門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

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二話 新天地

 特地方面派遣宿舎 深夜

 

 狭間浩一郎は特地方面派遣隊の指揮官である。

 彼は特地派遣任務を拝命した際に、嘉納防衛大臣から極秘命令で要人に会うため指令室で深夜一人待つ。

 

「まったく、命令とはいえ要人に会うために深夜まで起きるのはきついな」

 

 これから、顔を合わせる要人は魔の字(・・・)を扱う人間らしい。

 正直、魔術なんて信じられない。

 けれど、大真面目の顔した嘉納大臣や宮内庁から来た九鬼と名乗る男に魔の字の話を聞いて納得した。

 

「一体、どんな奴が来るのか」

 

 ため息をつくと誰かが扉をノックした。部下には指令室に近づかないように命令している。おそらく、要人だろう。緊張で口に溜まった唾を飲み込む。

 

「入れ」

 

 扉が開き、自衛官の制服を着た二人の男女が現れた。

 女は帽子を取ると黒い長い髪が散るように肩に流れる。

 

「こんばんわ。あなたが狭間陸将?」

 

 若い女が握手を求めてくる。整った顔に気の強そうな碧い瞳が印象的だ。

 

「あぁ、私が狭間だ」

「どうも、私は遠坂です。隣にいるのが」

「衛宮です。夜分遅くすみません」

 

 二人と握手をする。

 男と握手した瞬間に気づく。男は誠実に見える青年だが、握った手のひらから鉄を思わせるような強靭な肉体を感じる。

 経験から分かる。目の前の男は戦闘経験がある人間だ。それも修羅場を何度も乗り越えることでしか得られない凄味がある。

 

「どうかされましたか?」

「……! いえ、何でもありません。どうぞ、お座りください」

 

 ソファに向かい合って座る。正面に座る二人はまだ若いが、何ともいえない貫禄がある。

 

「では、今回はどのような案件でいらっしゃったのですか?」

「特地調査に参りました」

「調査ですか? 現在、我々の方で調査隊を編成中ですので一緒に行動してはどうですか?」

 

 未知の土地をたった二名で調査するのは危険だ。もしかすると、調査が本当の目的ではなく別の目的があるかもしれない。可能であれば監視下に置きたい。

 

「いえ、そちらとは別部隊として動きます」

「2人では危険ではないですか?」

「お気遣いありがとうございます。しかし、我々は極秘扱いですし、少人数であるほうが何かと都合がいいので」

「……極秘ですか」

「我々の存在は基地でも内密にお願いします」

 

 遠坂と名乗る女性が答える。調査隊に入れて見張るつもりだったが、断られた。せめて、彼らとなにか繋がりが欲しい。

 

「分かった。一つ提案があるがよろしいか」

「何でしょうか?」

「我々も特地の情報は少しでも欲しい。通信機を貸します。何か発見した場合は報告をお願いしたいのですが、よろしいか?」

「分かりました。もし発見した場合は報告させていただきます」

 

 提案を受け入れてもらい安心する。ひょっとしたら、何かしらの貴重な情報が得るかもしれない。

 それ以後は細かな特地調査方針を話し合った。調査期間や通信機のほかに地図を支給など決めていく。

 

「他に何かありますか?」

「いえ、大丈夫です。ご協力ありがとうございます」

「大した援助できず、申し訳ない。お二人の無事をお祈りします」

 

 別れの挨拶をして、二人が部屋から出ていった。

 廊下から人の気配がなくなると、ポケットから煙草を取り出して火をつける。肺の底から煙と共にため息をつき、椅子に体を沈めるように座った。

 

「あんな若者が魔の字を扱うのか」

 

 異世界だけでも手一杯だったが、我々の住む世界にも魔術なんて存在するとは思わなかった。加えて、要人が想像以上に若い男女が現れて当惑するばかりだ。

 もう一度煙草を吸い込み、吐き出した紫煙が雲のように天井に立ち昇る。煙を眺め、特地について考える。

 特地は日本にとってさまざまな恩恵を与えるとともに、海外から悪い意味で注目を集めてしまった。さらに、魔の字を知る彼らからもたらされる情報で、ますます日本が危機に陥るかもしれない。

 先を考えると頭が痛くなり、煙草のフィルターを強く噛んでしまう。せめて二人組が何事もなく平和で特地を去ることを祈るばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が明け、朝焼けがにじむように空に広がっていく。見渡す限りの草原に降りた露が太陽の光をきらきらと反射していく。

 

「ここが特地なのか」

 

 風景自体は地球にもある自然あふれる景色だが、マナが異常だ。時計塔が所持する有数の霊地並みにマナ量が多い。

 

「遠坂すごいな」

「えぇ。これだけ豊潤のマナがあるなら、もう少し魔力を回しましょう」

 

 言われた通りに回路に魔力を循環させた。疲労を軽減させ、進行速度が上がる。

 基地から歩いて数時間経過したが、未だに誰一人発見していない。

 

「時計塔が話をつけてくれたおかげでスムーズに進められたな」

「ふん、法政科が陰で動いたじゃないの。どんな陰湿な手を使ったのか」

 

 法政科は法と政治を司る部門だ。神秘を求める者からは蛇蝎の如く嫌われている。

 

「それより士郎近くの村まであとどれくらい?」

「もう少しで着くよ」

 

 最初の目的地の村まであと数十分で到着する予定だ。

 

「特地の住民と会うのか。緊張するな」

「大丈夫でしょ。変装しているのだから」

 

 事前情報から特地は地球の西洋中世時代に酷似すると聞いたので、二人の衣装は旅人風のマントを着ている。

 

「でもな、もしかすると地球の文化とは違うかもしてないだろ」

「認知の魔術を掛けたから、平気よ。ほんとは士郎ひとりで出来るようにしないといけないだから」

 

 師匠の説教に思わず苦笑いを浮かべる。一流魔術師である遠坂の魔術によって、耐性のない人間は我々の印象が薄くなって違和感を覚えることはない。

 

「フラットはいるんだろうか」

「もしフラットがいるなら、RPGみたいだって子供みたいに大はしゃぎするわね」

 

 確かに特地に広がる未開の土地を見ればフラットは喜んで、探検するに違いない。

 

「フラットだから身の危険はないと思うけど、なんでこんなにトラブルばかり起こすかな。あの天才馬鹿は」

「そうだな。昔から変わらないな」

 

 時計塔に所属した学生の頃を思い出してノスタルジックになる。同時にフラットが昔と変わらない事に嬉しく感じた。

 

「教室のためにも早く連れて帰ろう」

「そうね。あの馬鹿一発殴ってやらないと気が済まないしね」

 

 村が見え、人影がちらほらと見える。最初の目的地に近づくにつれて、胸が高鳴るのに気付いた。自分もフラットのことは言えないとあきれて笑ってしまった。

 

 




言葉とか服装とかご都合魔術でなんとかしたと考えてください。
何か問題があった場合、随時修正していきます。

次回予定4月1日 セイバーライオン現れる!?
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