女の子だらけの職場で俺がヒロインなのは間違っている 作:通りすがりの魔術師
休日が終わると仕事がなのがもはや当たり前になってきて1年経つが俺のスタンスは一切合切変わらない。人間置かれる状況が変わればその人も変わるというが、それはその場に慣れていないだけであって慣れ親しめば元の本性というのが明らかになる。
俺でいうなら真面目にこなしつつも手を抜くところはちゃんと抜く姿勢になっていた。ほら、楽できる時に楽したいからね。
ググッと伸びをして周囲を見渡す。今日は思いのほか人が少なく俺の周りは0人。奥に行けばひふみ先輩がいるだろうがこちらに来ることはあまり無い。プログラマー班の方は全員来てるらしいが名前を知ってるのは3人だけで他の人は顔こそ覚えてるものの名は知らない。もしかしたら誰かと入れ替わったら名を知る機会があるかもしれないが、そんなことは永遠になさそうなので知らないままだろう。
しかし、まぁ、周囲にだれもいないとなんだか落ち着かないものだ。寂しいというよりは、隣で仕事してる奴がいると「あー、俺もやんなきゃ」と少なからず使命感を感じて真面目に取り組むが、それが誰一人いないとなるとそういう気も湧いてこない。多分、午後になれば2人くらいは来そうだが、それまでの2時間はずっと1人か。
基本いつも1人だけどね!と、空元気してみたがそこまでやる気は出ない。とりあえず、敵キャラを量産して色塗って上位個体は一部分変えて...ってやってたらトントンと肩を叩かれる。
集中していたためビクッと肩を震わせて振り向くと、驚いた顔をした鳴海がいた。
「なんだ鳴海か」
「なんか反応酷くないですかね…」
いや、ひふみ先輩か遠山さんあたりに追加の仕事持ってこられたと思ってたからね。仕方ないね。
「で、何?どしたの」
「あ、お昼一緒にどうかと思って」
鳴海の指さした時計を見るともうお昼休みだ。おかしいな俺が最後に時計を見た時は11時だったのに。もう1時間経ったのか。
だったら、俺も昼飯にしよう。昼ごはんはなーにかな!とカバンから出すと焼きそばパンとコロッケサンド、マッ缶といつものメニューだ。
取り出してそれを持ち立ち上がると鳴海に向き直る。
「で、どこで食うんだ?」
できれば食堂は避けたい。その旨を伝えると理由を聞いてくることなく、鳴海はじゃあと天井を指さす。その意図を汲み取って俺は歩き出す。
イーグルジャンプのビルの屋上はエレベーターでは直接行くことが出来ず、階段を利用しなければいけない。扉を開けると開放感溢れるスペースと青空が広がっている。
鳴海は小走りでベンチに座るとお弁当を広げる。
「比企谷先輩も早く」
ぺしぺしと隣を叩く鳴海にしょうがないなぁと横に座る。その間にマッ缶を置いて間隔を開ける。あんまりくっつきすぎると誰かに見られた時に困るからね。まぁ、こんなとこ来る人なんてめったにいないんだが。
「にしても、珍しいな」
「あーまぁ。今日はちょっと気分転換に」
「いつもは誰と食べてるんだ?」
「プログラマー班の先輩とかねねっちともたまに食べますかね」
「望月とは食べないのか?」
その質問をした途端、会話が途切れた。正確には少し間が空いた。その間が気になって鳴海に目を向けるとどこか遠くを見ると俺の視線に気づくと作り笑いを浮かべた。
「ももとはいつも夜食べてますから」
「...それもそうか」
望月何かあったのか。そう尋ねようと思ったがぐっと飲み込んだ。まだ最近知り合ったばかりでそんなことを聞くのは野暮だろうし、それに同居人だ。いくら仲が良くてもすれ違いとかそういうのはよくあることだろう。昔もこれからも。
「...気分転換になるのか?俺で」
素朴な疑問だ。会話させても誰にでも出来ることしか言わないし聞かない。むしろ、会話させたら余計なことや自虐的な方面に向かうし。そんな俺と話したら気分転換になるのだろうか。
「そうですね」
考え込むような所作をとると鳴海は指を立てる。
「そもそも私、男の人とあんまり話したことないんです。だから興味があって」
えへっと恥ずかしそうに笑う鳴海。かわいいなお前。小町と戸塚には遠く及ばないが、及第点はあげてやりたい。
まぁ、その理由だと俺じゃなくても、他に男がいたら興味を持ったということになる。いかんいかん。変な方向に考えるのは俺の悪い癖だ。鳴海にそんなつもりはないだろうし、逆に俺しかいないことを可哀想に思う。
「専門学校だろ?男もいるんじゃないのか?」
「いますけど、単位とかバイトとかで話したり遊んでる暇なかったので」
「なるほど」
イーグルジャンプに入れたから今はその余裕があるわけだ。あれ?じゃあ、大学でも出来るんじゃ?でも、大学にいるよりはここで働いて給料貰うほうがいいか。
「それに」
昼飯を食べ終わってコーヒーを一気に飲み干そうとすると、鳴海が距離を詰めてぎゅっと拳を握る。
