門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

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十一話 炎龍退治(中)

 炎龍退治に向けて出発してから数日がたった。

 アルヌスを出てテュカの精神は悪化するばかりだ。

 車の運転は俺がして、伊丹さんには彼女のそばにいて落ち着かせてもらった。それでも、ひどい場合はレレイの魔法で眠らせた。

 このままではまずい。急がなければ。

 

「今はテリリア平原か。ていうか、ヤオ。

 お前の来た道、逆に進んだら回り道ばっかだな」

「仕方ないだろ。緑の人の噂を聞きながら来たんだ」

 

 伊丹さんが地図を見ながらヤオと相談していく。

 

「伊丹さん。この先、道が結構荒らそうです」

「そうか。すこし遠回りするか」

 

 目の前に木々が海のように広がっている。

 特地は手つかずの自然が多く、車が通れる道が少ない。

 いろいろ苦労しながら、道を迂回しながらロルドム渓谷にたどり着く。

 断ち割ったような深い狭間が、地球の傷口のように口を開けている。

 谷底から吹き上がった冷たく硬い風が、足の間を通りぬけて恐怖をかりたてる。 

 

「長老たちに知らせてくる。少し待ってくれ」

 

 崖を軽やかにヤオが降りていく。さすが渓谷出身なだけある。

 

「すごいわね。下を見るだけで足竦みそうなのに」

「俺でも、ちょっと無理かな」

 

 遠坂は感心したようにつぶやく。

 何十メートルもある谷を飛び降りるのは、できれば避けたい。

 

「緑がほどんどない。なんでこんなところに住んでいるの?」

 

 テュカは不思議そうに首をかしげる。

 しばらく、すると 

 

「遠坂」

「囲まれてるわね」

 

 何かに囲まれていることに気付く。

 こんなに接近するまで油断した自分が情けない。

 

「動くな!お前たち何者だ」

 

 ダークエルフが弓矢を構え、我々を狙う。

 手を挙げ、攻撃の意志を無いことを示す。

 だが、気が立っているのか弓矢を降ろす気配がない。

 最悪の場合を考えて、魔力を回して迎撃する準備をする。

 

「待って!彼らは客だ。敵ではない」

 

 ヤオが攻撃をやめさせる。

 後ろには長老だろうか、複数の高齢になるダークエルフを連れて来た。

 

「緑の人よ。よくぞ参られた」

 

 ダークエルフ達が一斉に頭を下げ、感謝された。

 戸惑いを覚えながらも、谷の底まで案内される。

 底にはダークエルフの集落が存在していた。

 ダークエルフのなかには大けがをしているものいた。何より皆に共通していたのは、目が絶望に彩られている。

 食事をとり、長老を含めた炎龍退治の作戦会議を始める。

 

「緑の人よ。何か策はあるので? 噂に聞いた鉄の逸物を使うので?」

「鉄の逸物? あぁ、ロケットランチャーのことか。できれば、正面から戦うのは避けたい」

 

 伊丹さんの作戦はこうだ。

 炎龍がいない間に巣に忍び込み、爆弾を仕掛ける。帰った来たとこに吹き飛ばす。まだ生きてたらロケットランチャー撃ちまくってトドメをさす。

 単純だが、最も安全で効果的な作戦だ。

 

「留守を狙うとは緑の人も奸智に長けておられる」

「いや、まぁ。面倒ごとが苦手なだけですよ」

 

 伊丹さんが照れて頬をかく。

 作戦会議は終わり、ダ-クエルフたちは寝床に帰っていく。

 俺たちも寝袋に入り、全員の無事を祈った。

 もう一つ願わくば、テュカの心の闇が晴れてくれたらいいのだが。

 

 

 

 

 

 

 夜が明け、朝日が昇る。

 九人のダークエルフを仲間に加えて、もう一度作戦を確認する。 

 

「それじゃ、出発だ」 

 

 伊丹さんの号令のもと徒歩で炎龍の巣があると言われている火山にむかう。

 テュカは精神が急に不安定になったため眠らせた。

 鬱蒼とした森を抜け、火山にたどり着いて一休みする。

 

「テュカはどうです。伊丹さん」

 

