてなさそうだし、言わないほうが身のためだろう。

 

 

「ほら、八神さん寝るならベッドで寝ましょう。貸してあげますから」

 

 

「えぇ?いっしょにねないの?」

 

 

「寝てたまるか」

 

 

 

寝てる時に吐かれたり、一夜の間違いがあったら困るでしょ。俺が。下手したら遠山さんに殺されるかもしれんし。俺の中での遠山さんって一体。

玄関の鍵を開けて、八神さんを引きずるように家にいれるとチェーンをかける。これでやっと一息つけると思ったら、突然八神さんから気色の悪いうめき声が上がる。

 

 

 

 

そしてーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんでしたァ!」

 

 

朝になり、遅めの朝食をとった八神さんは俺から今までの経緯を聞いて土下座していた。過去にも未来にも歳上から土下座されることなんて想像もしてなかったわ。

 

 

「まさか無理矢理来た上にゲロってすみませんでしたァッ!」

 

 

あ、いや、うん…。まぁ、女性がゲロるのは小町いたから見たことあるし、別に……良くはないな。ゴミを見るような目で八神さんを見つめること数秒、未だに頭を上げないあたり本当に反省してるらしい。

 

 

「まぁ、もうこの辺にしときましょう。夜あったことはお互い忘れましょう。ね?」

 

 

「はひ……」

 

 

諭すように俺が言うと八神さんはくしゅんと鼻を鳴らしながら、顔を上げる。

 

 

「泣いてるんですか?」

 

 

「あ、いや、何回も頭下げてたらちょっと気持ち悪くなって…」

 

 

「台無しじゃねぇか!吐くなら便所で吐け」

 

 

さっきの謝罪はなんだったんだよ。八神さんの使った食器を片付けると、俺はエプロンを外して椅子にかけると会社へ行く準備を始める。

 

 

「あれ?八幡今日仕事?」

 

 

 

「えぇそうですよ」

 

 

あんたのおかげで昼番にしてもらったけどな。ひふみ先輩には腹痛ということで連絡を入れておいたが、ほぼ確実に信じているので罪悪感でいっぱいである。

 

 

「八神さんの方は?」

 

 

「んー私?」

 

 

そう言って首を傾げるとガサゴソとカバンを漁って中からケータイを取り出すと「うわぁ」と声をあげる。

 

 

「凛からめちゃくちゃメール来てる…あれ?でも今日昼から仕事じゃん…」

 

 

それは多分八神さんのことが心配だからという建前で、実はかまって欲しいだけ説。まぁ、キービジュアル描き終えて酒飲んで気が抜けたからって寝かせてあげてほしい。遠山さんの家で。

 

 

「まぁ、寝てたって返信しとけば問題ないでしょ」

 

 

「そうか!」

 

 

伝家の宝刀『ごめん寝てた』は女子が使うと恐ろしい効果を発揮する。それが夜の9時に送ったものでも帰ってくるのは翌朝でそれ以降の会話は発生しない。ソースは俺。

軽くトラウマを思い出しかけていると、急に八神さんの遠山さんに返信を打とうとしたようだが、ピタリと手が止まる。

 

 

「どうしよ…なんて言っても怒られる未来しか見えない…」

 

 

そう言いながら画面を見せられ、見てみればメールの送信画面の上でピコンピコンとお手を立てながら『あら、まだ寝てるのかしら?』『もうねぼすけさん』『今日昼から会議だけど分かってる?』『ねぇ?』(一部抜粋)と、同じ相手から無数のメッセージが飛んできていた。

 

 

「うわぁ…」

 

 

思わずそんな声が出てしまった。メールからLINEに切り替えてるのほんと怖い。安否確認の仕方が怖い。これ俺どっかで見たことあるよ。あと、遠山さん仕事してください。

 

 

「まぁ、のほほんとメールしとけば大丈夫でしょ」

 

 

そんでもって八神さんの返しが軽い。軽すぎる。ミッフィーの体重より軽い。リンゴ何個分くらいだろ。

こういうところからすれ違いが始まるのかと思うと虚しくなるな。遠山さんには強く生きてほしい。

 

 

「まぁ、これで一安心だね」

 

 

「そうっすね。じゃあ帰ってください」

 

 

「えぇ〜!?」

 

 

えぇ〜!?じゃねぇよ。こっちのセリフだわ。まだいる気かよ。

 

 