「私、比企谷先輩のこと結構好きなんですよ?」
まるで甘く蕩けるような。そんな声音で紡がれた後輩の言葉に俺は絶句した。それが嘘であろうと、本当であろうと。俺には人に好かれる資格はない。いつも勘違いして、迷って逃げてきた俺にそんなことはありえない。だから、排斥して取り除いた。後回しにしようとした。
その後始末がやってきたとしても、誰かに押し付けて逃げてきた。
「先輩はどうですか?私のこと」
だが、今回はそうはいかない。そうはさせないと掴む手の力が強くなる。熱く、手汗の滲んだ手は答えを出すまで離さないと。鳴海ツバメの目がそう語っていた。
「...どうしたんだ急に」
冗談にしてはタチが悪い。そんな意味を込めて目を逸らしながら言うと、鳴海はか細い消え入りそうな声で呟いた。
「ももと映画行ったって聞きました」
「この前たまたま会ってな。その時に、俺はそんなつもり無かったが助けたみたいでな。それでお礼がしたいって言うから」
頭をガシガシかきながらあったことをそのまま伝える。
「知ってます。ももから聞きました」
「...何か関係あるのか。その、今のあれに」
「あります」
先程と打って変わって顔を上げた鳴海は真正面を向いて俺の目を見据える。
「やっと一緒に入りたい会社に入れて、ももは憧れの八神さんと仕事ができるようになって」
そこで一旦区切ると目線を外す。
「でも、私には憧れとかそういう人いなくて。うみこさんとか優しくて仕事ができてかっこいいけど、ももみたいな憧れとは違うくて」
そして、また俺に視線を戻す。
「そう思ってた時にミスしちゃってプログラマー班に迷惑かけちゃって。そしたら比企谷先輩が手伝ってくれて」
その時のことを思い出しながら鳴海は仄かに頬を染める。
「全然私のこと責めないで、嫌そうだったけど…その励ましてくれたりしてくれて...」
その言葉は真剣そのもので、俺に付け入る隙を与えない。
「私もその時のお礼しなきゃって思ってていつ誘おうかって思ったら...」
先を越された。
怒りを込めた声で放たれた言葉から俺は何かを察した。
「お前、それで望月と」
「はい、喧嘩しました。あっちは何のことかよく分かってなかったですけど」
苦笑いを浮かべているがその実苦しみの方が滲み出ている。親友と喧嘩したのだ。その後にこの会話は堪えるものがあるだろう。
だからといって、俺は優しくすることは出来ない。
「そうか」
ただそれだけ呟くとベンチから立ち上がって鳴海の手を振りほどく。鳴海は心寂しそうに太ももの上で手を置く。
「先輩はどっちを選ぶんですか?」
「...何の話だ」
分かってるくせにそんなことを聞き返した。
はぐらかすことは許さないと鳴海の目は語っていた。
「私ともも。どっちを選ぶんですか?」
「選ぶも何も、理由がないだろ」
早くしないと昼休みがと終わるぞ、そう言って歩みを進めると背中に言葉を受ける。
「じゃ付き合ってくださいって言ったら付き合ってくれるんですか?」
それに一瞬足を止めかけるも、ドアノブに手をかけて勢いよく開くと出ていく前に振り向かずに俺はハッと僅かに自虐的な微笑みを浮かべた。
「俺にその資格はねぇよ」
ドアを閉めて急いで階段を降りた。最悪な気分だ。自分は何も変わってないんだと自覚させられた。鳴海が俺の何を見ていいと思ったのかは分からない。俺が助けたのは仕事だからだ。義務だ。働くものとして上司の命令に従った。それが結果的に鳴海のミスを帳消しにすることになった。ただそれだけだ。
望月に関しても、俺は偶然そこにいただけで何かしたわけじゃない。
どちらも俺に求めるものが間違ってるのだ。
俺は悪くない。だが、2人も悪くないのだ。ここで責められるべき人物は誰一人いない。
だが、確かにここに1人。気持ちを素直にぶつけられて何も返さなかった。そんな自分に久しぶりに心底腹を立てた。
作品解説にある通り、報われるものがいれば報われない者もいる。
それは誰かを選ぶということは誰かを選ばないということ。つまりは紅葉を選べばほかのヒロインは候補から外れてしまうのです。そう考えるとハーレムはみんな選んでますが、全員が平等に愛されるとは限らないのです。最初はそうでも後から差異が出てきてしまうものです。School Daysみたいになるのも嫌ですしね。
ここでは紅葉がヒロインですが、ツバメがアンチヒロイン、といったところでしょうか。嫌な風に見えるかもしれませんが決して嫌いなわけじゃありません。ほら控えめな胸の上にチラつく鎖骨とか滑らかなくびれのラインとか絶対可愛いですよひゃっほい!
あと明日から新学期なので投稿遅れます
2日に1話ペースか3日に1話か4日に1話か...俺にもわからねぇ!
とりあえず6月までに全員完結させれるように頑張ります