門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

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序盤はゲートの原作沿いで行きます


プロローグ

 午前11:00 

 

 真夏の暑い昼前。サウナのような暑さが続く東京都中央区銀座にある男が訪れていた。

 男の名は伊丹耀司33歳。職業、陸上自衛隊。

 彼は自他とに認めるオタクである。モットーは「喰う寝る遊ぶ、その合間にほんのちょっと人生」趣味のために仕事をすると嘯き、職場の自衛隊内では悪い意味で有名であった。今日は秋葉原で年に2回開かれる同人即売会イベントのため数少ない休暇を取って参加するつもりだ。

 

「Are you okay?」

「…はっ!?」

 

 朦朧とした意識が覚醒すると見知らぬ金髪外国人の若い男性がこちらを見下ろしている。どうやら先程前まで歩きスマホで柱と激突して気絶していたようだ。おかげでおかしな夢を見た気がする。

 

「あぁ、大丈夫。心配してくれてありがとう」

 

 そう答えると、金髪外国人の彼は安心したのか、笑顔をみせてくれた。

 

「ヨカッタ。お兄さん勢いよく柱とぶつかったから心配し…oh!!」

 

 金髪外国人の彼は興奮しながら、柱とぶつかった時に落としたスマホのキーホルダーを凝視する。

 

「そのキーホルダーはあのゲームのキャラだよね!」

「そ、そうだけど。もしかして、知ってるの?」

「先生がゲームをプレイしてたの見ていたから、知ってるんだ」

 

 感動したようにスマホのキーホルダーを見る。こうしていると見た目以上に子供っぽい。

 すると突然思い出したかのように、

 

「あっ、そうだ。お兄さん秋葉原までどうやって行けばいい?」

「えっと、俺も秋葉原に行くから途中まで一緒に行く?」

「ホント! ありがとう。お兄さん」

 

 彼に背中を押され駅構内を歩き出す。なんだか少年のペースに巻き込まれているが、不思議と嫌ではない。むしろ好意的に感じる。彼の人間性から来るものだろうか。

 

「出身はどこなんですか?」

「地中海辺りなんだけど、今はイギリスに住んでるよ」

 

 他愛のない会話をしながら会場に向かう。陽気な笑顔で話しかけてくれる彼と会話するとこちらまで楽しい気持ちなる。

 駅構内の出口前に近づくと、急に彼の足取りが止まった。優しそうな笑顔が真剣な顔つきになる。

 

「何だ。この変な魔力の揺らぎ」

 

 彼が何かつぶやくと同時に窓ガラスが揺れるほどの爆音がした。

 駅構内を出るとあちらこちらから悲鳴と怒号が聞こえる。

 鉄の鎧を着た兵士が女性を弓矢で胸を射られ、口から赤い泡をふく。オークやトロールが棍棒で倒れた男性の頭を殴り、周りに血しぶきをあげた。人々の苦痛の声がビルに反響して辺り一面に響く渡る。道路は血と死体で埋め尽くされていく。

 見渡す限りの光景に絶句すると、黒い影が空中へ踊りだし、顔を上げると言葉を失った。

 

「竜……?」

 

 爬虫類のような滑りのある鱗が夏の日差しを鈍く反射し、怒りに狂い燃えるような赤黒い瞳が周囲を睨めつけていた。物語にしか存在しないはずの竜が目の前に存在している。 

 目前の現状に現実なのかと疑いたくなるが、今分かることは非常に危険事態が起きている。自衛隊員としての勘が伝えていた。とにかく市民を避難させなければ。

 

「ここは、危ないから避難し…」

 

 声をかけると隣にいたはずの金髪の彼が消え失せていた。

 

 

 

 

 

 

 午前12:00

 

 銀座は突如出現した謎の中世ファンタジー集団に町中は阿鼻叫喚も地獄絵図となっていた。逃げ惑う市民。突然の事態に対応が出来ない警察。

 後の歴史で銀座事件と呼ばれる、巨大な門から異界の者たちによる侵略。民間人を無差別に殺害され屍の山が築かれていく。

 この惨事のなか正しく行動した人物がいた。伊丹耀司である。

 

