門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

20 / 20
十五話 ベルナーゴ神殿

 爆発が起きる。

 爆心地の中心でレレイがアルペジオが向かい合う。

 

「姉より優れた妹なんていないのよ」

「……」

 

 煽る姉を無言で妹が睨む。

 互いに魔力を練って、攻撃魔法を繰り出す。

 繰り広げられる惨状に伊丹さんがつぶやく。

 

「なんでこうなった」

 

 なぜ状況になったか説明するには、少し時間を遡る必要がある。

 門の話が終わり、レレイが導師号でどのような発表をするか話が移ったときだ。

 研究発表内容を見て妹に負けてショックを受けるアルペジオに追い打ちかけるように、

 

「イタミと私は三日夜の儀を終えている」

 

 衝撃の告白に女性陣は慌てふためく。

 三日夜の儀とは、男女が三日寝室を共にすると内縁関係を認める習わしである。

 これを聞いたアルペジオは、学問でも金でも男でも先を越され絶望した姉は妹にスープをぶっかけた。

 結果、

 

「これより第十三次レレーナ家姉妹会戦を私ロゥリィ・マーキュロ―の名において許可するわ」

 

 ド派手な姉妹喧嘩が始まった。

 

「大丈夫なのか」

「大丈夫よ。防御魔法もかけてるし」

 

 ロゥリィが説明したが、建物をどんどん壊して被害が広がっていっている。

 

「あの魔法…」

「アルペジオの魔法のこと? アルペジオは鉱物を触媒とすることで魔法を発動させているの」

 

 ミモザ老師の解説を聞いて、遠坂は興味深そうに観察する。

 

「でもね。鉱物魔法はお金がかかるのよね」

「どの世界でもそれは変わらないのね」

 

 若干、アルペジオに遠坂が同情する。

 数分後、最大の魔法を撃ちあって互いにノックダウンして勝負は引き分けになり、二人を手当てしようと近づいたとき、男がレレイに向かってボウガンを構えた。

 

「危な…」

 

 テュカが声をあげる途中に、ピニャ殿下のお付きの騎士が男を切り付け助ける。

 話を聞くと、刺客が差し向けられているらしい。

 相談した結果、伊丹さんの案で研究発表後に逃げることにした。

 

 

 

 

 

 

「なんだか締まらない」

「戦闘はないほうがいいだよ」

 

 テュカの愚痴に伊丹さんが慰める。

 これからどうするか話し合い、ロゥリィが前から言っていたベルナーゴ神殿に行くことになった。

 

「ベルナーゴ神殿って確かヤオが言っていたけど、ハーディって神を祀っている神殿なんだよな」

「そうだ。歴史ある街で一生に一度は巡礼に訪れるべき聖地とされている」

「ロゥリィはハーディは嫌とか言ってなかったか?」

「そうだけど文句言わないといけないし」

 

 伊丹さんの質問に嫌そうに答えるロゥリィ。

 

「思っただけど、なんでそんな嫌っているんだ」

「私に求婚してるのよ」

「嫌なのか」

「嫌に決まってるわ。自分の好みの魂をコレクションする特殊性癖持ちよ」

 

 気まずい空気が流れる。確かにそれは嫌だな。

 

「出来れば行きたくないけど、あいつ冥府の神だからあの化け物についても知ってるかも知れない」

 

 村で遭遇した化け物。もしかすると、正体が分かるかもしれない。

 

「ちなみにロゥリィはどんな神様に仕えてるの?」

「戦いを司るエルロイ神に仕えてるわ」

 

 遠坂の疑問に答える。

 いろいろ質問しているうちに、目的地にたどり着く。

 ベルナーゴ神殿は綺麗な街で、中心には荘厳で神々しい巨大な神殿がそびえ立つ。

 街道を歩くとさまざな宝石を売っていた。

 

「すごいわね」

「ハーディは地下を司る神でもあるから、恩恵として鉱物がたくさん取れるの」

 

 遠坂は目をキラキラと輝かせる。

 

「遠坂分かっていると思うけど」

「分かってるわよ。見るくらいいいでしょう」

 

 慌てて否定するするが、魔術に使える宝石を見て間違いなく心奪われていた。

 

「もたもたしてると置いていくわよ」

 

