門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

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戦闘回と言ったな。あれは嘘だ。
本当にすみません…


十一話 炎龍退治(上)

 第三偵察隊が帝都から帰った。

 拉致された日本人を発見して取り戻したらしい。

 だが、いいことだけではない。

 テュカが壊れかけた。

 あるダークエルフが自衛隊に炎龍退治を依頼した。

 しかし、領土侵犯になる恐れがあるため拒否しなければならなかった。絶望して追い込まれたダークエルフはやってしまった。

 テュカに「お前の父親は死んだ」と現実を突き付けてしまう。

 壊れかけた彼女をレレイの魔法で眠らせたが、目覚めたテュカは伊丹さんを父親と誤認していた。

 伊丹さんはいま彼女の父親役を演じている。

 

「どうにかできないか。遠坂」

「無理よ。逆に干渉すると、さらに壊してしまう可能性があるわ」

 

 父親を失う痛みは、事情は違うけれども理解はできる。

 何かしてやりたいが、何もできない俺の無力さに歯痒いばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 書類に向かう。

 以前は苦痛しかなかったが、今は一番気が休まる時間かもしれない。

 

「おい。いつまで家族ごっこ続けるつもりだ」

 

 柳田さんが声をかけてくる。

 

「正直、しんどい」

「だったら、退治してこいよ。ドラゴン」

 

 ダークエルフや柳田さんは簡単に退治と言ってくる。

 ふざけるな。炎龍を撃退できたのは偶然だ。しかも、正体不明の矢によって。

 

「任務ならともかく、私情で部下は巻き込めないよ」

「そうか。まぁ、行くときは言ってくれ。形は整えてやるから」

 

 相変わらず、嫌なことを言ってくれる。

 毎度思うのだが、柳田さんは自衛隊より官僚や政治家に合っている気がする。

 宿舎から出て、酒場に向かう。

 部下たちが気を利かせて企画してくれたものだ。黒川がテュカの面倒を見てくれる。

 やっぱり、こいつらを炎龍退治に巻き込むわけにはいかない。

 

「お疲れね。自分より年上の子を持った気分はどう」

「複雑な気分だよ」

「心労を察する」

 

 ロゥリィとレレイが励ます。

 おかげで少し気が休まった。

 難民キャンプに帰り、テュカを床に就かせる。

 椅子に座り、一人考える。

 この子ために、俺ができることは何か。医者からは復讐も一つの方法だと言われた。

 横にいる彼女の寝顔を見て、覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

「柳田さん、お願いがあるだけど」

「ついにやる気になったか」

 

 いい顔で柳田さんが準備を進める。

 

「荷物は二人分でいいのか」

「あぁ、部下を危険なことには巻き込めないからな」

 

 車に乗ろうとしたとき、首根っこを掴まれ後ろに倒れる。

 

「痛ぁ。だれ」

「なに一人で行こうとしてるの」

 

 見上げるとロゥリィが立っていた。

 

「分かってるのか。今から炎龍退治行くだぞ」

「いいじゃない。ぞくぞくしちゃう。それとも負けるつもりなの」

「いや」

「じゃあいいでしょ」

「でもな」

 

 腹に一発パンチを入れられる。胃の中のものが逆流しそうになる。

 

「分かった分かった。言うから。ついてきてくれるか、ロゥリィ」

「高いわよ」

「ありがとう。払えるか分からないけど」

「大丈夫よ」

 

 腕を噛まれる。すごく痛い。

 ロゥリィが腕から溢れ出た血を、上目づかいでこちらを見ながら官能的に飲みほした。

 

「契約はなされたわ。これで死んだら、あなたの魂は私のもの」

 

 楽しげに笑うロゥリィ。なんかとんでもない契約書にサインしてしまった感じだ。

 

「私も行く。生存率をあげるなら魔法が必要」

「今より、この身は永久に御身のもの。なんなりとお申し付けください」

 

 レレイとダークエルフのヤオが仲間に加わる。

 

「伊丹さん。私たちも連れていってくれませんか」

 

 後ろから声をかけられる。振り返ると、遠坂さんと衛宮さんがそこにいた。

 

「すみませんが、大変危険なので」

「イタミ。彼らも連れて行こう」

「私も賛成だわ。役に立つわよ」

 

 レレイとロゥリィが意見する。彼女たちがこんなに言うなら、何かあるのかもしれない。

 

「見知らぬ私たちにテュカには良くしてもらいました。よろしければ協力させてください」

 

 男女二人組が頭を下げる。正直、地球で魔術師に襲われて二人に良いイメージはなかったが、悪い人ではないのもしれない。

 

「分かりました。ですが、命の保証はできません。それでも来ますか」

「はい。お願いします」

 

 計七名で炎龍の巣に向けて出発した。

 

 

 

 

 

 

 ???????

 

「やれやれ。予想以上に結界も頑丈でしたが、あなた様の魔力の異様さは相変わらず恐ろしい」

 

 神官服を着た男が先ほど崩れた洞窟を見て、呆れた顔で言う。

 

「久しぶりに動くとこうもなまっているものね」

 

 鈴を鳴らしたような少女の声が響く。

 まるで、天使いや悪魔か。

 人間の造形を超え、深い闇を体現した黒髪を持つ絶世の美少女が存在していた。

 

「あれで、なまっているとは」

 

 先程の大地震がまさか目の前の可憐な少女によって起こされたものと言われても、誰も信じないだろう。

 

「あなたはこれからどうするの?」

「私は帝都の中心部に紛れようかと思います」

 

 国の政治を知れば、この世界の人間がどのような性格・歴史が把握することができる。

 

「相変わらず、人間の社会に潜り込むの得意ね」

「何度も転生を繰り返してますからね。何より、人間の醜さがよく見えますからね」

 

 権力に固執してしまった人間はどうしてああも醜くて、面白いのか。おもわず、頬が歪む。

 少女は何千年も積もった体のこりを柔軟でほぐす。

 

「私はリハビリも兼ねて旅にでも出るわ」

「それでしたら、あなた様に万が一は無いでしょうが、実験で作った上級死徒にもなれない雑魚でしたが消されました」

「それだけの力を持った人間もこの世界にはいるのね。いいじゃない(ムシ)をただ潰すだけじゃつまらないもの」

 

 その時、この世の生物とは思えない恐ろしい遠吠えが聞こえた。

 

「あら、久しぶりね」

 

 いつの間にか、少女の隣には狼というにはあまりに大きな白い物の怪がいた。

 

「あなた様の復活に駆け付けたのでしょう」

「そうなの。いい子ね。元気にしてた」

 

 少女は白い化け物を労わるようになでる。化け物は嬉しそうに明るい声で鳴く。

 

「じゃあ。私は行くわ」

「えぇ。久方ぶりの地上楽しんでください」

「あなたも思うがままに振る舞いなさい。我ら死徒、人に徒に死を運ぶもの。せいぜい楽しみなさい」

 

 少女と別れ、帝都に向けて歩く。

 これから、何千・何万の人間が無様に死んでいくだろう。

 

「せいぜい楽しませてくださいね。人間(ムシケラ)共」

 

 刻一刻と破滅の時は近づく。

 

 




次回こそ戦闘回だといいな。

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