「何がなんだが分からないが、避難させないと」

 

 金髪の彼がどこに行ったが気になるが、市民の避難させないといけない。自衛隊員としての経験を活かし、近辺の地形から守りやすい皇居に当たりをつけた。近くにいた警察の無線を借りて、皇居警察に話を通して民間人を皇居の中に入れてもらい、半蔵門から西へ脱出させた。

 避難する民間人を追撃する異世界軍から守るため、伊丹の指揮でバリケードを構築して皇居前の二重橋を舞台に激しい防衛戦を行った。

 数十分後、援軍が到着した。陸上自衛隊の攻撃ヘリによる圧倒的な攻撃で異世界軍は一挙に蜘蛛の子を散らすように崩壊した。ようやく一息つけるようになり、汚い地面に腰を下ろす。

 

「もう疲れた。今年こそ、同人即売会に行けるはずだったのにな……」

 

 久しぶりの休暇を使って参加しようと思ったが、この騒ぎだ。おそらく同人即売会も中止だろう。そう思うと、魂も一緒に抜け出ていきそうな深いため息が出る。そういえば、金髪の彼はどこに行ったのか?

 

「無事に避難できているといいのだが」

 

 周りには異世界軍と民間人の死体が累々と転がっている。戦闘中は気にかけなかったが、辺りから死臭だらけで胃の中がひっくり返りそうになる。彼がこの死体の山に混じっていないことを祈るばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀座事件から数週間後

 

 伊丹はある表彰式に出席していた。多くの同僚に見守られながら表彰台に上がる。なぜこんなことになったか、これまでの記憶を振り返る。

 門から訪れた異世界の侵略。多くの死傷者、行方不明が出た。されど、伊丹耀司の活躍により救援部隊が来るまで防衛戦を行い、国民を守り未曾有の事件を最小限の被害で抑えることができた。

 伊丹は二重橋攻防戦で多数の市民を救った功績により、防衛大臣から賞詞を賜って二等陸尉に昇進した。また、人々からは二重橋の英雄と称えられた。

 式を終えた二重橋の英雄は公園のベンチにため息を吐きながら腰を下ろす。

 

「はぁ…。こんなつもりはなかったのにな…」

 

 伊丹としては、昇進より休暇を貰い同人即売会に参加するほうがずっといい。

 

「日本の英雄がこんなところで肩落としてどうしたっスか?」

 

 声を掛けられ顔を上げると若い純朴そうな男が立っている。男の名は倉田武雄。自衛隊の同僚であり、伊丹同様オタクだ。

 

「俺は偶然その場にいただけだって」

 

 相変わらずですねと言って倉田は隣に座る。公園には家族連れなどが遊んでいる。

 

「そういえば聞きましたか。俺達、特地に派遣されるらしいっス」

 

 倉田は少し固い面持ち顔で話す。閣議で決まった特地派遣はおそらく自衛隊初めての戦闘になるだろう。緊張しないほうがおかしい。

 

「大丈夫だよ。あっちの武装見る限り中世時代で止まっているみたいだし。それになるようになるしかないさ」

 

 倉田の緊張を和らげる。彼は「本当にすごいですね伊丹さんは」と苦笑いを浮かべた。久しぶりにいつものくだらないオタク話をする。最近は銀座事件の調書で忙しく、趣味を語り合う機会がなかったので思わず時間を忘れて話す。

 

「異世界に転生じゃないけど、まさか自分が行くとは思わなかったな」

「獣耳娘なんかいますかね!!」

 

 特地では何が待っているのか、期待と不安が入り交じりながら、未だ見ぬ異世界に思い馳せ会話が盛り上がる。気が付くと腕時計の針が一周するほど時間がたっていた。

 

「じゃ、これで」

「職場でまた会いましょう」

 

 倉田と別れて真面目に特地派遣について考えるが、面倒になって思考を止める。せめて、何のトラブルもなく日本に帰れたらいいなと願うほかなかった。

 

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