門の向こうに蠢く怪物   作:ゲゲゲ大好きマン

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四話 発見

 目的であるイタリカは壁に覆われた街だ。

 高くそびえ立つ白い壁は見る人を威圧する。

 

「すごいな」

「こんな立派な城壁は地球でもなかなか見かけないわね」

 

 巨大な建造物から高度な文明だと分かる。

 門に向かって歩くと、門番が怪訝そうな目でこちらを睨む。

 

「なんだか警戒されてないか」

「やましいとこは無いのだから堂々としてなさい。焦ると逆に、挙動不審でますます怪しくなるから」

 

 門番の男まで近づくと、厳しい口調で取り調べが始まった。我々は旅人だと説明したが、相手は納得せず長時間の追及を受けて、最後は念入りに身体検査を行われた。

 疑いが晴れ、壁の内に足を踏み入れる。

 

「これからどうする」

「特地の金銭を手に入れるために質屋に行きましょ」

 

 近くの人に質屋の場所を聞いて、向かう。

 煉瓦造りの家が立ち並ぶ景色を眺めながら石畳を歩く。

 ゴミが少なく綺麗な街並みから治安の良さが窺えた。

 だが、住民の元気が無いように思える。 

 

「なんだか活気が無いな」

「戦争で住民が兵として徴収されたせいじゃないかしら」

 

 丘で自衛隊と大規模な戦闘があったと聞いたが、イタリカに住む市民の家族が大勢亡くなったかもしれない。

 

「士郎」

 

 遠坂が手に触れる。自分が知らないうちに、血の気が引くほど拳を強く握りしめていた。

 

「ごめん。ありがとう、遠坂」

 

 また、やってしまった。頭では理解しているが、人が亡くなってしまうことがどうしても許せない。

 

「大丈夫よ。分かって一緒にいるから」

 

 遠坂は優しい顔で微笑む。彼女には救われてばかりだ。

 質屋に到着して、宝石を質に入れて金銭を得た。店を出ると、日も暮れて辺りはどんどん夜の暗さに変わる。

 

「まとまったお金も入ったし、宿決めましょうか」

 

 街を歩き周り、長年の旅をした経験で良さそうな宿を発見した。

 

「随分歩いたから、お腹が空いたわ」

「そうだな。特地の料理も食べたいし、酒場に行くか」

 

 酒場を探しに街に出向く。向かう道中におそらくイタリカの領主が住む館を発見した。外観から文明の高さに興味が向きよそ見をしていまい、曲がり角で何かとぶつかる。

 

「いたた…」

 

 足元にメイド姿をした女の子が尻もちをついている。手を差し出して立たせる。

 

「すまない。大丈夫かい」

「こちらこそ、すみません」

 

 少女が頭を下げると、かわいらしい猫の耳が生えているのに気付き、思わず凝視してしまう。ピコピコと耳が動いているから、作り物ではない。

 異世界にはさまざまな人種が存在するのか。いや、ドラゴンが存在するのだからいても不思議ではないが。

 

「あれ、街の外から来た人ですか?」

「そうだけど」

「やっぱり、珍しいですよね。先代お館様は開明的で我々のような種族でも雇ってくれるですよ」

「優しい御仁なんですね」

 

 少女が嬉しそうにしゃべる。よっぽど良い領主だと感じた。

 

「これから、どこに行くんですか?」

「酒場に行くつもりなんだけど」

「でしたら、あそこがいいですよ」

 

 現地の人間によるおすすめなら間違いはないだろう。少女と別れ、教えてもらった酒場に行く。

 

「びっくりしたな。特地にはいろいろな種族がいるんだな」

「そうね。意外だったわ。衛宮くんネコ耳の趣味があるなんて」

「誰もそんな話してないだろ」

「あら、ごめんなさい」

 

 遠坂が苗字で呼ぶのはだいたい怒っているか、からかっているかのどちらかだが、この場合は後者だ。

 話しているうちに酒場の前まで着く。香ばしい匂いが辺りから漂う。

 

「どうやら当たりみたいね」

「ついでに情報収集もするか」

 

 店の中に入ると大勢の人でごった返す。空いた席を見つけて座る。

 

