門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

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七話 嵐の前

 疲れた。

 ほんとに疲れた。

 護衛対象がお姫様二名様追加、国会ではめちゃくちゃに追求されるわ。おまけに『敵』さんの威力偵察に示威行動で予定が狂いまくり。

 だからこその。

 

「やっぱり、これだよ。これ」

 

 今は、皆と別れてアキバで思う存分遊び中だ。

 忙しすぎて忘れていたが、俺のモットーは「喰う・寝る・遊ぶ その合間にほんのちょっとの人生」だ。最近はちょっとどころではなかった。ここらで遊ばないと、ほんとに死んじゃう。

 

「そろそろ時間か」

 

 腕時計の時間を確認して、ある公園に向かう。

 目的地の前に五十くらいの男が立っている。

 

「待ちましたか」

「いや、来たばかりだ」

 

 顔をくしゃりと笑う男は嘉納防衛大臣だ。

 

「ここで会ったのは二〇年ちょい前か」

「今じゃ閣下ですからねぇ。SPはどこですか」

「何言ってるんだ。最強のボディガードがついているだろ。二重橋の英雄様」

 

 いつの間にかお互い偉くなったもんだと笑う。

 

「少し歩くか」

 

 公園内を散策しながら、マンガや特地での出来事を話していく。

 ベンチを見つける。

 

「座るか」

「そうですね」

 

 公園は俺たち以外はおらず、鳥の声と木々の葉が風で揺れる音がよく聞こえる。

 

「おっと、忘れる前に言うか。

 伊丹二尉。予定の行動に復帰し、部隊が警護する旅館に入れ。防衛大臣の職権をもって命じる」

 

 嘉納さんが仕事モードで指示がきた。

 

「ハッ。了解しました」

「それとな。もう一つ、お前にやってもらいたいことがある」

「何を」

「お前にある極秘任務を与える。任務内容知っているものはごく僅か」

 

 なんだか嫌な予感がする。

 

「この任務を知るのは、お前の部隊と今回来た客人のみだけにしてくれ」

「分かりました。詳細は」

「説明は人を呼んでいる。そいつに」

「お呼びですか」

 

 先ほどまでいなかったはずの男がそこに立っていた。

 四十くらいか。

 上品なスーツを着込んでも、隠しきれない程の壮漢であった。

 

「突然出てくんじゃねぇ。びっくりしたわ」

「すみません」

 

 深く頭を下げる。

 なんだこの男。公安とも違う感じだ。

 彼の周りだけ異様な静かさがあった。

 

「初めまして。宮内庁神祇鑑定人、九鬼隗一郎と申します」

 

 顔あげると左目を飴色の革でできた眼帯が覆っていた。

 

「お前が関わる任務はちょいと特殊でな。アドバイザーとして俺が呼んだ」

「特殊?」

 

 それが宮内庁がどうして出てくるんだ。意味が分からない。

 そもそも神祇鑑定人ってなんだ。

 

「よろしくお願いします」

「あ、はい。お願いします」

「伊丹さんは特地で魔法をご覧になりましたか?」

「ええ。見ましたが」

 

 レレイが魔法を使うのを見たことがある。

 まさに、異世界ファンタジーだと喜んだのが記憶に新しい。

 

「こう思ったことはありませんか。あちらに存在するなら、我々の世界にもあるのではないか」

「あるんですか。まさか」

「ええ。私達は魔術と言い、隠語で()()()と呼ぶ場合もあります」

「なんかお役所らしい言い方ですね」

「ええ。お役所仕事ですから」

 

 至極当然とばかりに、うなずかれる。

 

「私ども神祇鑑定人は宮内庁より指定を受けて、最悪な事態を招きかねない特殊文化財を調査させていただいてます」

「はぁ」

「なので、魔術など関して普通の人より造詣が深いので、任務のアドバイザーとして招集された次第です」

「もしかして、九鬼さんも使えるですか。魔術?」

「似たようなものなら」

 

 おぉ、と俺達の世界に魔術師が存在したことに関心してしまう。

 

「今回の任務について説明します。伊丹さんはある魔術組織の調査を手伝ってもらいます」

「魔術組織?」

「海外にいくつか組織がありまして、今回は極秘裏ある一つの組織と協力することになりました」

 

 政府はいつのまにかそんなことをしていたのかと驚く。

 

