女の子だらけの職場で俺がヒロインなのは間違っている 作:通りすがりの魔術師
(会社に)泊まるんじゃねぇぞ...
ってネタが書きたかった。団長は止まったけど俺は止まんねぇからよ...!
そういや、フリージア流しながらアーサーロイヤルでランクマすると負けるんだけどやっぱりほそやんのせいなのかな?(当てつけ)
後輩達のトラブルを無事に収めて、いつも通り仕事に向かう。気にすることも考えることもなくなった俺は通常の三倍のスピードで仕事をこなしていく。
PCのスペックの差などここにはないのでどれだけ上手く手際よく処理できるかが評価の基準になるためこの会社は素晴らしいと思う。が、俺が多少本気を出しても給料は増えないし、なんなら仕事は増えるのでやっぱり社会っておかしいと思います!
「にしても、マジで終わんねぇな…」
チロりと机に積まれた仕様書の修正画稿を見ながら呟く。これ全部俺が手を抜いた皺寄せなんだと思うと、あぁあの時ちゃんとしてればなぁと後悔してしまった。
しかし、後悔先に立たず。
いくら過去を悔やんでも、またどう嘆いて反省しようとも過去は変えられないのだ。
とどのつまり、俺はこの状況を打開しつつ未来の俺に伝えねばならない。減らせる作業は減らしておこうね!と。
まぁ、結局修正作業はあるから別に最初から手抜かずにやっても結果は変わらないと思うのだが。量は多少は減るだろう。けど、モチベーションの問題がなぁ。
「はいこれ追加ね」
項垂れつつも手を動かしていると数十センチ積まれていた紙束にさらに紙束が足される。目線だけ動かすと本気モードなのか髪を束ねてポニーテールにしてる八神さんがニヤリと笑う。
「昨日何があったか知らないけど、今日はちゃんとやってよね」
言うと手をヒラヒラ振って奥の自分の席に戻っていく八神さんを尻目にペラペラと紙をめくる。わーなんか俺のじゃないやつまで増えてるよこれ。
俺は今回はキャラクターの別バリエーションとか色塗り修正がメインだが、おかしいな。仕様通りやったのに赤ペンが入ってる。見れば影を濃くとか色の変更とかかなり細かいものもあれば、ブラシ変えてみてみたいなざっくりした指示が書かれている。字的に葉月さんだろうか。
うん、これ昨日の俺のせいじゃねぇな。気分屋の上層部が悪いわ。変更するなら自分でして欲しいものだ全く。短いため息を吐くと後ろからひょいと顔を覗き込まれる。
「あの、比企谷さん大丈夫ですか?」
じっと何を考えてるのかよく分からない目をして望月はそう問いかけてくる。
何が?と目線だけで返すと望月は俺の目を指さす。
「いや、目がすごいことに...」
「それデフォルトだと思うよ」
そう言った望月に涼風が横から手を止めずに笑いながら言い放つ。いつもならここで反論して論破してやるとこだが生憎正論なのでぐうの音も出ない。なんで俺が論じる前に論破されちゃってんだよ。それは違うよとねっとり言ってやりたいがそうも言えず乾いた笑みをこぼす。
「まぁな、だけどほら、死んだ魚みたいな目って言われるんだが、魚ってDHAが豊富だろ?だからそれって俺の目が賢いことと相違ないと思うんだよ」
つまり、俺は賢いぼっちのハチーチカということである。違うか?違うな。
一人で孤独に否定まで持ってくとふと、視線が集まっているのを感じる。振り向くと全員が俺を心配そうな目で見つめていた。
「な、なんだかごめんなさい」
謝んなよ…悲しくなるだろうが。
短く咳払いすると俺は椅子を引いて楽な姿勢を取る。
「まぁ涼風の言う通りこの目はデフォルトだ。だからあんまり気にするな」
「そうですか...。あ、それとその紙何枚か貰っていいですか?」
望月がそう言い俺は首を傾げた。
「なんでだよ」
確かに俺の仕事量は多いが自業自得で俺自身が招いたことだ。ならば、俺が片付けるのが自明の理。周りもそういう意見なのか望月を止めに入る。
「ももちゃん、それは八幡の仕事やから」
「それに甘やかすの良くないと思うよ?」
なにそれ後輩に甘やかされる先輩とか無能じゃない?無能どころかただのろくでなしじゃねぇか。それはやだと訝しげな目を送ると望月はキョトンとした顔になる。
「いえ、私が頼まれた分はもう終わったので」
「は?」
望月のデスクの方に目を向けるとそこには積まれた紙などなく、俺のデスク上と比べると殺風景極まりない。
「なので仕事ください」
「それなら八神さんに」
「言ったら比企谷さんから奪ってこいって」
言われて、聞こえていたのか八神さんはVサインを掲げる。それならいいかと周囲は納得して目の前の仕事に戻る。俺はというと「そういうことなら...」と俺がやったやつではない変更届を数枚渡してやる。
「助かる。じゃよろしくな」
「いえ、こちらこそです」
ぺこりと頭を下げて自分の席に戻るなりペンタブを走らせる望月を見て、俺もすっと気持ちを切り替える。カチカチとマウスを鳴らし、カタカタとキーボードを打ち込み、コツコツサーッ!とペンタブがタブレットの上を駆けていく。人の声が聞こえず、それらの無機質なものの音しか聞こえないこの空間はまさに仕事場という名の戦場。そう思えてしまった。
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お疲れ様です!無事残業確定です!
