門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

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十四話 学都ロンデル

 学都ロンデル。

 学問が盛んな都市だ。

 連なる建物からは長い年月を偲ばせる。

 

「はぇー。なんだか歴史を感じるな」

「歴史は帝国よりも長い。大昔に学問の神エルランとラーがロンデルを作ったとされてる」

 

 レレイに先導されて街を歩く。

 

「学問と魔法の街なだけあって、学生みたいなのが多いな」

 

 伊丹さんが楽しげに話す学生を眺めながらつぶやく。

 俺は時計塔で魔術を学んでいた頃を思い出す。いろいろトラブルに巻き込まれて大変だったが、あれはあれで楽しい青春だったと懐かしむ。

 

「なにノスタルジックに浸っての。士郎」

「いや、なんだかロンドンを思い出してね」

 

 顔に出ていたのか遠坂に突っ込まれる。

 

「そうね。あの頃は大変だったわね」

「いろんな人に出会えたしな」

「着いた」

 

 遠坂と話し込んでいるうちに、泊まる宿にたどり着いていた。

 荷物を部屋に置いて、レレイの知り合いがいる研究街区に行く。

 

「なんだか周りの建物と離れてないか」

「隔離されてるから仕方ない」

「隔離?」

 

 研究街区から爆発と悲鳴が聞こえる。

 

「これが頻繁に起きるから」

「な、なるほど」

 

 若干、顔を引きつらせながら研究街に入る。

 道中にさまざまな魔法実験を行っていた人たちを遠坂は観察していく。

 

「すごいわね。私たちとは異なる技術で神秘を成立させてる」

「そうなのか?」

「士郎はもう少し勉強なさい」

 

 遠坂は呆れた顔をする。弟子として申し訳ない。

 

「これから向かうのは知り合いは誰なんだ?」

「私の師匠の兄弟弟子にあたる人で、ミモザ老師っていう」

 

 伊丹さんの質問にレレイが答える。

 数分後、ある家の前に着く。

 レレイが戸を叩く。はいはいと家の中から声がして扉が開くと可愛らしい老婦人が出てきた。

 

「あらあら、リリィ久しぶりね」

「レレイです」

「でも、リリィの方が可愛らしいでしょ。今日からリリィにしましょう」

「遠慮します」

 

 まるで、孫を可愛がるようにレレイをなでる。

 後ろにいる我々に気づくと、

 

「あら、リリィの友達? みんな入って。歓迎するわ」

 

 勢いに押されて、家に案内される。

 用件をミモザ導師に伝えて、推薦状を渡す。

 

「あらすごいじゃない。導師号に挑むのはまだ早いと思ったけど、推薦状を見る限りあなたの業績は抜群だわ」

 

 嬉しそうにレレイを褒める。

 

「あのミモザ老師」

「何?」

「アルペジオは今どこに」

「今。出かけて…」

「帰りました。てっ、ミモザ老師また散らかして」

 

 誰かが訪れる。

 皆の前に現れたのは、二十代前半で綺麗な容姿をした女性だ。

 

「げ、レレイ」

 

 容姿に似合わない声をあげる。

 

「この人誰?」

「私の姉」

 

 伊丹さんの質問にレレイが小さな声で答える。

 

「師匠。いつものお店で待ち合わせしましょう。私は部屋を片付けるので」

 

 全員が部屋から追い出される。

 

「あらあら、照れちゃって」

 

 的外れな発言にレレイは呆れる。

 

「この先に美味しいお店があるから行きましょう。いろいろ話しもしたいし」

 

 ミモザ老師に連れられて歩き出す。

 ロンデルに来てから、なんだか圧倒されてばかりだった。

 

 

 

 

 

 

「そんなことことがあったのね」

「門の向こうはそんなに文明が発達していたのね」

 

 お店で食事しながら、自衛隊と一緒に行動した経緯や門の向こう側について話す。学者の二人は感心したかのように頷く。

 

「それにしてもあんたがこんなに行動なのは、意外だったわ」

「わたしはそんな事ないと思うわ。リリィは興味があることには全力だったものね」

 

 姉のアルペジオが机に肘つきながら呆れた顔に対して、ミモザ老師の言葉に少し照れるレレイ。

 

「それにしても懐かしいわね。私も若いころはロゥリィと旅したわね」

「そうね」

「えっ、ロゥリィは知り合いだったのか」

 