 ロゥリィが神殿まで先導をする。

 ベルナーゴ神殿を目の前にして、白い大理石が美しさと荘厳さを感じさせた。

 

「ようこそいらっしゃいました。ロゥリィ様」

 

 中に入ると、信者達がロゥリィを見ると頭を下げる。

 

「ハーディに会いたいのだけど」

「はい。ハーディ様はロゥリィ様を訪れるのをお待ちしていました」

 

 少し驚く。やはり神だからお見通しなのだろか。

 神殿の奥まで行くと、地下に下る階段まで案内されるが、手前でロゥリィが立ち止まってしまう。

 

「どうかした」

「ゴメン。少し掴まっていい?」

 

 少し怯えたロゥリィが伊丹さんの裾に掴まる。微笑ましい。

 階段を一歩ずつ降りながら、何度も周囲を確認する。

 土壁を触るとかすかに湿って、狭苦しさと圧迫感を増していく。地上とはまるで別世界だ。

 ロード・エルメロイⅡ世の講義を思い出す。

 大昔、地下は冥界そのものだった。死の世界と現実は地続きで、その気になれば歩いていける場所だったそうだ。

 その講義を聞いたせいか、自分たちは死に向かって歩いている気がしてならない。

 底まで降りると、驚くほど広い空間が目の前にぱっと現れる。地下なので、多少は空気が悪いと思ったが、大自然の森林のように空気が澄みきっている。

 

「出て来なさいバーディ。来てやったわよ」

 

 声が反響する。

 すると目の前にマナが集まり、一瞬大きな光が瞬き、女神のような姿となって現れた。

 これが冥界の神、バーディ。

 半人前の俺でも分かる圧倒的な神秘。

 地球では、まずお目にかかかれないだろう。

 

「―――」

「ふざけないで。あなた何かに嫁ぐものですか」

 

 ロゥリィが何かと話す。

 皆が首を傾げていると、

 

「そうだったわ。私以外は聞こえないだった」

 

 どうやら、亜神のような特別な力がないと声が聞こえないらしい。

 女神の姿をしたハーディは悩む素振りをして何かに気づき、レレイに近付く。

 

「ダメ。やめなさいハーディ!」

 

 ロゥリィの警告も空しく、レレイが光に包まれて倒れる。

 

「何。一体何が起こっただ!?」

「レレイの身体にハーディが憑依したの」

「大丈夫なのか」

「耐性がない人間に憑依してしまったら、最悪死んでしまうわ」

 

 皆の顔が青くなるなか、レレイの髪がものすごい勢いで伸びて、目を開け起き上がる。

 

「レレイ?」

 

 伊丹さんが声をかける。

 

「どうもこんにちは。私はハーディ。よろしくね」

 

 見たこともないような笑顔でレレイではない存在が挨拶をしてきた。

 

 

 

 

 

 

「なかなかおいしいわね。これ」

 

 レレイがおいしそうにご飯を食べていく。

 もし、彼女知っている人間が笑顔でたくさんご飯を食べる光景を見れば腰を抜かしてしまうだろう。

 

「あら、食べないの?」

「いいから、レレイの身体から出ていきなさい」

「そんなこと言っても、誰かに憑依しないと話せないじゃない」

「私が通訳すればいいしょ」

「いやよ。せっかくなら肉体をもって話したいじゃない」

 

 今、レレイの身体はハーディが憑依している。

 

「あのレレイは?」

「大丈夫よ。この子は才能あったみたいだから、私が抜ければ元に戻るわよ」

 

 ほっとして胸をなでおろす。

 

「それより、私に聞きたいことがあるじゃないの」

「ハーディあなた。あの化け物知ってる?」

 

 ロゥリィが怒ったような目つきで聞く。

 

「ええ。知ってるわ」

「なら、なんで」

「仕方ないじゃない。突然現れたのだから」

「突然?」

 

 あの化け物はどうやら神としてもイレギュラーだったらしい。

 

「正体は?」

「そこにいる二人の方がよく知っているじゃない」

 

 ハーディは遠坂と俺を指さす。

 

「まさかあれは死徒なのか」

「そうよ」

「なんでこの世界に」

「かなり昔なんだけどね。あなた達の世界と門がつながったの初めてじゃないの」

「それはこれと関係しますか?」

 

 伊丹さんがミモザ老師からもらった石碑を写した紙を机に出す。

 

