女の子だらけの職場で俺がヒロインなのは間違っている   作:通りすがりの魔術師

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タイトルは適当だから気にしないで
デート編ですが、これデートじゃねぇな。ってなります。


されど、比企谷八幡は澱んでいる。

 

 

春晴れの空を見上げると散り始めた桜の花びらが風に乗って落ちていく。視線でそれを追っていくこと数分、駆け足でこちらに近づいてくる足音が聞こえる。振り向くと息を弾ませて望月がやってきた。

 

 

「す、すみません、お待たせしてしまって」

 

 

「いや、俺もさっき来たばかりだから気にしなくていい」

 

 

着いたのは5分前だが、さっきと言っても差はないだろう。それにもし早く着いたら小町にそう言うように言われたから言ったまでなのだが。

ふぅと息を整える望月を横目で見ると茶色のブーツ。細身の膝から上を隠すショートパンツ、この季節には体温調節しやすいようにノースリーブのシャツにカジュアルな紅い上着を羽織っていた。珍らしく体のラインが出にくい服を着てると思ったがそうでもなさそうだ。上着脱いじゃうとノースリーブだから二の腕は顕になるし、胸元も強調されるだろう。

その事を一応気に止めながら、望月に話しかける。

 

 

「で、どこ行く」

 

 

「あ、はい。まずは映画でもどうかと」

 

 

まずは。ということはその先もあるということだろうか。その先に誰がいるんだろ。団長はいい加減止まってもいいと思うんだが。

まぁ、俺は歩き始めないと行けないので望月の隣を歩く。

 

 

 

歩きながら道行く人とすれ違う度に望月を見る男の目が気になる。確かに見た目は可愛いし、女の子の特権を微かに主張しているのだ。俺も戸塚に対してこんな目を向けてるのだろうか。これからは気をつけようと決心すると望月が口を開いた。

 

 

「比企谷さんって好きな俳優さんとかいるんですか?」

 

 

「え?あ、そうだな…」

 

 

俳優っていうとあれだろ?ドラマ出てる人か。最近ではお笑い芸人もドラマ出るし、俳優も番宣のためにバラエティに出ることも多い。もうテレビ出てる人みんな俳優なんじゃねぇかな。

 

 

「堺雅人とか」

 

 

「あ、私もすごく好きです!いいですよね鍵泥棒のメソッドとか!」

 

 

俺が言うと望月は笑顔で手を合わせる。なんでそんなマイナーな作品を知ってるんだ。いや、『半沢直樹』とか『リーガルハイ』みたいな有名どころが出ると思ったんだが。

 

 

「確かにな。他にもクヒオ大佐とかゴールデンスランバーも全然キャラクターが違うのにいい演技だった」

 

 

「クヒオ大佐は知ってますけど、ゴールデンスランバーってどういう作品なんですか?」

 

 

映画館のある複合施設までの道のりで随分前に見た作品について語る。上手く言葉にできたかは分からないが少なからず興味を持ってもらえたらしい。

 

 

「そういう望月は好きな俳優いるのか?」

 

 

「はい、たくさんいますけど一番って言われたら唐沢寿明さんが好きです」

 

 

へぇ意外だな。てっきり、ジャニーズ系とか仮面ライダー上がりのイケメン俳優が来ると思ったが。いや、唐沢さんもスーツアクターでライダーマンやったことあるし仮面ライダー俳優...になるのか?

 

 

「結構渋いんだな」

 

 

「あんまりイケメンとかカッコイイ顔の人にときめくことが少なくて」

 

 

そういうもんなのか、と1人納得する。

 

 

「好きな女優さんは?」

 

 

「いない。でも、強いて言うならアホっぽい長澤まさみ」

 

 

ガッキーも堀北真希とか可愛いとは思うけど実際に会ったことないから、特に何にも思わないんだよなぁ。

長澤まさみも可愛いかもしれないけど、あの人はヒロインらしいヒロインやるより、ヒロインなのにヒロインらしくない時の演技が一番好き。

 

 

「そうなんですか...」

 

 

意外に思ったのか望月は目を見開くと自分の髪を触り始める。よく分からんけどとりあえず今日見る映画について聞いておこう。

 