「だいぶ、歩き回ったから疲れたな」

「途中で盗賊にも襲われるし。私達の運もなかなかね」

 

 道中、二人組の盗賊に襲われた。話に聞いた戦で負けた兵士が盗賊化したのかもしれない。ドラゴンに襲われた村の人たちが被害にに遭わないことを祈る。

 

「フラット、盗賊に襲われてないかな」

「ある程度なら返り討ちにできるけど、おっちょこちょいだしね」

 

 遠坂がそれを言うのかと思ったが、口にすると恐ろしいことになるので笑ってごまかす。

 

「ハイハイ。ご注文は?」

 

 どこか聞き馴染みのある声がして顔を上げる。

 

「あっ」

「えっ」

「な、なんで、フラットがここにいるのよ!」

 

 目の前に人懐こい見覚えのある金髪の彼がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

「で、どうしてあんたが働いているの」

 

 数時間が経過して店内がだいぶ落ち着く。先程まで慌ただしく働いていたフラットが休憩で同じテーブルに座る。

 

「いやー、こっちに来てからいろいろ大変でさ」

 

 万が一に不意を打たれて、何かあったらと不安になったがケガも無さそうで安心する。

 

「で、なんであんたはここで働いているの」

「いやー、いろいろあってね」

 

 フラットの話だと東京で魔力の異変を感じると、正体不明の軍隊が現れた。どこから現れたのか調べると、門を発見した。

 門を通るとそこは上質なマナが満ちた世界だったと。

 

「そりゃもう、興奮しちゃてね」

「で、奥深くまで探検しちゃたのね」

「気が付くと迷子になって、まいったよ。あはは」

 

 簡単に想像できて、遠坂と共に呆れてため息をつく。

 

「しばらく歩いて、イタリカに着いてね」

 

 街に到着したが、お金が無いので食べ物も買えない。困り果てた時に、ネコ耳メイドが現れてお店を紹介してくれたそうだ。

 

「ほんと助かったよ。店主もいい人だし」

「まったく、みんな心配してたぞ」

「……ごめんね」

「とりあえず帰るわよ」

 

 お世話になった酒場の店主に別れを告げて、フラットと共に宿へ戻って部屋でくつろぐ。

 

「フラットは私達より長く異世界にいるのだから、何か情報持ってないの」

「うーん。店に来たイタリカの衛兵が言っていっただけどね」

 

 門を占拠した自衛隊を撃退するため、さまざまな領主が協力して進軍したが、皆ほとんど全滅してしまった。

 

「イタリカの領主も亡くなったみたい」

 

 代わりの新しい領主はたった11歳で兵もほとんど生きて帰ってこなかった。おかげで、街の防衛はボロボロ。生き残った兵士も盗賊化して治安も悪くなっている。

 

「私達も盗賊に遭ったわよ」

「大丈夫?ケガとかしてない?」

「大丈夫だよ。そこまで脅威ではなかった」

 

 他にも帝国の情勢について人種・種族や文化、ここに来る道中に調べた龍脈・魔力についてフラットから教えてもらった。

 

「イタリカに来るまでの話聞かせてよ。盗賊の部分も含めてね」

「そうだな。ドラゴンに遭遇したな」

「ドラゴン!? なになに、聞かせて聞かせて」

 

 フラットは目を輝かせてイタリカに来るまでの話を聞く。

 

「シロウ達が遭遇したドラゴンはたぶん炎龍だと思う」

「炎龍?」

「うん。聞いた話だと、災害並みに恐れている龍らしいよ」

 

 確かにあれほど大きな龍が街を襲えば、とんでもない被害が出るだろう。なんとか撃退できてよかった。

 

「シロウはだいぶ投影うまくなってきているね」

「厳しく指導したもの。上達しないと師匠として立つ瀬がないわ」

 

 不出来な俺がここまで魔術の腕が上がったのは、熱心に教えてくれた遠坂のおかげだ。感謝しても足りないくらい。

 

「明日には帰るか」

「そうだね」

「早朝に出発するから、早く寝るわよ」

 

 エルメロイ教室がみんなに良い知らせができると安心してベットにもぐる。

 だが、まさかあんなことになるとは夢にも思わなかった。

 

 

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