「八神さんも昼からなら、一回帰ってシャワー浴びないと。そのまま行ったらめちゃくちゃ酒臭いですよ」

 

 

「あぁ…それもそっか…」

 

 

と、納得したように見えたが。急に手を上げると俺の貸した服を脱ぎ始める。

 

 

「おいおいちょっと待て!」

 

 

「ん?どうしたの八幡?」

 

 

「あんたがどうした!?」

 

 

びっくりしすぎて普段出さないような声を出してしまった。おまけに敬語も抜けてた。いや、それは朝からずっとか。

 

 

「なんで俺がいるのに恥ずかしげもなく脱いでるんですか?」

 

 

「いや、もう見られたしいいかなって」

 

 

「よくねぇよ!」

 

 

もっと恥じらいをもって!なんで会社ではいつもパンツで寝てるらしいのに俺が来たらズボン履いてるじゃねぇか。そこの恥じらいどこいった。さっきも枕投げつけてきたじゃねぇか。その時の赤みを帯びた顔はどこへいった。

その事を言うと、八神さんは笑ってみせる。

 

 

「ははは、それはまぁ、八幡の運が悪いということで」

 

 

「納得できるか」

 

 

運の悪さを呪ったことはあるけど、相手が急に脱ぎ出すのに運関係ねぇわ。てか、もう見えてるよ。白い太ももとか腰にピチッと張り付く純白の布とか正面の乳房を隠してる水色の布とか。

わざわざぶかぶかだけど下着で歩き回られるのも困るし、あっちも恥ずかしいだろうから服貸してやったのに、なんで脱ぐんだよ。

 

 

「じゃ、お風呂借りるね」

 

 

「だから、なんでだよ」

 

 

「え…お酒臭いんでしょ?」

 

 

「自宅に帰ればよろしいのでは……?」

 

 

それがわかっててどうして後輩の家で浴びようとするのか理解出来なさすぎて丁寧に聞き返しちゃったよ。

 

 

「んー、でも八幡の家からの方が会社近いし、それに服とか洗濯してくれたんでしょ?」

 

 

ゲロかかって臭かったからそりゃするでしょ。そのまま寝られても臭いし。

 

 

「だったら、髪と体洗ってリフレッシュしてここから早めに仕事行った方がいいじゃん?」

 

 

「だから、その考えはどっから来るんだよ」

 

 

何がいいんだよ。こちとら全然よくねぇわ。

そうこう言い争いをしてる間にも時間は流れており、俺はそろそろ家を出なければまずい時間だ。昼番と言っても11時からと13時からで別れており、今は10時なので今から家を出て外で早めの昼食をとってそこから会社へと向かえばわりと余裕で間に合う計算だ。八神さんがいなければ。その事を遠回しに伝えると八神さんはぽんと手を叩く。

 

 

「あ、それなら鍵かけとくよ。会社で渡したらいい?」

 

 

それだと八神さんがうちに来たことバレるでしょ。そんなのが社内に知れ渡ってみろ。絶対めんどくさいことになる。

 

 

「いえ、ポストに入れといてください。部屋番は表札に書いてあるんで」

 

 

念を押して「絶対ですよ」と繰り返すと「わかったわかった」と鍵を振ってチャラチャラ鳴らす。不安だ…てか、早く風呂入れよ風邪引くし、目に毒だ。いつまでそんな滑らかボディ見せつけてくんだよ。

一応、体と頭を拭く用のタオルを出しておき、洗濯機の中の八神さんの服は乾燥機にかけて、シャンプー、リンス、ボディソープを教える。八神さんは意外そうな顔で聞いていたが、特に何も口を挟んでくることは無かった。

 

 

「じゃ、よろしくお願いしますね」

 

 

「あいよー、行ってらっしゃいー」

 

 

久しぶりに聞いたその挨拶に俺は一瞬立ち止まりそうになるも、家の戸を閉める。

そういや、実家出てからただいまも行ってきますも言わなくなったなと思い、俺は何年かぶりにその言葉を口にした。

 

 

……行ってきます

 

 

 





「行ってらっしゃい」を言ってくれる相手に「行ってきます」を言える関係ってすごくいいと思います
とりあえず書いててめちゃくちゃ楽しかったです。ほんとに。八神さんとうみこさんめちゃくちゃ好き。しゅき。


深夜テンションで書いたので誤字脱字が多いと思います
いつも修正報告ありがとうございます。感無量です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。