「あら、懐かしいわね」

「石碑は本物ということ?」

「うん。まだ残っていたのね」

 

 紙を手にとり、懐かしそうに眺める。

 

「それで死徒と石碑に書かれていること関係あるの?」

「う~ん。話すと長くなるからめんどくさいのよね」

「レレイの身体勝手に使ってるだから、文句言うじゃないわよ」

 

 ロゥリィの鬼のような目をして睨む。

 

「分かった。分かったから怒らないで」

「だったら話す!」

 

 食事していた手を止め、静かに語り出す。

 

「きっかけは、私という神が出来るより前。太古まで時代は遡るの。

 当時、この世界はある問題を抱えていたわ。生物が全く繁栄しなかったの。理由はたくさんあるのだけど、太古の神々はどうしたものかと頭を悩ませていた。その時、異界の神が現れたの」

「異界の神って俺達の住む世界の?」

「そうよ」

 

 ハーディは頷く。

 

「異界の神は私たち神々の問題を聞くと、門を作り出し新たな生物を招き入れて繁栄させればいいと提案してきた。さらに、異界を繋ぐ門の召喚方法まで教えてくれたわ」

「ここまで聞くと、いい話ですが」

「そうね。太古の神々は大層喜んだそうよ。この世界がより繁栄できるって」

 

 ヤオの発言にハーディは同意する。

 

「でもね。異界の神は教える代わりにあるものを引き取って欲しいって言ってきたの」

「あるもの?」

「死徒っていう魔物らしいだけど」

 

 ここで全てが繋がった。

 

「危険だと分かっていたけど、強固な封印をされている状態だったから神々は引き受けたの」

「だけど、封印は解けてしまった」

「そう。あなた達の世界に繋がったことをきっかけに目覚めてしまったみたい」

 

 ハーディは顔を曇らせる。

 

「今回の死徒は封印が解かれた奴が暴れてる感じ?」

「そうね」

 

 だとすると、今は特地は危機を迎えているのではないか。

 

「だったら、なんで何の対策もしないの?」

「奴は私たち神でさえも知覚できないから、今どこにいるか分からない」

 

 ロゥリィの詰問にハーディは力無く答える。

 それだけ封印されていた死徒は規格外な存在なのだろう。

 

「それにあなた達も悪いのよ。死徒に対抗にするために炎龍を増やそうとしたのに、退治しちゃうもの」

「だから、六十年周期で活動するはずの炎龍が動いていたのは、それが理由なのね」

 

 ヤオは微妙な顔をする。仕方ない。世界のためとはいえ、部族が犠牲になるのは許せないだろう。

 

「炎龍を退治してしまったあなた達にぜひ協力して欲しいの」

「何、脅しのつもり?」

「そんなつもりはないわ。ただ協力してくれないと、この世界が滅亡してしまうかもしれないけど」

 

 ロゥリィは嫌そうな顔する。

 

「分かったわ」

「ありがとう。何かあれば知らせるわ。あと、私を呼び出したいときは伸びた髪を触媒にして呼び出して」

 

 笑顔を見せて、糸が切れたようにハーディが机に突っ伏して気絶する。

 

「ハーディ様?」

「……ここはどこ?」

 

 ヤオが恐る恐る声をかけると、レレイがぼんやりした顔で辺りを見渡す。

 どうやら、レレイの身体からハーディが抜け出たようだ。

 意識と体にケガを無いことを確認する。

 今までの経緯をレレイに伝えた。

 

「そんなことが」

「まぁ、めんどくさいことに巻き込まれちゃったな」

 

 伊丹さんが億劫そうな顔をする。

 

「どうしますか」

「とりあえず上司に報告かな。どうなるか分からないけどな」

 

 自分たちも帰って宝石翁に報告をしなければならない。

 アルヌスにある自衛隊基地向けて出発した。

 車に揺られながら、死徒について考える。

 世界に最悪をもたらす存在。

 正直スケールが大き過ぎていまいち現実味がないが、忍び寄る怪物を聞いて、これから戦っていけるだろうか不安になる。

 だが、引くわけにはいかない。

 我々が負けると言うことは、特地だけでなく地球までもが危機に晒されれるのだから。

 




少し変更しました。

よろしければ、ご感想お待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。