 

「で、今日は何見るんだ?」

 

 

「...あ、えっと...これです」

 

 

はっと我に返った望月はスマホを取り出すと画面を見せる。そこには最近公開されたアニメーション映画が写っていた。

 

 

「あ、これか」

 

 

「...もしかしてもう見ました?」

 

 

恐る恐る聞いてくる望月に俺は横に首を振る。その反応に望月はほっと胸をなでおろす。タイトルや設定は気になったが脚本家を押してくる広告になんとなく嫌悪感を抱いて見に行く気になれなかったんだよな。どうせクソだろと思ったけど、見てもいないのに批判するわけにもいかないのでレンタルが出たら見る予定ではあったが、映画館に足を運ぶ気はなかった。

 

 

劇場につきあらかじめネットで予約してたのか望月はチケットを2枚買ってくると1枚俺に渡してくる。券を見るに真ん中の少し左寄りだろうか。出来れば端っこがよかったがお金を出してもらってるが故にそう文句も言えない。

 

 

「映画まで少し時間ありますけどどうしましょうか?」

 

 

「そうだな…」

 

 

周りを見渡すと館内のフリースペースの席は埋まってるし、映画限定グッズコーナーも結構な人が集まっている。あまり興味はないが一人でいたなら時間つぶしに見に行っていただろう。だが、2人だ。あまり誰かと見ようという場所ではない。それに見るなら鑑賞後になるだろう。そう考えると。

 

 

「下で飲み物でも買うか」

 

 

「ですね」

 

 

互いに意見が一致し下の階にあるショッピングセンターでそれぞれジュースを買う。本来は映画館に持ち込みは禁止なのだが、始まる前に飲んでしまうか、最悪バレないように持ち込めばいい。バレなきゃ犯罪じゃないんですよとはまさにその通りである。

それに始まる前に飲み干したら途中でトイレに行きたくなるからあんまりしたくないしな。

 

 

開始10分前になったので再び映画館前に戻り、言われたスクリーンへと足を進める。中に入ると既に映画泥棒が捕まっているところで予告集などが見れなかったがさして興味がないので問題はない。席につき、だらんと映画が始まるのを待っていると望月が周りを気にしてか耳元に口を近づけて囁く。

 

 

「楽しみですね」

 

 

その声音はほんとにこの映画を心から楽しみにしてるようで、もしかしたらこれオレへのお礼じゃなくて自分へのご褒美のために来たんじゃないかと思えてしまう。

しかし、望月の顔を見てしまうと何故か怒りとか呆れは湧いてこない。純粋な目の輝きや穢れのない笑顔がその気持ちをわかせないのか、あるいは俺も心の隅ではこの映画を見たかったのかもしれない。

 

 

「あ、始まりますよ!」

 

 

そうやってはしゃぐ望月を横目に俺は目の前の大きく広がるスクリーンに目を向ける。

大人びてるやつだと思っていたが根は思ったより子供っぽいな。鳴海もこういう部分を見て望月と共に夢を追いかけたいと思ったのだろうか。そんなことを考えながら、俺は映し出される映像に集中し始めた。




八幡の好きな俳優とか描写されてねぇかなーって探したけどいなかったから捏造した。ないならね!作っちゃえばいいんですよ!(這い寄る変態の言い訳並)

次回は色々すっ飛ばして修羅場になります(予定)


てことで次回予告












「私、比企谷先輩のこと結構好きなんですよ?」


まるで甘く蕩けるような。そんな声音で紡がれた後輩の言葉に俺は絶句した。それが嘘であろうと、本当であろうと。俺には人に好かれる資格はない。いつも勘違いして、迷って逃げてきた俺にそんなことはありえない。だから、排斥して取り除いた。後回しにしようとした。
その後始末がやってきたとしても、誰かに押し付けて逃げてきた。


「先輩はどうですか?私のこと」


だが、今回はそうはいかない。そうはさせないと掴む手の力が強くなる。熱く、手汗の滲んだ手は答えを出すまで離さないと。鳴海ツバメの目がそう語っていた。


次回
誰かを選ぶということは誰かを選ばないことである。
(内容は都合により変更になる可能性があります)
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