「まだ寝てる」

 

 できれば連れずに済めばいいのだが、テュカの目前で炎龍を倒さないと復讐は果たしたことにならない。

 偵察に行ったダークエルフから、炎龍はいま巣にいないことが分かった。

 

「ロゥリィ。見張りは頼んだ」

 

 伊丹さんが手を振るとロゥリィは笑顔で返した。

 

 彼女は諸事情で地中に入ることはできない。なので、地上で見張りを担当することになった。

 洞窟に入る。

 湿気が多く、奥にいけばいくほど独特の臭いが鼻につく。

 山の中心にたどり着くと、炎龍の巣らしきものが確認できた。

 巣には遥か昔に炎龍に挑んだ者たちの遺留物があった。

 

「これ、すごいわね。時計塔でもなかなか見れない逸品ね」 

 

 剣を持ち上げて、唸る遠坂。 

 

「遠坂分かっているとは思うけど」

「分かってるわ。できれば持ち帰って研究したいけどね」

 

 名残惜しそうに捨てる。そう言う俺も実は、目についた剣を片っ端から構造解析なんかしたりしてる。

 

「じゃ、さっさと始めますか」

「指示お願いします。伊丹さん」

 

 伊丹さんの指示のにより迅速に巣の中心に穴を掘り、粘土をこねて爆弾を仕掛けた。

 コードリールを伸ばし、安全な地点まで行こうとしたとき。

 

「あっああ」

 

 ヤオが上空が見上げて、恐怖に顔を歪める。

 顔を上げると、炎龍がこちらを見ていた。

 蛇ならぬドラゴンに睨まれて、カエルのように固まる。だが、炎龍も予想外の客人に固まってしまう。

 一瞬の静寂。

 緊張でパニック状態になった仲間のダークエルフが、ロケットランチャーを撃ちこんでしまう。

 口火を切られたことで、暴れる炎龍。場が荒れてしまう。

 最悪の状況だ。洞窟という密閉された空間で大量の爆発によって弓での狙撃が難しい。

 

「落ち着け!」

 

 声をかけたが無駄だった。炎龍の攻撃によって仲間が死んだことに頭に血が上っている。

 遠坂のほうを見ると、今まさに爪を振りおろし攻撃しようとしたときだった。

 

「遠坂!」

「セット」 

 

 宝石を握りしめた遠坂が魔術を唱える。

 すると、目の前にエメラルドの盾を作り出し術者を守った。

 

「私は大丈夫。とにかくみんなを」

「分かった」 

 

 息があるものや恐慌状態になったダークエルフを脇に抱えは走り出す。

 炎龍は動き出した俺に目をつけ、攻撃をする。

 一度、仲間を下ろして戦うかと考えたとき、

 

「くらえ、炎龍!」

 

 レレイが近くの剣を魔法で撃ちだし、炎龍の腹に突き刺さり苦しみだした。

 チャンスと思い、出口に向かう。

 

「父さん!」

 

 テュカの叫び声に振り返ると、炎龍が苦し紛れに炎を吐き出していた。

 その先にこちらに向かって走り出す伊丹さんがいた。

 間に合わないと思った瞬間、

 

「やめてー!」

 

 大量の魔力で作られた雷撃がテュカによって炎龍にむけて放たれる。

 雷撃を受けた炎龍は断末魔の叫びをあげる。

 さらに、すさまじい雷撃の余波で爆薬が点火する。直撃した炎龍は木端微塵になった。

 しかし、爆薬の量が多かったから洞窟の壁に亀裂がはしる。

 

「崩れるぞ! 出口まで走れ!」

 

 皆が洞窟まで死ぬ気で走る。

 火山の洞窟から出ると疲れからか、倒れこみ息を整える。 

 

「無事か。みんな」

「なんとか」

「生きてる」

「損傷はたいしたことはない」

「伊丹さんは? 炎に当たりそうでしたけど」

「奇跡的になんともないよ」

 

 全員が傷や仲間が死に無事とは言いづらいが、助かった。

 

「ちょっと、遅いわよ」

 

 弱弱しい声で話しかけられる。声の発生源を探すと、ボロボロの状態でロゥリィが倒れていた。

 




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