そんなメッセージが脳内に響いて帰り支度を始めてる周りを見ないようにしながら画面と向き合っていた。
背中に届く「お疲れ様ー」の声を適当に返しながらペンを握る。あとどれくらい残ってんのかなーって確認しつつ、もうこれは明日でいいんじゃねぇかなと選別していく。その過程で『今日中に!』と書かれたメモを見つけて額がキーボードと密着する。
これはお泊まりも確定ですね。それなら息抜きついでに夜食買いに行くかと席から立ち上がると背後から「わっ」と驚く声が聞こえた。
「何やってんだ望月...」
昨日も言ったであろうその言葉は振り返った先で目を丸くして望月は立っていた。
「帰ったんじゃなかったのか?」
「あ、いえ、その...」
モジモジと要領を得ない発言に疲れている俺は「いや別にいい」と手を振ると財布がポケットに入ってることを確かめて歩き出す。
「えっと、どこに?」
「今日中って言われたけど泊まらなきゃ終わんないから夜食買いに行く」
俺は涼風みたいに会社に寝泊まりしないと思ってたんだけどなぁ。てか、昨年泊まってますね。その時に泊まるんじゃねぇぞ...って今の俺に向けて言った気がする。多分言ってない。
「そういうことだからお前も遅くならないうちに帰れよ」
望月にそう告げると、望月は首を振った。それやめてくれない?首と一緒に下も揺れてるから。ついでに俺の心も揺れそう。我ながら中学生みたいだな。
「なにどしたの」
「いえ、昨日のお礼をしたくて...その、仕事手伝いますから、それ終わったらご飯行きませんか?」
望月の申し出に俺は間の抜けた声を上げた。マジで?お礼の規模でかくなってない?その疑問に答えるかのように望月は口を開いた。
「一宿一飯の恩義は手厚く返せと父となるに言われたので」
あぁそう...親父さんとお前の友達すげえな。
しかし、これは俺の仕事であって望月がするべきことではない。だからここは断ってまた別の機会にとするのが建設的だ。それが人としてあるべき行為のはずだと言い聞かせる。ちょっと楽したいと考えたが後輩にやらせるのは気が引ける。
「悪いが望月それは」
「ダメです。拒否権はありません」
拒否権の前に発言権も消失したんですけど。
「それに寝泊まりして仕上げたとしても明日の仕事に支障が出ると思います」
まぁそれは確かに一理ある。でも八神さんもそこまで鬼じゃないし…。と八神さんのデスクを振り返ると無造作にごちゃごちゃした机に整えられた紙束が見える。その上には八幡用と書かれていて、もしあれを明日することになるのなら、今日の量よりも少ないがこれの後にやると確実に脳死する量だった。
ひえっと心の底から恐怖すると望月が親指を立てた。
「今日の私ならすぐに終わらせられます。あとは比企谷さんが本気を出すだけです」
なんとも頼もしいことだろうか。誰かに頼ることはあまり好きじゃない。1度助けてもらうと次もそれを求めてしまう気がして、自分の弱さを知ってしまうからだ。それを甘やかされると言うのは分かっている。しかし、ここで引いても望月は俺に逃げの一手を放てないように言葉を弄するのだろう。ならば、さっさと折れて終わらせてしまうほうがいいか。
「...分かった。けど、晩飯は早めに終わったらな」
「はい!」
何故か嬉しそうに笑うと望月は俺からプリントを受け取って自分のデスクのパソコンを付けて腕まくりをする。どうやら本気で片付けるつもりらしい。
仕事を手伝って貰うのだけOKして食事は断るべきだったかと少し考える。
フラグが立つのは避けたい。下手したらこういう場でセクハラ問題に発展し、路頭に迷うかもしれない。しかし、同じ職場で働く以上こういう機会はあるものだ前々から予見はしていた。それに俺の場合は結婚とかないからずっとここにいるだろうし、後に増えるであろう後輩とも接点が増える可能性がある。
男性としての好感度は抑えつつ、先輩としての信頼を保持したいというずる賢いエゴイスト。まぁ可愛い女の子とご飯なんて最近はあまりなかったのでたまにはいいだろうと言い聞かせて集中力を発揮する。
キリのいいところで。ホントは飯の所まで行きたかったけどちょっとね。
一応あと2話で終わらせる予定です。
次は遠山さんとひふみ先輩かぁ...どっちからにしようかなと思案中。
リアルが忙しくてあまり時間が取れないので亀更新になるかもですが許してくださいセンセンシャル!
次下手しいアレな描写入るかもです。