「質問いいですか?」

「何なりと」

「日本にも魔術組織はあるですか?」

「あるにはあります。

 しかし、第二次世界大戦後に政府と魔術組織のつながりがほぼなくなってしまいました。現在、確認できる日本の魔術組織も小さく、数も少ないものになっています」

 

 だから、海外と手を組んだかと考える。

 

「魔術師二名ほどあなたの隊に行動させてください」

「周りから怪しまれませんか」

「特地の研究のため訪れている調査員として潜らせます」

 

 特地はまだまだ未知なことが多い。調査のための研究者が同行してもおかしくはないか。

 

「詳細は狭間指揮官が指示されます」

「了解しました」

 

 柳田にいわれた極秘関係者を思い出す。もしかして関係あるのかもしれない。

 

「では、嘉納大臣。私はこれで」

「悪いな。管轄外なのに」

「いえ、時計塔とつながりを持てる機会などそうそうありませんから、こちらこそありがとうございます」

 

 慇懃に一礼する。

 九鬼さんは踵を返し、公園の出口に向かって歩き出す。

 歩き方は独特で、頭から鉄芯が入っているかのように姿勢はまっすぐ、バレリーナのような足取りで颯爽と去っていった。

 

「嘉納さん。時計塔って?」

「今回、協力する組織の名だ。結構大きい組織らしい」

 

 嘉納さんが腕時計を見て、そろそろ時間かとつぶやき立ち上がる。

 

「じゃあな、面倒ごと頼んで悪いな」

「ほんとですよ。まだ厄年じゃないはずなんですけどね」

「はは、苦労するなお互い。生きて帰れよ、伊丹」

 

 手を振りながら、去っていく嘉納さんの背中を見る。

 面倒だが、他ならぬ嘉納さんの頼みだ。

 世話にもなったし、信頼には答えないとな。

 次に休める何時だろうとため息を吐きながら、心を切り替え、気合を入れた。

 

 

 

 

 

 

 旅館の湯につかりながら、疲れをとる。

 

「このまま休んで、仕事忘れたいな」

「無理でしょ」

「言うな。それを」

 

 同僚の富田が非情な現実をつきつける。

 

「それにしてもよくあんなに買ったな。あいつら」

 

 合流したとき、別行動していた女性たちは大量の買い物をしていた。

 チュカは狩猟用の弓矢。

 レレイは本。

 ロゥリィはゴスロリ。

 荷物が多くて、移動には苦労した。

 

「楽しんでるようですし、良かったのでは」

「まぁね」

 

 温泉からあがる。みんなと旅館の山海の幸に舌鼓を打つ。

 明日には特地に戻る予定なので、早めに就寝する。

 俺は当分は見れないだろう日本の夜景を窓から眺めていた。

 

「まだ寝てないのね。伊丹」

 

 お酒のカップを持ったロゥリィが近づいてくる。

 

「ちょっとな。考え事」

「そう」

 

 ロゥリィが向かい合って座る。

 お酒のせいか。

 顔に朱が入り、目が潤んでいる。彼女のもつ妖艶な雰囲気がさらに濃くなったようで、おもわず唾を飲み込む。

 

「そうだ。言いそびれたから、言うけど」

「っ、どうした」

 

 ロゥリィの言葉に意識が戻される。

 

「炎龍のとき、イタミは違和感あったでしょ」

「あぁ、そうだけど」

「あれ。一瞬だけど、ものすごいスピードで弓が飛んできて、爆発したのよ」

 

 違和感の正体に気付く。だから、ロケットランチャーが誘爆したかのようになったのか。

 

「ロゥリィは弓を放った相手に心当たりはある?」

「まったく。でも、あなた達の世界にはいないの。銃という武器より速く射つ弓兵は」

「いない……と思う」

 

 以前の俺ならいないと断言できた。

 だが、九鬼さんから聞いた話を思い出す。

 柳田が見た極秘関係者。海外から来た魔術師。

 思考の海に沈んでいると、ロゥリィが突然。

 

「ねぇ、イタミ。この近くで誰か戦ってるでしょ」

 

 携帯が鳴る。

 まるで、これから嵐が来ること伝えるように。

 

 




ロード・エルメロイ二世の事件簿など書かれている三田先生の作品『ジンカン』から九鬼隗一郎を登場させました。ジンカン面白いですよ(ダイマ)

次回は戦闘回です。誰か書いて欲しい(懇願)

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