 伊丹さんの質問に彼女はうなづく。

 

「何年も前の話だったけどね」

「ほんと、何年前なのかしら。

 探してもなかなか会えないから半分諦めていたけど、リリィがロゥリィを連れてきてくれたおかげで、ようやく宿題の答えも伝えられるわ」

「宿題?」

「そうよ、別れる前に宿題を出したのよ。なぜこの世界には多くの種族が存在しているのか」

「理由があるのか」

「それは門よ」

 

 ロゥリィの出した問題に自信をもってミモザ老師が答え、静かに語り出す。

 エルフの創世神話には神に導かれ、原初の森に現れたとされている。これはどの部族にも当てはまる。原初の森の場所を訪ねると、皆アルヌスだと言う。

 

「本当なんですか」

「生涯をかけて研究したんですもの。間違いはないわ」

「それであなたが出した答えは?」

 

 ロゥリィの問いに、

 

「この世界住む亜人は門が開かれるたびにこちらに移り住み、時に争い、交じり合いながら根付いていき、門は目覚めるまで長い眠りにつく。これがこの世界が繰り返す歴史よ」

「さすがね」

 

 正解を貰って喜ぶミモザ老師。

 

「ロゥリィは知っていたのか」

「もちろん。だけど、全部じゃないわ。すべては神の意志だもの。私たち亜神はこの世界を守るだけ。時に見込みのある者を導き、禁忌に近づく者は排除する。そうやってこの世界の調和を保っているの」

「だけどね。最近、面白い物を見つけてね。さらなる可能性が現れたの」

「へぇ」

 

 ミモザ老師の説にロゥリィは興味深そうに続きを促す。

 

「ある遺跡に未発見の石碑を見つけたの。まったく知らない文字で書かれていたのだけど。ようやく、昨日解読できたの」

 

 石碑の写しを机に出す。

 それを見たとき、遠坂の顔が強張る。

 

「遠坂これ」

「分かってる」

 

 写しの紙には我々の知るルーン文字が書かれてあった。

 

「所々消えてたり、まだ読めない部分はあるけど、内容は契約書みたい」

「それで中身は」

「何の契約かは分からないけど、対価として門を作り出す方法を教えるみたいなことが書いてあったわ」

 

 ロゥリィはまじまじと紙を見て、

 

「私もそれについては初めて知ったわ。紙に書かれている文字も見たことない」

 

 興味津々に語る。

 

「どうした?」

「実はこの文字私たちは知ってるの」

 

 遠坂の答えに皆が驚く。

 

「俺知らないぞ。こんな文字」

「伊丹さんは知らなくて当然です。これは魔術師が扱う特別な文字ですから」

「魔術師?」

 

 ミモザ老師とアルペジオは首をかしげる。

 

「リン。シロウ。説明してもいい?」

「そうね。ここは情報共有したほうがいいか」

 

 レレイに問われて、魔術師について説明する。

 

「あら。と言うことは、門の向こうにいるご同業ってことかしら」

「ただ違うのは内緒にしないといけないので、このことは他の人には内密にお願いします」

「面倒ね」

 

 ミモザ老師は感心しながら心良く了承したが、アルペジオは面倒臭そうだった。

 

「文字の内容は間違ってないかしら」

「いえ、合っています」

「なぁ、もしかしてだけど。この石碑があるってことは以前に特地と地球は繋がったことがあるのか」

「そうかもしれません」

 

 伊丹さんの疑問に遠坂が答える。

 

「気になるのは、何を契約したのかね」

「門の召喚方法と言う、とてつもない魔法教えるほどの契約か」

 

 疑問が深まる。

 

「ねぇ。もしかしてだけど」

「どうしたテュカ」

「こないだ会った化け物と関係するじゃ」

 

 一瞬、静寂に包まれる。

 

「こないだ?」

「ロンデルに向かう道中に未知の化け物に遭遇した」

 

 姉の質問に答えるレレイ。

 まさかの可能性。あり得るのか。

 もしそうだとしたら、過去の契約と我々の世界と特地が繋がることで何かが起きた。

 正直、考えたくもない。

 

「嫌な予感がするわね」

 

 遠坂の発言に皆が沈黙で同意する。

 得体の知れない恐怖が身体を蝕む。

 だが、我々は知ることになる。

 過去の契約の恐ろしさ。忍び寄る化け物を。

 

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